Tag: コミュニケーション

口腔ケアも再認を活用

口腔ケアをする時に
「口を開けてくれない」
「歯で指を噛まれてしまう」
というケースは多々あります。

そうすると
たいていの人は
最初は丁寧に説明したり対応しても
最終的には強引に口の中に歯ブラシを入れたり
(だから十分なケアができない)
口腔ケアそのものを諦めてしまいがちです。

安易に
開口してくれない=Kポイント刺激して開口を促す
とパターン化した対応をしていると
指を噛まれてしまいます。

口腔ケアも食事介助と同じで
環境適応の再学習を口腔ケアという場面でおこなっている
という認識に立てば
認知症のある方がどのように説明を感受し認識し適用しようとしているのか
ということを観察・洞察しようという意識が働きます。

長い文章での説明は理解できなかったとしても
目の前で歯ブラシを見せ
歯ブラシを横に数回動かすという動作を見せて「歯磨き」を伝え
歯の一部を優しく数回ブラッシングするという体験を通して「歯磨き」を伝えると
「歯を磨いてもらう」ことを再認できるので開口してくれます。

体験を通して再認できるという能力を活用します。

歯磨きの再認が目的なので
あくまでも優しくそっとブラッシングを続け
だんだんと歯ブラシを奥歯に持っていき
奥歯の上から裏側へと歯ブラシを動かします。
ここまで受け入れてもらえれば
歯ブラシで歯の裏側をブラッシングさせてもらえます。

開口に協力してもらえるので
きちんと口腔内の確認もできます。

口腔ケアが手段の目的化で終わらないように
歯磨きや口腔内清拭をすることが目的ではなく
歯磨きや口腔内清拭をすることによって口腔内の衛生環境を保つことが目的
なのだということを忘れないようにしたいものです。

口腔ケアは疎かになりやすい部分でもあります。
ケアの実行という意味でも
ケアの質の担保という意味でも。

口腔ケアを介助者が一方的にするのではなく
認知症のある方と協働して行っている人は
認知症のある方の能力をまざまざと感じていると思います。

 

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スプーン操作を見直すべき兆候

対象者の方に下記のような兆候が見られたら
それは介助者がスプーン操作を見直すべき兆候でもあります。

<開口した時>
・舌が奥に引っ込んでいる
・舌が硬くなっている

<食塊をとりこむ時>
・顎が上がっている
・上唇を丸めずに閉じている
・口角から食塊がこぼれ落ちる
・引き抜いたスプーンに食塊が残っている
・正面ではなく介助者の側に頭部を回旋している

<食塊が口腔内にある時>
・咀嚼・送り込みに時間がかかる

<食塊を嚥下する時>
・喉頭が完全挙上しない
・喉頭が複数回挙上する

これらは、見ようと思えば今すぐに誰にでも観察できることですが
たいていの場合に、上記兆候は観察されず
「見れども観えず」
視界に入っているはずなのに意識化されていません。

上記兆候は
介助する側の人の不適切なスプーン操作が原因となって
引き起こされたり、増悪されたりしている兆候です。

つまり、改善可能な状態像なのに
見落とされていて対処されていないのが現状です。
 
食事介助の時には
ムセの有無しか確認していない人がとても多いのが現状です。

しかも、
強く激しくムセるとすぐに食事中止を指示する職員がとても多いという問題もあります。

ですが、このような対処は合理的ではありません。
ムセとは何か?
身体の働きについて本質を知ることなく思い込みで対処しているだけです。

この問題については次の記事で。

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DoとBe(優しくする ?優しくなる!)

認知症のある方への対応で
「優しくする」
「言動を否定しない」
「褒めてあげる」
等と言われています。

これらの常識化している対応について
何回も過去の記事にて疑問を提示してきました。

優しくするということは、優しくない ということです。
DoBeの違いです。

結果として優しくなるように
認知症のある方の状態がありありと実感を持って
わかるようになることの方が大切だと思う。

「大声を出す」「抵抗する」
というのは結果として起こっている表面的な事象に過ぎません。
表面的な事象に反映されている、なんとかしようとしている
その方の意図と能力がわかれば
結果として優しくなるし
否定できなくなるし
敬服したくなるし
少なくともキツい言い方は控えたくなる

