Category: 工夫のひきだし あれやこれ

昔の手遊び

意味性認知症のある方など疎通困難な方に対して
表面的に疎通を改善しようとするのではなくて
その方が可能な言語的理解と非言語的理解を組み合わせた関与を心がけています。

言葉は端的に

表情は大袈裟なくらいに
今はマスクをして勤務しているので
笑う時には敢えて眼までくしゃっとさせて笑うようにしています。

もっと気をつけているのは口調です。

その方の声のトーンに合わせながらも
ベースは耳に心地良いように
穏やかで温もりのある声を心がけています。

Activityとしてよく使うのが
1)ひも三つ編み
2)昔の手遊び
です。

いずれも認知症のある方の手続記憶として保たれています。
ひも三つ編みは、言語を介さずとも日言語での「やりとり」が可能です。
ひも三つ編みの詳細は、_ こちら _ のページをご参照ください。

今日、ご紹介するのは、昔の手遊びです。
小さい頃、歌いながら近所の子と一緒に「かごめかごめ」「はないちもんめ」で遊んだ方は多いし
「♪ 夏も近づく八十八夜」と歌いながら手合わせできる方も多くいます。
ご自分だけでは歌えない方も隣で一緒に歌ってもらえたら思い出して歌える方はたくさんいます。
手合わせができるためには、
「相手」をしっかり感受し
「相手のタイミング」を見計らって自身のタイミングを合わせ合う
という、非言語ながらコミュニケーションの基本が含まれています。

手遊びという非言語的な要素を繰り返し行うことで
いつの間にか言語的疎通が驚くくらい改善されていくということも多々あります。

疎通困難な方でも特性に応じて使い分けています。
他者との交流を楽しむことを好む方には手遊びを
お仕事好きな方にはひも三つ編みを行っています。

言語的には疎通困難でも
非言語的には他者との交流が可能な方は大勢います。
そして非言語的な交流を積み重ねていくと
言語的な交流も行えるようになってくることも多々あります。

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簡易ヘッドレスト

普通型車椅子に座れるけど
頸部後屈してしまう方に対する工夫です。
ティルト型車椅子を使うほどではないけど
何もしないとしんどそう。。。という場合に
材料はダイソーで購入できて、すぐに作れる簡易ヘッドレストです。

必要なのは
プラスチック製の棒(写真では突っ張り棒:45〜60㎝)を2本
伸縮するベルトを3本
結束バンドを数本

<作り方>

1)プラスチック製の棒を車椅子のバックレストの隙間に突っ込む
  この時棒の長さが短いと後を振り向いた時に棒が目に当たってしまう恐れがあるので 
  棒の長さは頭よりも高くなるように気をつけています。

2)棒を車椅子の手押しハンドルのポールに結束バンドで固定します。
  この時、伸縮ベルトの上端〜下端の間に滑り止めを固定しておくと
  ベルトのズレを予防できます。(写真では青紫色に見えます)
  写真では伸縮ベルト3本使用していますが
  (頭部後屈が著明であれば、
   支持性を高めるために伸縮ベルトの本数を増やすか
   ベルトの長さを調整します)
  この段階ではまだ結束バンドのはみ出た部分は切り落とさず調整できるようにしています。

3)左右の棒に伸縮ベルトを固定します。
  この時に後頭部がきちんと支えられているかどうかを確認します。
  大丈夫であれば、結束バンドを引き絞って、はみ出た部分をハサミでカットします。

4)伸縮ベルトにタオルを巻き付けます。
  簡単に縫い止めても良いでしょう。
  下の写真では後で3箇所簡単に縫い止めてあります。

簡易ヘッドレストは
材料の入手も簡単、安価で、すぐに作れます。
何よりも一番良いところは、伸縮ベルトの伸縮性が
対象者の方の頸部後屈の度合いに応じて、その都度対応してくれるところです。

自身で頸部中間位を保持できている時には
ベルトはあまり伸長しないけれど
頸部後屈方向に力が入ってしまった時でも
ベルトはしっかり伸長して頭部を支えてくれます。

通常の布だと
頭部は支えられても頸部は後屈したまま。。。という時もあるかと思います。
伸縮ベルトだと、頭部の重さを支えつつ、頸部中間位へとアライメントも整えてくれます。
頭部のもたれかけ具合に応じて、ベルトが伸縮して対応してくれるので
過剰な後屈を防止でき、ヘッドレストによる過剰な支えにならないのが良いところだと思っています。

