Tag: コミュニケーション

評価→対応:両方向

私がお会いする認知症のある方は
何らかの生活障害とBPSDが積もり重なってきた方です。

私の仕事は
認知症のある方の困りごとが少なくなるように
できればその方の良い面が良い方向性で発揮できるように
援助すること

そのために状態像つまり障害と能力がどのように現れているか確認する
そうするとどう対応したらよいのかは必然的に浮かび上がってくる。

その方の困難がひとつ改善されたことは、
良いことではあるけれど
これで終わりではなくて
入院前に生活障害やBPSDがどんな風に起こってしまったんだろう?
と考えることもしています。

たとえ、今、「よくなって」生活障害やBPSDが目立たなくなったとしても
「障害」そのものがなくなったわけではない。

かつて陥ったことのある状況は
再現されるおそれがあります。

生活障害やBPSDが起こった時に
「つながらないと困るね」「怒りのスイッチがわからない」
といった表現をする人もいるようですが
私は基本そのような抽象的な言葉は使わないようにしています。
というか、自分で自分がよく意味のわからない言葉を使うことに抵抗を感じるからです。

人間だから突発的なことは起こりうるし
人間だからわからないことはありうるし
病状としての変動もありうるし
だからこそ、わかっていることは明確にしておきたいと考えています。

認知症のある方の障害と能力を把握できれば
どのような場面設定であれば困ることが少なくなるか必然的に明確になります。
同じ意味で
どのような場面設定であれば困り果ててしまうのか
そして、困った時にどのように対応しようとするのかおおよそ推測できます。

評価を絞り込めれば込めるほど
両方向に、良くも悪くも、どのような現れ方をするのか明確化できる。

現れ方の方向性を両方向に考える

臨床において、実はとても重要なことだと感じています。

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フェイルセーフとフールプルーフに学ぶ

安全工学における、安全設計手法の代表的なものに
フールプルーフとフェイルセーフという手法があるのだそうです。

フールプルーフとは、危険な行動をしてもできない構造に設計すること
フェイルセーフとは、トラブル発生時には安全な方に設備が動くようにする仕組みのこと
なのだそうです。
(「ものづくり.com」 https://www.monodukuri.com より)

いずれも
人間は間違える
機械は故障する
という前提に立って、それでも安全を守るという観点から考えられたそうです。

「気をつけましょう」
「注意しましょう」
という言葉はよく聞く言葉ではありますが 。。。

どういう行動をすることが気をつけることになるのか
注意するということは具体的にどこをどうすることなのか
具体的に言うことが指導する。ということだと考えています。

リハ職としても
認知症のある方に対応する時でも
そして、とりわけ、作業療法士として
認知症のある方にActivityを提供する時には
安全工学の思想から学べることはたくさんあるように感じています。

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この先へ、今実践を

私は認知症のある方の
援助がしたいんであって
controlがしたいわけじゃない。

混乱している方に対して
混乱しないように静かにさせたいんじゃなくて
混乱していることを困っていることをそのとおり表現できるように
援助したい。できるようになりたいと考えています。

圧倒的に臨床で多いアルツハイマー型認知症のある方の場合に
混乱がひどくなると
何に混乱しているのかもわからなくなってしまって
助けてほしいのに、介入そのものが刺激となってしまって
悪循環になってしまう。そういうケースがとても多いと感じています。

でも、そのような場合でも
バリデーションをすることによって
表情が変わり、コミュニケーションがとれるようになり
今、何が辛いのか、何が嫌なのか
明確に表現できるようになることがとても多かったりもします。

表現された感情は
分かち合うことができる。
その過程において
結果として混乱や大声は解消されていく。

解消が先じゃない。
表現と分かち合いの方が先。

だからこそ、ご本人も辛いけど
だからこそ、今が大事
今ならまだ向き合うことの援助ができる

こんな時
バリデーションを学べてよかった
と心底思う。
バリデーションはツールだから万能ではないけれど
学ぶに値すると感じています。

バリデーションを学んでいなかったら
仕事が辛くて辛くてたまらなかったと思う。

援助とcontrolを取り違えたまま認知症のある方に対応しなくてすむし
なんといっても、バリデーションの根幹にあるのは
信頼なんだもの。

認知症のある方への信頼。
私たち自身への信頼。

食べられる能力をもっているのに
知識と技術がないために
結果として不適切な食事介助をしてしまい
そのために結果として認知症のある方が自らの食べ方を落としてしまう。。。

誤介助誤学習が起こるのと
まったく同じことが違うカタチで現れている。

辛さや困難さなどの感情を自覚し表現する能力をもっているのに
適切に表現を促す知識と技術をもっていないがために
結果として表現を抑圧してしまい、結果としてより大きな混乱を招いてしまう。。。

私がしていることは
今は小さな実践だけれど、未来につながってもいる。
確信している。

食事介助に関して25年以上言い続けてきて
研修会というカタチにもなったし
本というカタチにもなった。

今はまだ小さな声だけど
本当に意味のあることならば
本当に有効なことならば
将来必ずや他者に伝わり広がっていく。

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ステキ!「分身ロボットOrihime」

何気なく観ていたテレビ番組で紹介されていました。
「分身ロボットOrihime」

コンセプトがステキです。
「ロボットと人ではなく、人と人をつなぐロボット」
http://orihime.orylab.com

文字だけでなくて、思うように動かすことができるから
ニュアンスや感情まで伝えることができる。

技術の進歩ってすごい。
進歩を活用するアイデアがすごい。

たくさんの方に活用される日が来ますように。

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信頼に基づいて

本当のことを言っていい場所と人もあれば
そうでない場所と人だってあるけど
だからといって、積極的に自分が思ってもいないことを言募りたくはないな。

それは相手が誰であれ

私は作業療法士だから
人の能力と特性を把握して能力に働きかける職種だから
そこは信頼してる。
そして、今の自分にはできないことでも将来の自分はできるようになりたいと願っている。
今の自分にはできなくても将来誰かができるようになることを願っている。

