Tag: 環境適応

適切なスプーン操作ができて初めて能力を見いだせる

認知症のある方の食べることに関する困難はいろいろありますが
まず、私たちが適切なスプーン操作をすることができて初めて
認知症のある方の本当の食べ方、本来の食べ方、食べる能力に
触れることができるようになります。

言い換えれば
私たちが適切なスプーン操作を実行できなければ
認知症のある方の本当の食べ方
何に困っていて、何ができるのか
気がつくことができないということになってしまいます。

相手の能力がないということと
相手の能力に気がつけないということは全く違います。

いったい、どちらの能力がないのか。。。時々そんな風に感じることもあります (^^;

認知症のある方の能力に眼を見開かされた経験をしたことのある人は
自らの見落としに細心の注意を払うようになると思います。

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たった1人が変わる意味

私のお話を聴いた後に
「他の職員にも伝えたい」
という感想をお寄せいただくことがよくあります。

本当に嬉しい。
是非、1人でも多くの人に伝えてほしいと思います。

と同時に
「どうやって連携をとっていったら良いのでしょうか」
というご質問をいただくこともよくあります。

それは、いろいろな方策がありますが
相手のあることだから、所属している施設によって
受け入れも実行も可能なことはさまざまだと思う。

善かれと思っての提案によって
提案者が疎まれるということだって起こりえます。
モノゴトには、いろいろな経過と背景がありますから
今すぐには難しいということもあるでしょう。
Bestを望んで性急な対処を焦ると
自分にとっても相手にとっても提案にとっても
良いことなくつぶれてしまいます。
それでは元も子もありません。

じゃあ、どうしようもないのか
というと、それもまたとんでもないことで
誰か1人でいいから、変わることには大きな意味があるのです。

もしも
対象者Aさんのいる施設において
職員全員が30%の介助が行えているとしたら
職員全員の力量を50%にするよりも
誰か、たった1人でいいから、80%の介助が行えるようになることが
とても重要なのです。

なぜか?
対象者Aさんにとって
30%の力量の職員に介助された時と
80%の力量の職員に介助された時と
明確に食べにくさ・食べやすさの違いの体験ができます。

職員によって食べにくさ・食べやすさが違う
つまり、Aさん自身の能力は職員によっって発揮される度合いが違う
自分の食べる能力は30%しかないわけじゃない。
自分には80%の食べる能力があるんだ!という体験ができます。

これは、とても大きな違いです。
天と地ほどの違いです。

多職種連携、チームワークがなぜ必要か
対象者にとってより良い環境が提供できるためであって
良い連携構築のためにチームワークが必要なのではありません。

手段の目的化を起こしてはいけない

誰か1人でいいから
まずは、80%の介助ができるようになることこそが必要です。
そして、その誰か1人いるのといないのとでは大違いだけれど
1人よりも2人、2人よりも3人いたほうが対象者のためになる

そのような視点から考えていくことが大切なのだと考えています。

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伝聞表現を使う

MCI〜軽度の認知症のある方に対して
ご家族の方へのアドバイスとして
「伝聞表現を使う」ことをご提案する場合もあります。

実は認知症のある方ご本人は
自分の物忘れを自覚している
でもしっかりしなければ。と自分で自分に言い聞かせている。
ご家族だからこそ、弱音を吐いて心配をかけたくない。
そういう方はとても多いのです。

そんな人に受診する。
薬を飲む。
水分を摂る。

そんな時にご家族の方は一生懸命だからこそ
「病院に行くのよ」
「薬を飲むのよ」
「水分をしっかり摂って」
と直接的な表現をしがちですが
そうすると認知症のある方は
ご家族が味方じゃないように感じがちです。

「うるさいわね!」と言いたくなる気持ちもわからなくないような。。。

「病院に早めに行くといいんだって」
「薬を飲むと身体がラクになるんだって」
「水分を摂るとぼーっとしなくなるんだって」
と伝聞表現を使うと
私はあなたの味方だ。。。ということを言外のニュアンスを伝えることができます。