 

 

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認知症のある方の話を聴く:重要なことは復唱する

認知症のある方の話を聴く時に
認知症のある方が発言した表現そのままを使って復唱するようにしています。

たとえば
「家に帰りたい」と言われたら
「家に帰りたいんですね」
「財布がない」と言われたら
「財布がないんですね」
と認知症のある方が発言した表現そのままを使って復唱します。
そのあとで、「それで急いでいたんですね」「それで困っているんですね」と言葉を継ぎます。

  クレーム処理の本を読んで時に
  「相手の言葉を復唱してから答える」と書いてあるのを読んだ記憶があります。
  あなたの言ったことを受け止めましたと言外に伝えることができます。
  そう言われてみれば、クレーム処理ではないけれど
  品物を注文した時のコールセンターの対応は、
  こちらの電話番号の確認の時に
  私が「ご、さん、の」と言えば
  相手も「ご、さん、の」と確認してきますし
  私が「ごじゅうさんの」と言えば
  相手も「ごじゅうさんの」と言う人がほとんどです。

声かけの最初は
相手の言った言葉を使って復唱するようにしています。

その後、話を聴きながら
相槌を打ったり、合いの手を挟んだり
時には、相手の話と同じ内容を違う表現で言い換えるようにしています。

「お父さんの先生が亡くなられたから早く行かなくちゃ」
「お世話になった方だから不義理なことはできない。
 それで急いで行こうとしていたんですね?」

「財布がどこにもないのよ!」
「大事なお財布が見つからないくて困っているんですね」

この1クッションを置くことで
「この人は私の言っていることをちゃんと聴いてくれる」
と思っていただけます。
会話のキャッチボールを強調して伝えることができます。

言葉は相手に伝わってこそ、言葉として機能します。

 

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認知症のある方の話を聴く:声の大きさとトーンを合わせる

声かけの大切さについて
否定する人はいないし、みんなそう言うけれど
私は「何を言う」かよりも
「どんな声で」言うかの方が重要だと考えています。

〇〇という時に、なんて声をかければいいでしょうか?
と尋ねる人はいても
自身の声の大きさやトーンの意義を自覚している人はとても少ないし
自覚的にコントロールしている人はさらに少ないと感じています。

認知症のある方は言語理解力が低下すると
(たとえアルツハイマー型認知症でも言語理解力が低下する方はたくさんいる)
何か言われたことはわかっても、何を言われているか理解できなくなります。
一方でだからこそ、職員の口調を鋭敏に感受し、口調に反応していることが多いのです。

声には発する人の感情が反映されます。

声の大きさとトーンを合わせることで
心理的同調を促す効果がある
と言われています。

まず、声の重要性を認識しましょう。
そして、相手の声の大きさとトーンに自身の声とトーンを同調させましょう。

大きな声やハリのある声の方には、こちらも同様に。
小さな声で落ち着いたトーンの方には、こちらも声を抑えめに。

一番、良いのは挨拶です。
「おはようございます」「こんにちは」
返ってきた言葉に反映された声の大きさとトーンを感受し、
同じような大きさの声とトーンで返します。
「今日も良いお天気ですね」「今朝は寒かったですね」
自然な会話の中で、声の大きさとトーンの同調を調整することができます。

「認知症のある方の話をきちんと聴く」ことの前提として
声が無自覚に伝えてしまうことがあることをきちんと理解する。
そして、自身の声の大きさとトーンに自覚的になる。
相手のその時々の声の大きさとトーンに鋭敏になり、同調させられるようになる。
ということがもっと広まっていくと良いなぁと思っています。

 