ある人が私に言ったことがある。
「希望がなければ生きていけない。」

私は今改めて強く思っている。
「信頼がなければ仕事するのは辛い。」

人には人の体験があって
その人が観ている現実がある。
その現実に基づいて意思表明をする。

言い換えれば
自分がしていない、でも、他の人がしている体験は
知ろうとしない限り知ることは難しい。

信頼
相手への信頼
自分自身への信頼

それは、私にとってとても大切なものだ
ということを強く再認識した。

他の体験はあり得るということ
その体験の意味を言語化すること
頑張る。

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読んで!「制度対策部さんのブログ」

素晴らしい記事です!

制度対策部さんのブログ

4月24日に公開された「〜作業療法への他職種からの提言〜」

たくさんの方に読んでいただきたいと思いました。
横浜市で地域密着型通所介護を運営されている山出貴宏さんを取材された記事です。

第一に、取材された方がとても丁寧に
山出さんの語る内容を聴き取っていることが伝わってきます。
これだけのボリュームのある内容を書き起すことは大変なことですが
山出さんのお話を余すところなく伝えたいという書き手の熱意がにじみ出ています。

そして、山出さんの明晰で暖かな語り口から
メンバーさんを見る眼差しが目の前に浮かぶようでした。

素晴らしい実践が展開されていることがとても強く伝わってきました。

制度対策部さんは
「県士会活動☆あらかると」への研修会報告記事でも
写真が豊富で臨場感あふれる記事を何本も投稿されています。
思わず引き込まれる内容ばかりで
昨年からずっと「制度対策部さんは凄いぞ。目が離せないぞ」と思っていましたが
平成29年度しょっぱなから、新たな展開が繰り出され、またまたビックリです。

今年も制度対策部さんの活動は要チェック☆ですね。

でも、何よりもまず!
絶対に読んでほしいです。
「〜作業療法への他職種からの提言〜」

長文の記事ですが、リズムが良いので自然とスラスラ読めてしまいます。
読みやすい文章で伝えられている内容は本質を突いた内容です。
是非!是非!今すぐお立ちよりください m(_ _)m

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POST連載「こそあど言葉」使用の適否

POST PT・OT・STのための働き方発見サイト さんに
【認知症のある方を担当したら】その4 「こそあど言葉」使用の適否
が掲載されました!

こそあど言葉…知ってる?
そうそう「これ」「あれ」「それ」「どれ」

リハ中に何気なーく使ってる言葉だと思います。
Activityの最中、工程説明の時に「ここをこうして」とか
どう身体を動かすか説明の時に「右足をこうやって持ち上げて」とか

かく言う私も自分で言っててドキッとしたことがあります (^^;

認知症による構成障害がある方の場合には
「ここをこうして」「こうやって持ち上げて」という言語指示だと
隣に座って見比べられるような場面設定を工夫したつもりが
かえってわかりにくい…という状況になってしまいます。
(構成障害がないか、あってもごく軽度の状態であれば良い工夫なのですが)

構成障害がある方の場合には
「ここをこうして」を言葉で明確に伝えた方が良いのです。
「ここ」とは「どこを指しているのか」
「こうして」とは「何をどう動かすのか」

即座に言い換えができない場合には
案外、自分が工程を理解しているようで曖昧にしか理解していない
だから、つい、「こそあど言葉」を使ってしまっている
そういうケースが多いように感じています。

「こそあど言葉」使用の適否のカギは
言語理解力と構成障害と生活歴
どの能力がより保たれていて、どの能力がより低下しているのか
その判断にかかっています。

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発売☆「食べられるようになるスプーンテクニック」

かねてお知らせしていましたが
本日、4月20日(木)に日総研出版さんから
「食べられるようになるスプーンテクニック」
刊行されました。

素直に嬉しい (^^)

研修会なんかだと
直接お伝えすることはできますが
限られた方にしか伝えることができません。

必要としている方に伝えられる選択肢が1つ増えました。

どうもありがとうございます。

「困っている人の役に立つなら、どうぞ」
とおっしゃってくださったご家族の方のお言葉を忘れることはありません。

身をもって私に教えてくださった方々との日々を忘れることはありません。

そして
日総研出版の中野義之さんには最初から最後まで大変お世話になりました。
私は今でも全国的にはまだまだ無名の存在ですが
中野さんに初めてお会いした時にはもっと無名の存在でした。
でも、中野さんは、そういう外側に付属するもので態度を変えることが全くなくて
ただひたすら私の語る内容の根幹を聞き留め、理解してくださいました。
同業者でもないのにどうしてこんなに理解が的確なんだろう?と思ったくらいです。
(むしろ同業者より深く理解してくださったかも)
本の話が具体化してからも、常に優しく辛抱強く原稿を待ってくださいました。

中野さんのおかげで、この本を上梓することができました。
心から感謝申し上げます。

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