入院に付き添ってこられたご家族が帰る時に嫌がられたらどうしよう
だからといって黙って帰るのも悪いし
と迷っているような時には
「今日はここに泊まるんですって」と言ってみてください。
とお伝えすることもよくあります。

ご家族の方は私たち職員に気を遣って
「今日はここに泊まるの」と説明しがちですが
そうすると認知症のある方には
ご家族が積極的に入院をすすめたのかと受けとめられる可能性があります。

そうではなくて
伝聞表現を使うと
ご家族は味方なんだけど
入院した方がいいと病院の人たちが言っている
というニュアンスを込められるというメリットがあります。

まったく知らない環境で知らない人たちと過ごすのですから
心配になって当たり前。
ご家族の方は味方なんだということが伝わるといいなと思います。

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能力に胸がいっぱいになる

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認知症のある方の能力に胸がいっぱいになる

そういうことって
本当によくあります。

食事介助の最初と最後で食べ方が大きく変わった方がいます。
舌で食塊を押し出してしまい食べこぼしが多かったのに
文字通り押し出さずに食べられるようになって食べこぼしもゼロに
それだけではなくて
意思表示としてうなづいているということが明確にわかるようにうなづけるようになりました。

私がしたことは
姿勢を少し変えて
スプーンを小さくして
スプーン操作を少し変えて
それだけ。

あとは、その方がもっていた能力なんです。

埋もれていて表面には出ない
でもちゃんともっていたその方の能力

こんなにわかっていて
こんなに能力があって
だとすると
今までどれだけ頑張って食べていたか。。。

そうなんです。
その方にイマ、ナニが起こっているのか
ということが明確に把握できるようになると
その方がどれだけ頑張っていらっしゃるのかがものすごく伝わってきます。

認知症のある方の能力に胸がいっぱいになります。

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読んでね「OTジャーナルvol.51 No.2」

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三輪書店さんから
1月25日に発刊される「作業療法ジャーナル」2月号の特集に
私の書いた「認知症のある方への対応-能力と障害の把握-」が掲載されます。
(1月号の次号予告でご覧になって既にご存知の方もいるかもしれませんが)

障害と能力のプロである作業療法士が作業療法士として寄与するとはどういうことか
認知症のある方に対して評価をもとにした対応の工夫とはどういうものか
臨床でよく遭遇する、あるあるな場面について記載してみました。

きっと、記載した方法論が役に立つことが多いと思いますが
その方法論が依って立つ考え方をお汲み取りいただければ、とても嬉しく思います。

なぜなら
本当に役に立つのは
方法論ではなくて、考え方なのです。

その考え方をもとに
それぞれの場で展開していただければ
きっと目を見開かされるような体験があるのではないかと思います。

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キュウべぇのセリフ

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前にも書きましたけれど
今さらではありますが
「魔法少女まどか☆マギカ」に出てくるキュウべぇのセリフで痛切に残っているものがあります。

 

「観測さえできれば干渉できる
干渉できるなら制御もできる
観測できない、存在すら確認できないものは手の出しようがない」

 

現実には
干渉と制御には大きな溝があるでしょうけれど
認知症のある方への対応についても本当にその通りなんだと感じています。

「観測できない、存在すら確認できないものは手の出しようがない」

目の前で起こっていることが何なのか
私たちが観察できない
あるいは観察しそこなっている
だから結果として見当違いのことをしてしまう

だとしたら
観察できるようになりさえすればいい

口で言うのはカンタンですが (^^;

でも、まず、そこから。なんですよね。

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自分が変われば世界が変わる

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その最たるものがスポーツだと思う。

でもリハの世界も同じ。だと思う。

結果を出すこと。

誰の目にも明らかなくらい
対象者の方が良くなるように
そんな関わりができるように。

モチロン、ないものねだりはできないけれど
埋もれていて表面に現れていない能力ってたくさんある。

講演後の質疑応答で必ずといっていいくらい受ける質問の中に
「多職種との協力関係をどうやって築いたらいいでしょう?」
というものがあります。

それはいろいろ気をつけることはたくさんありますが
巷間もろもろ言われていることよりも
まず、第一に自分がスキルアップすることだと伝えています。

対象者の方に対して
30%しかできない人の集まりの中で
もしも自分が50%できるようになったとしたら
他の人を50%に引き上げることよりも
自分が90%できるようになることの方が大切なんだと。

