臨床あるある(折り紙は難しい:認知面)

作業に語らせる:輪くさり

昨日に引き続き
「折り紙はお年寄りには難しい」今日は認知面についてご説明します。

輪ぐさりのことについては、こちらでも随分前に書いていますが、
今日はちょっと違う側面から書いてみましょう。

折り紙の第一の特徴は、平面から立体に形作られていく。ということです。

私なんかは素朴にこの発想と思考に感嘆してしまいますが
本当に素晴らしいアイデアですよね。
風呂敷という布1枚で立体的な品物を包む。とか
同じ1つの部屋を、ある時にはお食事用、ある時には団らん用、ある時には寝室用と使い分ける
という発想と根底にどこかで繋がっているような気もします。

輪ぐさりは、工程そのものは少ないのですが
それでも認知症のある方には、なかなか難しいものです。
一番難しい要素が入っていると言ってもいいかもしれません。

作業に語らせる:輪くさり

作業に語らせる:輪くさり

目の前でやってみせても
見本をおいておいても難しい。
(こういう場合には、むしろ、そういうことをするから余計に難しくなると考えています)
輪ぐさりというイメージは残っているから
そのイメージ通りに作ろうとしても作れていないということはわかりますから
「あれ?」と首をかしげながらも、上2つの写真のようになってしまいます。

構成障害といって
空間の中での部分と全体の関係性および部分と部分との関係性を認識し再現することの障害があると
折り紙はとても難しくなってしまいます。
平面という二次元での認識・再現と立体という三次元での認識・再現をいったりきたりする能力が必要です。

それに加えて
遂行機能も必要になってきますから、「あれ?」と思った時に
構成能力と遂行機能が保たれていないと適切に修正することが非常に難しくなってしまいます。

輪ぐさりは折り紙の中でも工程数は少ないActivityですが
要求される能力は意外に複雑です。

鶴や奴さんになると
もっと工程数は増えてくるので
工程を身体で覚えている方はよいのですが
忘れてしまっていて構成障害が重度な方になると
隣目の前で一緒にやってみせても
認知症のある方は「同じように折れない」ということになってしまいます。

モチロン、このあたりに大きな障害のない方もいらっしゃいます。

私たち作業療法士は「作業のプロ」として作業分析ができることが強みです。
その方の障害と能力と特性が把握できる。
同時に、「ある作業」が要求する能力を分析できる。
それは、いろいろな疾患が呈する障害の種類と程度との関連性において視点を変えながらも分析できる。
ということをも意味します。

作業療法士という「人」だからこそ
瞬時に適切な「マッチング」をすることができるのだと考えています。 

Permanent link to this article: https://kana-ot.jp/wp/yosshi/2705