会話の工夫9

「認知症のある方には、褒めてあげることが大事」
とは、ある種、ケアの常識のようになっていて
いろいろなところで聞きますが
よくよく考えてみると随分おかしな言葉でもあって
そのことについては、既に何回もこのブログでも書いています。

どうせ褒めるなら
「なんでもいいから褒めましょう」「一日一回は褒めましょう」
ではなくて
認知症のある方が大切にしているコト
特性が発揮されている側面について
事実を根拠に具体的に賞賛したり共感したり
「勉強になります」って伝えたら良いのではないでしょうか。

結果として賞賛せずにはいられなくなる
気がついたら自然に賞賛していた
というように
認知症のある方が
このような心身の状態にあるにもかかわらず
一生懸命頑張って努力して暮らそうとしている
ここの部分をこそ、深く実感・理解できるような自分になることを目的として
認知症のある方に接したら良いのではないでしょうか。

「褒める」という対人援助職の行為の底にある
こちら側の意図・理解の深度は明確に相手に伝わっています。

認知症のある方に真摯に向き合い続ける方なら
認知症のある方の感受性の鋭敏さを実感する体験をたくさん重ねていられるはずです。

 

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会話の工夫8

「認知症のある方に怒ってはいけない」というのは、
ケアの常識としてご家族の方でも一般の方でも知られていると思います。

でも、私はご家族にはそう言えません。。。

プロとして、お金をもらって、時間限定で接していても
時には自分の心の中に怒りの感情が湧いてくることはあります。
プロだから、自分の感情をぶつけてはいけないと思うけど
ご家族はご家族であってプロではない。
しかも、時間も空間も制限なしに常に一緒に暮らしているのだから
時には本当に怒りたくなることだってあると思う。

「怒ってはいけない」って言われたら
「じゃあ、どうしたらいいんですか?」って
ご家族は言いたくなると思う。

それに対して本当に効果的な方法を常に回答できる人なら
怒るなって言っていいんだと思う。
「こうしたら怒らずに済みますよ」
現実的に具体的に効果的な方法を回答できるように
ならないといけないんじゃないかと考えています。

私はまだその域には達していないので、ご家族には
「怒りたくなることもあると思いますが、怒っても状況は改善しないのです」
と伝えています。

そして
前の記事で書いたように
「怒りたくなったら大きく口を開けて笑い顔を作る」
ことを提案しています。

同時に
怒らずにすんだかもしれない局面に変えるために
どうしたら良いのかを検討するようにしています。
すぐに答えが出ないこともたくさんありますが。

 

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会話の工夫7

認知症のある方と接していると
時には理不尽な言葉を投げかけられたり
思いもよらぬ行動をされてしまうこともあると思います。

「病気がさせている」
「状況理解ができなくて結果としてそうなってしまっているだけ」

頭ではわかっていても
いくらプロフェッショナルだからといっても
こちらも人間ですから怒りの感情が湧いてくることだってあります。

そんな時、どうしていますか?

いろいろな生活障害やBPSDのある方を
長年対象に働いているので
それはいろいろなことがありました。。。

自分の怒りの感情をそのままぶつけてしまうことのないように
私がしていることは「口を大きく開けた笑い顔を作る」ことです。
口角を上げて微笑むのではなくて、破顔一笑と言った感じの笑い顔をします。

人間、大笑いの表情では怒れないものです。
試しに鏡の前で大笑いの表情で怒った口調で怒った言葉を言おうとしてみてください。

あまりのヘンテコさ、アンバランスさに
それこそ本当に笑いたくなってきて、怒りの感情をぶつけずに済みます。

それから
認知症のある方の感情を言語化して確認したり
自分の感情を言語化して i メッセージで伝えたりします。

いろいろな方法で自分の感情を抑圧するのは
その場では手っ取り早いかもしれませんが
感情に蓋をしただけで感情がどこかに消えたわけではありません。
たとえ自覚していないとしても。
(だから抑圧)
後々古傷となってさらに大きな感情となって再登場することもありえるので
そうせざるをえない局面もあるのでしょうけれど
私は推奨はしません。
そのことは後日また改めて。

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会話の工夫6

認知症のある方とお話する時には
口調も内容も
認知症のある方の特性・興味に合わせるようにしています。

小さめの声量の方には
小さめの声で

ゆったりした口調の方には
ゆったりと

弾むような口調の方には
こちらも弾むように

ユーモアたっぷりな方には
ユーモアを交えて

礼儀正しい方には
こちらもいつも以上に礼儀正しく

認知症のある方の表現の特徴を
私は理解し受け止めましたということを暗黙のうちに伝える意味で
相手に合わせるようにしています。

 