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「聴いている」ことを伝える

まだ、感染症対策としてマスクをしている人も多いと思います。
マスクをしていると表情が伝わりにくいものです。
なので、意識して「表情」を伝える工夫をしています。

笑う時は、眼もくしゃっと笑う。
「笑う」を強調して伝えるようにしています。

話を聴く時には、相槌を打ちながら聴く。
「聴く」ことを強調します。

尋ねる時には、小首を傾げて「尋ねる」を強調する。

「表情」の代わりに「口調」で代償する。

認知症のある方は職員の
「何」を言っているのかという言葉ではなくて
「どんな風に」言っているのかという声や口調、表情などに
反応して怒ってしまうことが多々あります。

声かけの重要性を否定する人はいないと思いますが
一方で、職員の側の非言語的表出の重要性については
あまり重要視されていないものです。

当然、自身の非言語的表出に無自覚なことも多く
当然、自覚できないのでコントロールしようとする人も少ないものです。

特に、声や口調には発する人の感情が反映されやすいものです。
もっと自覚的になることと、コントロールしようとすることの重要性について
検討されると良いのにと、つくづく思っています。

 

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認知症のある方の話を聴く:基本

もしかして、
このサイトにお立ち寄りくださる人の中に
認知症のある方とどうやってコミュニケーションをとったら良いのか
わからなかったり、自信がない人もいるかもしれないと思ったので記事にしてみます。

実習に行くと
「患者さんとコミュニケーションとってみて」
「ご利用者さんとコミュニケーションとってみて」
って言われることが多いんじゃないかと思います。

コミュニケーションとるって言われると
一生懸命話さなければって思いそうだけど
別に無理して笑わせたりすることじゃなくて
その方がどんな方なのか理解するためだから
聞き上手を目指せば良いのだと思っています。

知識があれば
意図的に質問をしたり
答えや答え方に注目することができますから
かなり、いろいろな情報を得ることができます。
せめて、4大認知症 は押さえておきましょう。

話の聞き方のポイントとして
私は次のことに気をつけています。
 
1)今はまだマスク装着が求められているところも多いと思います。
  こちらがマスクをしていると表情が伝わりにくいので
  意識して表情を強調するようにしています。
  ・笑う時には眼も笑う
  ・相槌を打ちながら聴く
  ・尋ねる時には小首をかしげる
  ・表情が伝わりにくいぶん、口調を強調する

2)相手の声のトーンと大きさに合わせる
  ・初対面の挨拶で声の調整も兼ねて相手の名前の漢字を尋ねる

3)重要な内容は、復唱する。
  ・認知症のある方が発言した表現そのままを使って復唱する。
  ・同じ内容で違う表現に言い換える

4)事実を確認する時と感情に焦点を当てる時と使い分ける
  ・記憶の連続性を確認したい時には事実確認を優先する
  ・エピソード記憶を聴いている時や認知症のある方が言いたいことがある時には
   感情に焦点を当てて聴く

5)言語表出が困難な時には、クローズドクエスチョンで確認する
  ・可否いずれも両方を尋ねる

順次、ご説明していきます。

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声かけの工夫

5本箸

基本中の基本ではありますが
参考になる方もいると思うので掲載します。

認知症のある方に声をかける時には
言語理解力に合わせた声かけをしています。
つまり、まず最初に言語理解力を評価できている必要があります。

ところが
現実には、この過程をすっ飛ばしている人がとても多いのです。
その時その場での言語理解力に応じた対応をしていないので
拒否されたり、合目的的な言動を促せないのは当然です。
逆に言えば
その時その場での言語理解力に応じた対応をすれば
拒否されることが減り、合目的的な言動を促せるようになります。

どういうことかというと
たとえば、認知症のある方をトイレ誘導しようとして腕を引っ張る人もいます。
もちろん、この時職員は無理やり強く引っ張るわけではなく動作介助の一環として行うわけです。
ところが、その方の立場に立ってみれば
自分で歩くことはできるのに
「トイレ行きますよ」と言われてトイレに向かおうとしていたのに
足を出すより先に腕を引っ張られて怖かった、だから余計に足が前に出なかった
すると、余計に腕を引っ張られたから「嫌!怖い!」と発言した。

似たような場面を見聞きしたことのある人は少なくないと思います。

上述の場面には職員側の問題が複数あるわけですが
それは別の機会に説明するとして
ここでは、言語理解力の評価に的を絞って記載していきます。

 

 