認知症のある方は決して何もわからないわけではありません。

表面的に口先だけ、優しくしても、褒めてあげても
本心は伝わる
このサイトにお立ち寄りくださっている方なら
そういった実感をお持ちなのではないでしょうか。

本心として認知症のある方の努力と能力が実感できるようになるためには
知識をもとにした観察と洞察が必須です。
地道に努力を積み重ねれば誰でも実践できるようになります。

「あぁすればこうなる」式のマニュアルやハウツー以外の
思考をしたことがないと最初は大変に感じると思う。

「あなた、どうしてそんなに私のことがわかるの?」
「あんたが一番好きなんだよ」
そんな風に言われたり
認知症のある方が過去に信頼していた人と誤認されたり
他の人の前では見られないような能力を発揮する場面を共有できたり
そのような体験をしたことのある人はきっと私だけではないと思います。

ケアやリハの場面において
根底にどれだけ理解の実感があるのかということが
信頼関係に一番重要なんだとまさしく実感しています。

 

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「現場で本当に役立つ認知症研修会第2回」受付開始

「現場で本当に役立つ認知症研修会第2回」をオンラインで開催します。

作業療法士でなくても
学生さんでもどちらにお住まいの方でもご参加いただけます。

日時は
2022年5月14日(土)19:00〜20:30

テーマは
「認知症のある方への声かけの工夫〜眼からウロコの視点〜」

参加費は無料

事前申込制で
申込締切は4月30日ですが、
定員超過の場合には期日前でも申込を締切ますので
ご了承ください。

お申込は下記のURLにアクセスしてください。
https://forms.gle/HsStN3K2786zKAhD9

研修会の詳細は こちら をご参照ください。

お問い合わせは こちら からどうぞ。

 

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能力発揮は状況によりけり

能力発揮は状況によりけり
だから、場面設定の工夫や介助の仕方、声かけに工夫が必要なのであって
決して介助者の思う通りに認知症のある方を動かすためではありません。

たとえば
私は、ちぎり絵では和紙をタオルの上に1枚ずつあらかじめ置く
という工夫をしています。

ほんの一手間ですが
このような場面設定をすることで
1)手指の巧緻性が低下している方でも
  和紙を1枚ずつつまみ上げることが容易となる
2)和紙の微妙な色合いの変化を明確に認識しやすくなる
というメリットがあります。

和紙を缶の中に入れたままで提供するだけでは
ちぎり絵を行うことができない方もいます。

場面設定がその方に適切かどうかを検討・吟味することなく
「ちぎり絵の遂行不可」という判断
「和紙を1枚ずつ取って」という指示理解不可という判断
は、拙速であり、間違いであり、大変大きな問題です。

こちらをご覧になれば、お分かりのとおり
ナスの右側は濃い色の和紙を貼り
左側は明るい色の和紙を貼っています。
同じ左側でも、上の方は濃く、下の方は薄い色を選んでいます。

ナスを立体的に光と影や色の微妙な違いや濃淡を意識して
貼っていることが窺えます。

これほどの能力を発揮できるか、できないかが
和紙の提供の仕方という場面設定によって異なってくる。

能力は状況によりけり発揮される所以であり
場面設定の工夫が必要な所以でもあります。

場面設定の工夫次第で
認知機能障害が低下したとしても楽しめるように
能力と特性の発揮を援助することができるかできないかに関わってきます。

関連してこちらの記事もご参照ください。

「ちぎり絵の工夫(1)タオル」
「塗り絵」と「ちぎり絵」の違い:共通点
「塗り絵」と「ちぎり絵」の違い

 

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リハサマリーの工夫

記憶の連続性の低下が見落とされている

当院に入院される方は
施設やご自宅からといろいろです。

ご自宅から入院される方の場合では
ケアマネさんは、ほぼ100%に近い形で在宅サマリーを送ってくれます。
何らかの理由で他の医療機関に入院されていた方の場合では
病院のリハスタッフからは、どの病院であっても
ほぼ100%、サマリーを送ってもらえます。
激務の中、本当に頭が下がります。
 
一方、施設から入所される方の場合では
老健から来られる方でサマリーをいただける場合は少ないのが現状です。
病状改善した患者さんが当院から老健に入所されるにあたって、
こちらからサマリーを送ってもお礼状が来なかったり
その老健から他の方が当院に入院される時に、
リハサマリーが送られてこないこともあります。。。
まぁ、そういうところなんだと思うだけですけど。

