Tag: 環境適応
以前に食事中の音環境を録音したことがあります。
その結果は、まさに、音声多重放送状態。でした。
こんなに大きく聞こえるとは思わなかった音の筆頭は
スプーンに残った食塊を食器に軽く叩いて落とす音でした。
金属音の高い音でカンカンと響きわたっていました。
配膳者のシャッターを上げ下げする音も
ガガガーッと響きわたっていました。
実際の食事場面では
スプーンを食器で叩く音や配膳者のシャッター音は
まったくといっていいくらい気にならなかった…。
そうなんです。
音が小さかった…のではなくて
音が気にならなかった…に過ぎないのです。
私たち職員は、気にならないでいられる
つまり、無意識のうちに脳の中で
スプーンや配膳者の音は
「気にしない」という取捨選択が為されているのです。
耳は聞いているけれど脳は聞いていないのです。
認知症のある方にとっては、どうなのか…
当事者のクリスティーン・ブライデン氏は
スーパーマーケットなどのにぎやかな場所での音環境を
このように表現しています。
「音の洪水」
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私たちは
感知した情報をそのまま認知しているわけではない。
「見た」と認識した時点で
すでに「見たい」もの「見よう」としていたものを
無自覚のうちに取捨選択されたものを見ているし
「聞きたい」もの「聞こう」としていたものを
無自覚のうちに取捨選択されたものを聞いている。
そういう前提条件を自覚していないと
認知症のある方にとっての
視聴覚環境の把握を見落としたり歪めてしまうことにすら
なりかねない…と感じています。
明日はその補足説明をします。
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「もっと時間があれば患者さん利用者さんと関われるのに」
そう言うギョーカイの人にたくさん会ってきました。
でも
そう言う人に限って
本当に時間のある時に
患者さん利用者さんと関わる人はいないのです(^^;
今できないことを
状況のせいにしてはいけない
たとえ
どんな状況だったとしても
置かれた状況の中で最善を尽くすしかない
そういう過程を経てこそ
状況が変わった時に、もてる能力を発揮できるのだと思う。
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結果として起こっていることなのですが…(^^;
「入院すると認知症がひどくなる」
これもよく聞く言葉です。 入院生活は刺激がなくて単調だから…と環境の問題にされがちです。 けれど、果たして本当にそうでしょうか?
入院生活というのは、日課がきちんと決められています。 医師や看護師の言語指示を聞き取り、理解し、記憶し、従うことが求められます。 また、病棟全体の中で病室やトイレの位置関係を相対的に把握し、行動できることも求められます。
このようなことは、アルツハイマー型認知症のある方にとっては、とても難しいことなのです。
もともと、認知症の中核症状はあったけれど、 なじみのある自宅という場でマイペースに暮らしていたから 症状が目立たなかった。 それが、入院というきっかけで、新たな場で新たな事柄に対応することが求められるという場面において表面化した。
入院生活という環境がよくないから入院すると認知症がひどくなる …というのではなくて 入院生活に適応できないくらいに 既に認知症が進行していたということが表面化した …のではないでしょうか。
環境適応能力が限られてしまう…ということは 認知症のある方が、身体疾患を発症した時に生じる課題の1つでもあります。
その課題にきちんと対応できるようになるためにも 結果として起こっていることと原因との混同なく 状態像の把握ができるようにならないと、対策も後手後手になってしまうように感じています。
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自発語はあるけどジャーゴン様で意思疎通困難な方
昔の歌をみんなで聞いたり歌ったりした後
「あー気持ちいい!」
大きな声で一言。
思わず手が止まりました。
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もうずいぶん前の話ですが
ADL車いす全介助、自発語がまったくない方がいました。
その方の食事介助をすると
いつも一定の方向を目で見ていることに気がつきました。
何を見ているんだろう?と視線の先を追うと
そこには白いご飯が。
次もその次の時も。
( 白いご飯を見ている? )
そこでお茶碗の位置を変えてみました。
位置がどこに変わってもちゃんと白いご飯を見ています。
( 白いご飯を食べたがってる? )
すごくうれしかったことを覚えています。
目で意思表示してる!
白いご飯が好きな人なんだ!
そういうことがわかってすごくうれしかったことを。
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いろいろあるけど
本もその1つ
中でも大切なのが、この2つ
『生命と自由』 渡辺 慧
『暗黙知の次元』 マイケル・ポランニー
どちらもちょっと前の本だけど
私にとっては宝物
文章が美しいから読んでいると心が洗われるように感じる
書かれている内容がとてもとても素晴らしい
いつか詳しく紹介しますね(^^)
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重度の認知症状のある方でも介助だけで食事摂取の様子が変わります。
今までたくさんの方の食べ方が変わるのを目の当たりにしてきました。
舌の不随意運動の激しい方
赤ちゃんのようにちゅうちゅうと吸い込むように食べる方
口のまわりからエプロンまで食塊がびっしりこびりついていた方
なかなか開口してくれない方
どなたも1日1回の食事介助を重ねるだけで食べ方が変わりました。
もっと軽い状態像の方では
コップ1杯のお茶ゼリーの摂取でも変わります。
最初と最後で変わるんです。
過去からの介助という環境への適応の積み重ねが
現在の食べ方なのです。
だから、食事介助という環境をこれから変えていけば
新しい環境に適応して食べ方が変わっていきます。
食事は、対象者の方と私たちとの恊働作業。
その過程を通して
目を見はるほどの能力と特性を知ることができる。
このことを1人でも多くの方に知っていただきたいのです。
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