1)まず、アイコンタクトをとる
2)行動の目的を説明する
  (場合によってはここを割愛することもあります。
   目的の言葉ではなく、手段・方法の言葉を使った方が良い場合など)
3)行動を1工程ずつ分けて何をしてほしいか説明する
4)行った行動が適切であったことを伝える

たとえば
車椅子からベッドに移乗してほしい時には
いきなり「〇〇さん、ここ(手すり)につかまって立ってください」と言うのではなく
1)「〇〇さん」と正面から顔を見ながら声をかけます。
2)ここは〇〇さんの言語理解力に応じて方法を選択します。
  「ベッドに移ってください」もありだし
  「こちらにおかけください」もありだし
  「(ベッドをポンポンと叩いてから)どうぞ」もありです。
  目的の言葉ではなく手段・方法の言葉を使った方が良い場合は割愛します。
3)ここも〇〇さんの移乗能力と言語理解に応じて言葉を選択しますが
  「操作対象を眼で見ることを促す」
  「1工程ずつ分ける」
  「必要であれば最小限の言葉と手差しで伝える」
   例:手すりにつかまることが必要であれば、「どうぞ」と言いながら手すりを手で指し示す
     手すりをつかんだことを確認してから
     「どうぞ」と言いながらベッドを指し示す
4)「完璧です」「バッチリです」「OKです」「ありがとうございました」など
  笑顔で端的な言葉で「行った行動が良かった」ことを伝えます。

認知症のある方への声かけの工夫とは「優しく」「丁寧に」「否定しない」などの接遇に限りません。
「こちらのベッドに移乗していただいてもよろしいでしょうか」
という表現では理解・遂行できない方もいます。
そこだけを切り取って「認知症だからできない」と判断して移乗を全介助してはもったいないです。

本来、人は誰でも生きている限り能力を発揮しています。
ただ、能力は状況によりけり、発揮されるものです。
支持的な環境ではできることでも、プレッシャーのかかる環境ではできないことはよくあることです。
人の成長成熟とは、どんな環境であっても能力を発揮できるようになっていくことです。
認知症という病気であっても、かつてはその過程にいたのです。
たとえ認知症が進行しても限定した環境であれば、できることは多々あります。
認知症のある方がどれだけ円滑に能力を発揮できるかは
私たちが、その限定した環境をいかに見出し、適切に調整できるか、ということにかかっています。

 

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「その人らしさを大切にする」提案(1)

「その人らしさを大切にする」という言葉をよく聞きますが
よくよく考えるととても難しいことです。
  
そもそも、「その人らしさ」って何でしょうか?
どういう言動がその人らしさを大切にすることで
どういう言動だとその人らしさを大切にしないことになるのでしょうか?

ここを明確にできなければ
「その人らしさを大切に」と「言う」ことはできても「する」ことはできません。

耳に心地良い言葉だと
スローガンのように声高に唱えられるだけで
どうしたら具現化できるのかという道筋が示されなくても
「唱える=実践できる」かのように誤解させられてしまうかもしれませんが
理念は唱えるものではなく、実践する際の指針となるべきものです。
ところが、どのように実践に際して指針として扱い
どのように具現化してきたのか
具体的に現実的に説明できる人ってどれだけいるのかな?

私は
「その人らしさ」とは、その方が繰り返し使ってきた言動のパターンと捉えています。
「その人らしさを大切にする」とは、その方が繰り返し使ってきた言動のパターンに沿って応対するようにしています。

たとえば
人には解決のパターンや受け入れやすい説明の傾向があります。
・明るく前向きに
・論理的で明確
・周囲への同調
などなど。
その人固有の解決のパターンに沿って説明したり対応したりするようにします。

再認可能な帰宅要求をした方にはきちんと説明をしていますが
その説明の仕方もその方に応じて変えています。
明るく前向きに考える方には、明るく「今日はお泊まりなんですって」
論理的な対処をされる方には、「十分なお世話ができるようにここに入られました」
周囲への同調という対処をしてこられた方には、「ここにいる他の皆さんも一緒にお泊まりされます」などなど。
その方固有の対処パターンに沿った説明だと再認しやすくなります。

「その人らしさを大切にしましょう」と「言う」のではなく「する」提案(2)は次の記事で。

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