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会話の工夫5

臨床あるある、現場あるあるな
「声問題」として、ダブルメッセージについて書いていきます。

ファミレスやファーストフードのお店に行くと
店員さんがとても丁寧な言葉を使って対応してくれます。
でも、言葉とはウラハラな声だとすごく違和感があります。
気忙しそうな声だったり、平板な声だったり
言葉と声とに、乖離がある。

きっと、マニュアルで「言うべき言葉」があるから
それに従って言っているんでしょうし
こちらだって、ファミレスやファーストフードのお店に求めるものは
簡便さであって心地良さ・快適さではないし
仕事柄、大変なんだろうなーと思ってしまいますが。

ただ、言葉と声の乖離による明確なダブルメッセージを実感する場でもあります。

実際、臨床現場では本当に様々なことが起こりますから(^^;
声に気ぜわしさが現れてしまいがちです。

言葉と声が乖離していると
メッセージの受け手は混乱してしまいます。

認知症のある方、
特にアルツハイマー 型認知症の進行例や意味性認知症では
言語理解力が低下するので
何を言うか、という言葉の選択以前に
どんな声で言うか、という声が
コミュニケーションで重要な位置を占めているということは
もっと強調されてもよいのではないかと感じています。

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会話の工夫4

逆に
認知症のある方の声に、対人援助職が反応してしまうこともあります。

表面的には
認知症のある方の、大声、わがまま、といった「問題」として設定されがちですが
実際には
認知症のある方の声に対人援助職が反応して陰性感情を投影してしまい
大声やわがままというカタチで現れている「本心」を聴くことを回避してしまう。
そうすると諸々の「対応」を検討しても悪循環になってしまう。。。

現場あるあるではないでしょうか?

認知症のある方の「声」に耳を澄ますことで
自分の陰性感情と距離を取りやすくなり
「声」に影響を受けずに、あるいは影響を受けていることを自覚できるようになる。
まずは、そこから。

同時に
自分の声をコントロールすることを意識することはもっと大事。
でも
実際、気をつけている人って少ないんじゃないかな?

逆に
認知症のある方が情緒的に不安定な時やBPSDの最中には
「声」にも変化が現れます。
情緒的に安定してくると「声」も安定してくる。
それはもう、テキメンに違います。

認知症のある方も
対人援助職も
「声」に反応しあっている側面は、認識されにくいけれど非常に多いと感じています。

認知症のある方の声の状態を情報収集の一環として収集し
収集する際の自分自身の声の状態を自覚する。

臨床的、現場的には
非常に重要かつ実際的なのに
何故だか、案外見落とされがちな「声」
もうちょっと書いていきます。

 

 

 

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会話の工夫3

声には感情が
言葉には意思が現れる

声かけの工夫では
「何を言うか」と言うことが議論・検討されるけれど
声のコントロールが議論・検討されることは少ないように感じています。

実際には、声によって伝わってしまうことがとっても多い。

自分の声をコントロールできるように
少なくとも自覚できるように

そうすると
自分の陰性感情を認知症のある方に
そのままぶつけてしまうようなことを回避しやすくなると思います。

 

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会話の工夫2

復唱する時には
基本的には、言い換えないようにしています。

特に、認知症のある方が言われた最初の発言に対して答える時には
相手が使った言葉をそのまま使うようにしています。

「便所」と言われたら、
「便所」と言って「トイレ」「お手洗い」とは言わないようにしています。

認知症のある方が使った言葉をそのまま私も使うようにしています。
特に、意思疎通困難な方が使った言葉は言い換えないようにしています。

さほど、疎通困難ではない方でも
「便所」と言った方に
「お手洗いですか?」と言い換えて復唱すると
「手は洗わない」と言われたりします。

その方になじみのある言葉は、意味が明確に伝わりやすいと感じています。

また、相手が言った言葉を言い換えずにそのまま使うのは
クレーム対応の一環としても行われていると何かで読んだ記憶があります。
なるほどなーと思ったものです。

あなたの言葉を確かに受け止めました
ということを明確に伝える。

会話のドアを開く
言葉のキャッチボールの準備をする

ほんのちょっとしたことですが
今すぐにでもできること

 

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