でも、サマリーを送ってくださる老健も少数ながらちゃんとあって
本当にありがたい限りです。

そんなわけで
私も可能な限り、リハサマリーを送るようにしています。

病状改善し、当院を退院する時には
退院先が老健であれ、特養であれ、グループホームであれ、在宅であれ
退院先を問わずにサマリーを記載します。

一方、転倒骨折やCVA発症などで他院に転院することもあります。
そのような時にもリハサマリーを送っています。

転倒骨折であれば、骨折前の歩容や移動能力については
転院先のリハスタッフが欲しい情報の一つだと思いますし
転院先での認知症のある方へのリハが少しでも進展するように
どのような声かけであれば理解しやすいのか
混乱せずに済むように、回避すべき場面はどんな場面か
会話の糸口やAct.の参考になるように、
その方が好きなこと、若い頃の職業や趣味、得意なことや好きな歌や歌手名を伝えたり
こちらでの実践や対応の工夫を記載するようにしています。

また、リハサマリーを受け取った時にちょっとした工夫もしています。
お礼状をすぐに出すのではなくて、1週間くらい経ってから
直近のご様子も含めて伝えるようにしています。

私だったら、元気かな?頑張っているかな?と心配だし
そんなコメントをもらえたら、やっぱり嬉しいですし。

専門職がどんどん増え、対象者が利用するサービスが多様化している中にあって
連携のキーワードの一つが情報共有だと思います。

でも、連携のための連携にならないように
対象者のリハが進展するようにという本来の目的を忘れないように
気をつけています。

関連記事
「伝達するときは具体的に/意味も添えて」もご参照ください。

 

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「あそこに行く!」

転倒リスクの高い方が
食堂からパントリーを指さして
「あそこに行く!」と言って立ち上がろうとしています。

(あそこに行って何をしたいんですか?)と尋ねたら
「あそこの向こうにある郵便局に行くんだ!」と答えました。

パントリーには食べおわった食器が並んでいます。
パントリーの向こうは廊下です。

さて
あなただったら、どう対応しますか?

答えは
今週の土曜日、2月19日に掲載します。

 

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連携について:実践的な考え方と工夫

オミアシヲアゲテクダサイ

多職種連携、チームアプローチは
古くて新しい課題
私が学生の頃から課題として取り上げられていました。

作業療法は、
確かにさまざまな知見を集積・発展してきたと感じています。
一方で、本質的な課題ほど
私が学生の頃と比べてあまり改善が為されていないように感じています。

例えば
目標設定について
評価について(検査やバッテリーではなく状態像把握という意味)
多職種連携、チームアプローチについて

目標を目標というカタチで設定できず目的や治療内容と混同していたり
検査やバッテリーをとっても、
結果を対応に活用せずに評価と乖離した実践をしていたり
対象者のための連携ではなくて連携のための連携にすり替わっていたり。。。
 
就職したての作業療法士が困惑し
先輩に相談しても本心から納得できるような援助が得られず
提示された表面的な対応をやってみるしかない
そしてあまり効果がないにもかかわらず
代替案がないのでなんだかなぁと思いつつも
なんとなく口を濁してしまう以外の手が見つからない。。。
実習生や新卒に指導する時にも
実は内心困惑しながら指導しているうちに
数年経つと困惑すら感じないようになってしまう。。。
といった状況が昔も今も変わらずあるんじゃないかなぁ。。。?

私は臨床家として
対象者の役に立てるようになりたいと必死になって考えてきました。
良いと言われたものは必ず自分で実践して
どこがどう良くて
どこがどう使えないのか
事実に即して具体的に考えながら
抽象化・言語化するという過程を実践してきました。

それらについては
講演や論文という形でも世に問い続けてきましたが
総まとめとして別の形でもまとめてありますので
よかったらご参照ください。

目標設定について

関与しながらの観察について

今回、多職種連携・チームアプローチについて
実践的な考え方と工夫について概観できるように連載記事を書きました。

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連携について

1 飲みニュケーションでは連携の問題を改善できない
2 プロのチームスポーツに学ぶ
3 連携という抽象論ではなく具体的に改善していく
4 情報伝達において前提要件を認識する
5 看護介護職は変則交代勤務
6 情報伝達の工夫:使う場所に情報提供
7 対象者が変われば職員も変わる
8 そもそも何のための連携?
9 たったひとりでも変わる意義

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日々の実践を高め深めるための臨床家としての提言です。

 

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