Category: 工夫のひきだし あれやこれ
認知症のある方は、その場の雰囲気に影響されやすい面もあります。
特に、お風呂などの場面。
職員も複数、対象者も複数。
動作遂行の工程が複数で、次々に動作を切り替えていくことが要求されるADLです。
どうしても、ワサワサしやすい場面です。
その雰囲気に気圧されて
興奮しやすくなる方もおられます。
そんな時には冷たい飲みもの。
言葉では届かない時に
具体的に現実的に、その方のお身体に「冷たさ」が作用します。
もちろん、ただ単に、冷たいものを出せばいい。というわけではありません。
私たちの言葉と一緒に
冷たい飲みものを添えるんです。
言葉…気持ち…のあらわれ、としての冷たい飲みもの。
そうすると、スッと落ち着かれることも多いのです。
作業療法士として
モノの特性をよく理解し、活用できるように
モノやコトに明敏でありたいな…と思っています。
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認知症のある方は、その疾患特性上、新たなことを覚えたくても覚えられない…という状態です。
作業療法士として、Act.や体操やレクの提供を考える時に留意しなければならないのはこのコトです。
私たちが「何かする」時には、ワーキングメモリが作動しています。
その能力が低下してしまうと、
言われたとおり何かする時には
「する」ということだけで、いっぱいいっぱいになってしまうのです。
何かしている時のおもしろさや心地よさを感じるところまでいかずに、
不全感や疲労感しか残らなかったりするのは、
果たして本当に良いことでしょうか?
たとえ、作業療法士の援助で表面的に何か「できた」としても。
それよりも、昔とった杵柄…手続き記憶を活用しましょう。
たとえば
体操の本をネタ元に作業療法士が考えた体操では、
なかなかお身体を動かすことのない方でも、
ラジオ体操第一の音楽をかけると、
いつの間にかお身体を動かしていたり、
手拍子をしている姿をよくみかけます。
お年寄りの生活歴を考慮し、
かつて慣れ親しんでいたであろう行為のエッセンスを
今のできる課題の中に見出し、アレンジして提供する
…これって、作業療法士ならではできること。ではないでしょうか。
具体的なアイディアは、このカテゴリーの記事でおいおい紹介していきます!
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休日など私が不在の時でも
看護介護職員が対象者の方の自主リハを見守ってくれることになりました。
それぞれの方に特定のAct.を準備しておき、それを実施してもらっています。
おかげさまで対象者からも職員からも好評なのですが
いかんせん、病棟の中には、いろいろな方がおられます。
徘徊して異食してしまう方もおられます。
毛糸モップを作っておられる方の所に近寄ってきてカラフルな毛糸を口の中に入れてしまうということが起こりました。
これは何とか対策を考えないと…
ということで考えたのがこちらです。
材料は、100円ショップで買った調味料ポット、フェルト、紙です。
フタの裏にフェルトをはりつけ、側面を紙で覆うことで、中身がカラフルな毛糸であることをわかりにくくしました。
自主リハの方には毛糸の色が瞬間的に認識できるように毛糸の色を表示し、すき間から毛糸が見えるようにしてあります。
フタは通常状態では閉まる形式ということと、開閉が押すという1工程のため、自主リハをやる方にもストレスが少なくてすみます。
この工夫をしてからは、毛糸を異食されることはなくなりました。
Act.をする方も特に不便は感じていないとのことです。
このような工夫をする時の考え方のポイントは
Act.を実施する方と異食リスクのある方とAct.を行う環境のそれぞれについて
能力と障害と特性を把握しておくことに尽きます。
逆に言うと、状態が変われば対応も工夫していかなければならないので
1度工夫して終わり!ではなくて、関係する方の状態像の変化に注意しておくことが大切です。
特に、自主リハでは看護介護職員にその旨きちんと伝えて変化があった時にはすぐに連絡してもらうよう事前に伝えておくことがポイントです。
ちなみに、「毛糸モップ」の詳細はこちら
神奈川県作業療法士会>作業療法Tips>手工芸Tips>毛糸モップ
http://kana-ot.jp/cgi-bin/ga_06ry/main_g.cgi?no=30
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認知症のある方にトランスファーを促そうとしたある職員。
「右手で向こう側の肘かけをつかんでそれから腰を上げてゆっくり体を回転させてから椅子に座りましょう」
…認知症のある方はにこにこして座っているだけです。
