キャッチボールは「やりとり」の象徴の1つとして、どんな分野でもよく使われているAct.の1つだと思います。
でも、相手めがけて投げることや投げられたボールを落とさずにつかむことができないと導入するのは難しいですよね。
私も風船やバランスボールで代用していた時もありますが、それでも難しい方がいらっしゃいます。
疎通困難で注意の転導性が著明だったり、対象との距離があると認識しづらくなってしまう方など…同じような経験のある方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、使えるアイテム、ひも三つ編み登場 (^^)
荷造りしたり、応援用のポンポンを作る時に使うスズランテープを使います。
まずは、相手にテープ端を持ってもらい、私が三つ編みをします。
この時に、私が編む作業に同調してテープ端を引っ張りながら持つことができるかどうか…がポイント。
これができるということは、言葉は介さないけれども、相手を認識して相手との恊働作業をおこなえるということを意味します。
疎通困難で注意集中ができなくて失敗への予期不安が強く情緒不安定な方が他者との恊働作業に集中することができるなら、もうそれだけでも十分だと思います。
非言語のレベルでの「やりとり」という体験をする…ということの意味はとても大きなものがあると感じています。
言語的な意思疎通が困難であったとしても
私が編みやすいようにひもの引っぱり加減を調整する方もいます。
常に一定のテンションでなく微調整しているのです。
また、長い時間続く時には、疲れないようにひもの持ち方を変えたりという工夫をする方もいます。
非言語ではあるけれど
非言語だからこそ、わかることもあります。
それだけではなくて、認知症のある方の場合、さらにその次に進むことができる場合も多いのです。
ひもを触ったり、結んだり…手いたずらを通して「三つ編み」することを思い出す場合も多々あります。
三つ編み…おさげ髪を結ったり、わらじを編んだりと昔の人は「編む」ことはなじみのある動作です。
手続き記憶を活用しやすいのです。
この時にポイントはいくつかあります。
まずは、疎通困難な方や注意集中困難な方には、ウォーミングアップの過程を怠らないこと。です。
挨拶であったり、笑顔でのアイコンタクトであったり…
使う材料を手いたずらする…なんてことも制止したくなるかもしれませんが
手で材料に触れるということは重要な対象認識の一過程でもあるので大切にしていただきたいと思います。
対象者の傍らに寄り添っていれば、まだ「その時」ではないのか、あるいは導入開始の時なのかといったタイミングがわかると思いますので、そのタイミングを逃さずに介入してみてください。
また、対象認識が低下している場合には認識しやすいような工夫も必要です。
例えば、スズランテープを3色使うと重ね方が明確になりますし
言葉で「左端のひもをもって…」と説明するよりも、「赤いひもをもって…」と説明したほうが理解しやすくなります。
「左端」という言葉は相対的な説明ですので1つの場面内の複数の対象を認識してさらにそれらの相対的な関係性を認識できていないと理解できません。
このような説明は認知症のある方にとってハードルが高すぎます。
一目瞭然という場面設定、作業に語らせるという場面設定を工夫することが重要なのです。
そして、何よりも重要なことは、三つ編みができるようにという観点から引き算で対象者をみない。ということです。
ここができないから三つ編みできない…ここをがんばってできるように…ではないのです。
それでは三つ編みを「させる」ことになってしまいかねません。
非言語での恊働作業ができるだけでいい。
1人でひもで手遊びに集中できるならそれでいい。
三つ編みできたら「もっと」いいね。
というように、今を否定せずにプラスを積み重ねていく「みかた」です。
スズランテープは材料費が安い。入手しやすい。
そして、何よりもシンプルな工程で段階付けや切り替えをスムーズに展開しやすい…というところが大きな利点です。
どの分野でも使われているキャッチボールですが
キャッチボールが象徴している「はたらき」を活用したAct.として「ひも三つ編み」をご紹介しました。
最近のコメント