Tag: 状態把握

HDS-Rをとるならば:終わり方

HDS-Rが終わったら、それでおしまい。
にはしていません。

最後の問題、語想起課題(知っている野菜の名前を言う)を使って
少し会話をします。
この語想起課題でスラスラと野菜の名前を10個以上言えない
という方の方が圧倒的に多いからです。

「考えたけど思い出せなかった」
「イメージは浮かぶけど名前がわからなかった」という
「答えられなかった体験」で終わるのではなくて
語想起課題に関連した質問をして
「答えられた体験」をして終わるようにしています。

例えば
答えられた野菜を使って
「じゃがいも」と言えた方なら
「じゃがいもを使ってお料理といえば何がありましたっけ?」
「じゃがいもを使ったお料理で好きなメニューは何ですか?」

もしも
ひとつも答えられなかった方なら
「葉もの野菜と言えば何がありましたっけ?」
「お正月のお煮染めに出てくるお野菜って何でしたっけ?」
などとカテゴリーを絞ってみて答えられるかどうか確認します。

それでも難しいようなら
「食べ物で苦手なものはありますか?」
「大好きな食べ物って何ですか?」

少しお話をしてから終わりにするようにしています。

たとえ、このような配慮をしたとしても
「野菜の名前を思い出そうとしても思い出すのが大変だった」
という辛さをゼロにすることはできませんが
それでも、「答えられた体験」をしないよりはした方がいい。
こちらのマナーとして、行っています。

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HDS-Rをとるならば:関連づけ

認知症のある方は
日常生活で既にたくさんの失敗体験をしていることが多いものです。
「検査」という場面に直面して
失敗への予期不安を抱くのも当然だと思います。
それに、どんなに配慮したとしても「検査」をすることで
失敗体験をさせてしまうということを
完全に回避することはまた難しいことでもあります。

私たちにできることは2つ
将来できるだけ検査をしなくても適切な評価と援助ができるように
観察力・洞察力を磨く
そしてもう1つは今、目の前にいる方に対して
最大限配慮はするけど、検査しないとわからないからさせてください。
させていただいた検査の結果は〇〇さんのために活かしますから。
ということじゃないかしら。

impairmentがわからないと
行動観察から障害と能力の評価をすることが難しくなります。
impairmentを行動観察からスクリーニングできないうちは
きちんと検査をした方がよいと思います。

実習生ならなおのこと
HDS-Rの結果とその他の日常生活場面での言動とが
どんな風に関連して現れているのかを明確に把握できる体験を
しておくことが重要だと考えています。

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HDS-Rをとるならば:質的評価

どうせ検査をするならば
得点結果だけではなくて答え方…質的評価も行いましょう。

答えがわからない時には、どんな風な言動をする人なのか
HDS-Rの答えがわからない時の言動は
日常生活でわからないことに遭遇した時の言動と
結構相似しているものです。

例えば
わからない時に、じっとうつむいて黙ってしまう人は
日常生活でトイレに行きたいのに尋ねられなくて我慢してしまったり

逆にわからないことでも思いついたことをどんどん言ってみる人は
トイレを探しまわってあちこちの部屋のドアを開けてみたり

だからこそ
「おトイレは大丈夫ですか?」って
訴えがなくても声をかけてみよう。とか
他室訪問する人には、「ここは入っちゃダメです」と言わずに
「何かどこかお探しですか?」って尋ねてみよう。とか
具体的に対応を考えることができるし
そういう視点で「問題」として大きく表面化しないうちに
暮らしの中で起こる、その人にとっての困りごとをすくいあげる
観察の視点に結びつけることもできます。

HDS-Rをとるならば
正解、不正解。だけではなくて
その答え方にも着目することをオススメします。

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HDS-Rをとるならば:説明と依頼

実習生や若手のセラピストが一番困るのは
検査の依頼をする時にどうやって伝えるか
ってことなんじゃないかと思う。

「これから先もしも万が一、〇〇さんに困りごとがあった時に
すぐにお手伝いができるようになりたいので
そのためにご協力いただきたいのです。
私がお尋ねすることにお答えいただきたいのですが
お願いできますでしょうか?」