多職種との協力という手段は
対象者のためにという目的のため。
手段を目的化して本来の目的を見失ってはいけないと思う。

ここで対象者の立場に立ってみれば
30%できる人が9人いて残り1人が50%できたとしたら
50%できる人が10人になることを目指すよりも
9人が30%しかできなかったとしても
90%できる人が1人でもいた方がずっといいんです。

だって食事介助の場面だとしたら
その1人の時には
全然食べやすさが違います。
自分の能力がないせいではなくて
相手によって自分の食べやすさが違うという体験ができます。

自分自身への希望、信頼を実感できます。

たった1人が変わることで
その人にとっては世界が変わるも同然です。

そしてそのような関わりができたとしたら
その人の能力と可能性に目を見開かされるような体験になる。

人間って凄いな。
身体って凄いな。

それは私自身の励まし、支えにもなっています。

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言語化=明確化

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認知症のある方への対応や
お年寄りの生活支援に関して
いろいろなところでお話させていただく機会があり
本当にありがたく思っています。

時にはアンケートも拝見しますが
「認知症のある方の見方が変わった」
「今までの自分を反省した」
「がんばって勉強しようと思った」
という感想が書かれていると
本当に嬉しく、お話してよかった…と思います。

それは
認知症のある方への可能性について思いを馳せるからこそ
出た言葉であり
同時に
自分自身への可能性を信じるからこそ、出た言葉だからです。

がんばってほしい。

対人援助職は技術職だから
トレーニングの積み重ねで習得できる部分がすごく多いんです。

その1つに言語化があります。

言語化の過程は明確化の過程です。

これはもう、今すぐにたった一人でも心がけ次第でできる部分です。
でも。というか、だから。というか
実はあまり為されていない部分でもあります (^^;

よーくよく聞くのが
「言語化するのが苦手だから」
「言葉で説明するのが苦手だから」

ブブー!

本当は言語化が苦手じゃなくて
本当は明確にわかっていない。ということを
自分で言ってるんですよー。
そういう恥ずかしいことを人前で言うのはやめましょうねー。
プロなんだから (^^;

でも
そうやって現状を自覚できるのが第一歩。

「作業療法は説明するのが難しいから」
「作業療法士じゃないとわかってもらえない」
なーんて、したり顔で言っている人はそのままうっちゃって
さっさと言語化できるようにトレーニングしていきましょう!

いろんなトレーニングがあると思うけど
手っ取り早く、今すぐにもできるのは
ポジショニングでも食事介助でも自主トレでも
何でもいいけど、対象者に関することで
誰か他者に提示する情報について
一度言語化してみる。
そしてその言語化したものを
(最初は紙に書き出す、プリントアウトする等
「外」に出した方がやりやすいと思います)
言語化された通りに自分でやってみる
(ここで大切なことは書かれていないことは決して行わないこと)
そうすると、「あれ?」「ここはどうするの?」という
部分に気がつくことができるから
(そこは自分で何となくしていた部分なので言語化できない)
その部分の言語化に挑戦する
こういった繰り返しが大切です。

こういう具体的な個々の場面で
自分の中での言語化を繰り返し実践する
こういった不断の努力をしておくことで
「作業療法とは何か?」
「Act.選択をどのような根拠・手順で行ったらよいのか?」
という抽象的な事柄についても
言語化できるようになっていきます。

具体的なことを言語化できないうちは
抽象的なことを言語化したり、
ましてや他者とコミュニケーションできるようにはならない
トレーニングとはそういうものですから (^^;

それなりの立場にある人や
経験年数の多い人や
有名な人でも
「?」ということは、よくあることです。
世の中そういうものです。
だからいいや。じゃなくて
他人は他人
自分は自分
自分自身がプロとして恥じないように在るにはどうしたらよいか
自分自身で実践を積み重ねていくことがよっぽど大切です。

トレーニングは反復学習
技術はトレーニング=反復学習によって習得可能なものです (^^)

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