この職員は、「わかりやすい説明=丁寧に言葉を使って説明すること」と考えたのだと思います。
ところが、認知症のある方は、言語理解力や言語表現力が低下してしまうことがよくあるのです。
ですので、懇切丁寧な言葉での説明は、かえって理解されにくいのです。
それでは、いったいどうしたらいいのか…というと
認知症のある方は、視覚的理解力はある程度保たれていることが多いので、そこを活用すればいいのです。
先の方の場合には
「Bさん、こっち」と言いながら、トランスファー先の椅子の座面を手でポンポンと叩き示したところ、すっと立ち上がって椅子に移ることができたのです。
認知症のある方に接する場合には
その方の言語理解力や言語表現力、視覚的理解力について
適切に把握しておくことが望まれます。
その方の障害を補い、能力を活用する…そのことを念頭において説明をすればいいのだと思います。
「説明してもわかってもらえない」
という声を聞くことも多々ありますが
言葉だけで説明しようとするから悪循環に陥ってしまうのではないでしょうか。
どのように伝えたら、相手が理解しやすいのか
どのように対応したら、相手が目的とする行為をともに行えるのか
…を考えることが大切。
そのためには、まず、認知症のある方の能力と障害をきちんと把握しておくことが必要だと考えています。
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認知症のある方が突然立ち上がろうとしたり、異食しようとしたり、暴力をふるいそうになっている場面に遭遇したら、まずは止めようとすると思います。
でも、その時の職員の言動を思い浮かべてみましょうか(^^;
たぶん、大多数の人が、大きな声で必死の形相でキツイ口調でドタドタと駆け寄るのではないでしょうか。
気持ちはわかりますが…
そんなことをしてしまうと、火に油を注いでしまうようなものなのです。
状況理解がちゃんとできる方なら、そもそもそんなことはしないのですから
そんなことをしてしまうということは、状況理解ができていない方であるということを意味しています。
それなのに、突然、職員がわーっと駆け寄ってきたりしたら、
認知症のある方にとっては、
わけもわからず駆け寄られた、怒鳴られた
…という認識しかもてないかもしれません。
たとえ、職員に悪気はなかったとしても、逆効果になってしまいます。
ましてや、視覚的被影響性の亢進している方などは、職員が意図せずに伝えてしまっている態度によって影響を受けて、ますます悪循環となってしまいます。
困ったときほど、急な対応を要するときほど、要注意。
まずは、自分自身のノンバーバルな在りように気をつけること。
おだやかな、やわらかな物腰で接することが
いつもより要求される場面だと考えています。
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認知症のある方への対応について、「相手の言うことを否定してはいけません」って言われたことのある人は多いのではないでしょうか。
「あんた、真夜中なのに玄関をドンドン叩いていたでしょう?」
「いったい何やってたの?」
もしも、こんな風に言われた時に、いったいどう答えたらいいのでしょうか?
相手の言うことを否定してはいけないからといって
(ごめんなさいね。悪いことをして。)
と謝るほうがいいのでしょうか。
でも、私はそんなことしてないのに…。
してないことを謝るのって、自分にウソをつくことになってしまいます。
そんなのイヤ。
そんな風に感じたことのある人は決して少なくないと思います。
具体的な対応方法としては
疾患特性もありますので、一概には言えません。
同じ疾患だったとしても、その時その場のその関係性において、でしかわからないことが多々あります。
けれど、アルツハイマー型老年認知症のある方について、このような考え方で対応してみるのは1つの方法かもしれません。
(あら?私は真夜中はぐっすり眠っていたんだけど…
でも、もしも玄関をドンドン叩く音が聞こえたとしたら
恐かったでしょう?よく眠れなかったんじゃないですか?)
ここでポイントがあります。
私は眠っていた…という言葉を使ったとしても
私はそんなことしてない、玄関なんか叩いていないという言葉は使わないことです。
つまり、私自身の現実を伝える。
けれど、相手が言葉にしたことそのものを否定する言葉は使わない。
そして、相手が言葉にした事象そのものに対しては言い争わない。
そのかわり、相手が言葉にした事象に遭遇した場合に感じたかもしれない感情に対しては共感をあらわす。
ということです。
これなら、相手の言葉を否定せず、自分自身にウソをつくこともありません。
尊重と迎合とは違う。と思うのです。
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