「ここにいるみなさんにお願いしていることなのですが
〇〇さんにもお願いしたいことがあります。
私がお聞きしたことにお答えいただけますでしょうか?」

実習に来た学生さんに相談されたら
まずは、前者のような言い方を私は勧めます。
こちらの目的そのままを伝えます。

時には、後者のような表現をすることもあります。
〇〇さんだけを特別視しているわけではないというニュアンスを伝えます。

認知症状態にある方は
状態が軽くても重くても
忘れてしまう、今までできていたことができなくなった等の実感を明確に感じています。
(言わないかもしれませんが)
その実感と否定したい気持ちとの葛藤状態にあって
自分だけがバカになってしまったというような周囲の人との落差のようなものを感じている場合が多い。
それらを踏まえた上で上のような表現で伝えています。

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HDS-Rをとるならば:目的

「HDS-Rは認知症のある方を傷つけるからとらない方がいい。って言われました。」

一時期、実習を引き受けた学生さんからよく聞いた言葉です。

その場の会話ができて
礼節が保たれていて
相手へ気遣いして合わせる能力がある人だと
施設や病院に入院・入所中の場合には
通常会話や行動観察から記憶の連続性を判断することが難しかったりします。

職員に「HDS-Rが〇〇点でした」と報告したら
「えーふざけていたんじゃないの?」とか
HDS-Rが一桁の方のサマリーに「普通のおばあちゃんです」と記載されていたり。
そういうことは枚挙にいとまがありません。

冒頭のような学生さんには
「うん、わかった。そしたらどうやって記憶の連続性を確認する?」
と尋ねます。
「HDS-Rをとらなくても記憶の連続性が判断できるならとる必要はない。
記憶の連続性の判断ができないと、適切な援助もできないでしょう?
他の方法で判断できないならHDS-Rをとりなさい。
そして一番大切なことは傷つけるリスクを承知でとった結果を援助に最大限活かしなさい」
と指導しています。

記憶の連続性が〇〇だから
この方に接する時には〇〇するようにしよう

これを考えられるようになるための検査としてのHDS-Rだと考えています。
モチロン、現実には1つの検査結果だけから方向性を決めることはありませんが
方向性を考える時の根拠が曖昧では、その上に積み上げるものも曖昧になってしまいます。

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POST掲載「座席案内」

POST 理学療法士作業療法士言語聴覚士のためのリハビリ情報サイトさんに
4月9日(日)、私の記事が掲載されました。
「リハビリを実施するにあたって」

今度出る本のPRもしていただき、どうもありがとうございます m(_ _)m

目の前にいる対象者の方に対して
適切なリハやケアを実践したいと願いながら
どうしたらよいのか、どう考えたらよいのか、
わからなくて困っている人の役に立つなら
そしてまわりまわって
認知症のある方とご家族の余分な困難が少しでも減ることにつながるなら
こんなに嬉しいことはありません。

まずは、明日からすぐに使える
そして、使った後に何が起こっていたのか理解できる
できれば、応用しようとして知識を深めてもらえる
最終的には、自分で観察することができて考えられるようになる

私が講演でお話する時や専門誌に依頼原稿を記載したりブログに記事を書く時に
気をつけているポイントです。

私の実践と提案は従来のものとは本質的に違っています。
「こうしたらいいんじゃないの」「原因探索と改善」ではなくて
まったく新しい視点で考え方を提案しています。

記事も本も読んでいただけたら嬉しいです m(_ _)m

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プラスの変化を

まったくの初対面で
相談にのる時に気をつけていることがあります。

埋もれている能力を1回では的確に見いだせない
だから、その時に困りごとが解決あるいは改善されるように
具体的に提案しにくい。

そんな時には
明確になっている能力からスタートして
困りごとを減らせる方向への途上にあるようなことを
提案します。

そうすれば
相談に来られた直接のきっかけとなった困りごとそのものはまだ残っていたとしても
目に見えて具体的な変化を共有化することができます。

認知症のある方ご自身にとっても
ご家族や介助する人にとっても
大きな支えになります。

「変わった。
変われるんだ。」

それは、誰にとっても嬉しいことです。
もちろん、その変化の連絡を受けた私にとっても、とてもとても嬉しいことです。

次のステップをどうしたらよいのか
認知症のある方の変化が教えてくれるんです。

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死人テストってスゴい

死人テストとは
1965年に行動分析学のOgden Lindsley によって開発された
「死人にできることは行動ではない」
という行動の定義のことです。

行動とは
状態ではないし
否定形ではなく肯定形で表されるということを意味します。

逆に言えば
肯定のカタチでの世界への働きかけ・意思表明=生きる
ということです。

雷に打たれたような
とは、まさにこういう状態を言うのか
というような気持ちになりました。

死人テストってスゴい。
端的な言葉で奥深い概念を明確に示しています。

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