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衣類選択:構成障害&手続き記憶

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認知症のある方の病状の進行に伴い
更衣が困難になるケースがよくあります。

構成障害が進行すると
ズボンを上衣としてかぶったり
シャツが前後逆だったりすることはよくあります。

でも、そのような場合に全介助しか手だてがないわけではありません。

構成障害があったとしても
衣類の選択に注意深くなることで
能力を発揮しやすくなります。

どんな衣類だったら着ることが容易になるのか
どんな対応をしたら間違いが減るのか
具体的に根拠を明確にして
ご家族や職員に説明することができます。

それは、認知症のある方にとって
大きな助けとなります。

そのような判断ができ援助ができるのは
障害と能力のプロであるリハスタッフとりわけ作業療法士の役目
だと考えています。

一部で
認知症のある方に対して
日常生活のことやBPSDに対しては
介護スタッフに任せて
作業療法士はもっと早期の段階の方への作業的なアプローチをする
というようなことが言われていますが
(もちろん、その面への対応の重要性を否定しているわけではありません)
おかしな話だと感じています。

どんな衣類だったら着ることが容易になるのか
どんな関わりをしたらよいのか

目の前にいる方の
障害と能力と特性を判断できるからこそ
具体的にアドバイスすることが可能となります。

構成障害があっても
構成能力がゼロというわけではありません。

どんな条件であれば可能となるのか

それは残っている構成能力と手続き記憶を活用する
ということになります。

つまり
私たちは、構成障害の有無を確認するのが仕事ではなくて
目の前にいる認知症のある方の暮らしの援助をするために
構成障害の程度ーつまり構成能力を評価することが仕事なのです。
シロかクロか
ではなくて、シロとクロの間に無数にあるグレーの色調を見分けること
それこそが、私たち障害と能力のプロであるリハスタッフだからこそ
判断可能なことであり、また援助への活用について具体的に提案できるのだと
考えています。

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食事介助:実践する上での留意点

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口を開けてくれない、ためこんでしまう、ムセがひどい等
ほとんど経口摂取が難しくなってしまい
低栄養、脱水、誤嚥性肺炎、尿路感染などを起こしてしまった方が
もう一度食べられるようになるためには
留意点がいくつかあります。

まず、優先順位を明確にすること

たいていは、体力温存を優先しますが
そこまでの状態でなければ離床継続でも大丈夫です。

嚥下5相の
どこにどんな困難があってどんな能力があるのか
優先して使う能力は何か
その間次善の策としての対応はどうするか

次に
食形態の選択と一口量の選択を行います。

良くなっていく過程は
どんな方でもsensitiveなので
注意深く経過を追います。

体力アップを図る
一口量を上げる
食形態を上げる

それらの設定と実践の担保と確認

これができないと
いったん良くなっても容易に逆戻りしてしまいます。

つまり
きめ細やかな段階付けを行う
ということで
これは他のどんな障害のある方へのリハについてと
何ら変わることがありません。

認知症だからといって
特別なことは何もないのです。

食事介助において
その人らしさ。とか、ナラティブ。の重要性とか
言葉は綺麗ですけど、何を意味しているのか
私にはまったくわかりません。
モチロン、まったく無関係ではありませんが
もっともっと把握すべき重要な事柄が他にたくさんあるのです。

意外に私たちが見落としがちなのは
そして案外実践しそこねているのは
きめ細やかな段階付けを設定する際には
ある程度定着した能力の確認として行うのか
定着不安定な能力のトレーニングとして行うのか
提供者側が明確にしておくことということです。

あくまでも
目の前にいる方と自分との関係性において判断する
そういう心構えが一番大切なのに
誰かが言っているから(とりわけ有名な人が)とか
本に書かれているからとかを根拠に
(それらはとても貴重な知見ですが、鵜呑みにするのは違う)
自分が目の前に起こっていることを見ていない
自分が何をしようとしているのかも明確にしていないままに
言われている、書かれていることを漫然とあてはめているだけのケースが
非常に非常に多く、だからこそうまくいかない、結果が出ないのに
。。。そんなの、うまくいくはずがなくって当たり前。 (^^;
認知症のある方のせい。とされてしまうのは、とても残念で悔しい。

こういうことがEBMではない。です。

正直、
現実を知らないくせにエラそうなことを言ってる人を見ると
「?」とも思いますが
大切なことは現状を否定するのではなくて
現状を改善していくために自分ができることをする。
ということだと考えています。

私たちの側の問題なら
私たちが変わることによって
目の前の現実を変えることができる。

認知症のある方も食べられるようになり
私たちは人間の可能性の凄さの一端に触れることができ
新たな視点と新たな知識と技術を手にすることができる。

挑戦してみませんか?

たぶん、まだお申込受け付けていると思います。
(株)gene「認知症のある方への食べることへの対応」
http://www.gene-llc.jp/seminar_info/?id=1460074517-340536

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食べることで食べられるようになる

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その時々の状態を
的確に把握して的確に対応することで
その時々で食べられるようにしていくことで
食べ方も良くなり
少しの配慮で食べられるようになっていく

今まで一番少ない一口量は
シリンジで2ccから始めたケースがありました。
その他にも3ccとかあるし
ペムパルという栄養補助食品1本125ccを30分かけて摂取とか
お茶ゼリーコップに1杯を30分とか
当たり前によくあります (^^;

最初はお互いに大変ですけど
そういう量しか摂取できない方でも
多くの場合に通常の食事時間帯に通常の提供量が
食べられるようになっていきます。

2ccや3ccしか飲めない…ということを
認知症のある方のそういう状態像だという「原因」と認識するか
そういう状態像を来した「必然」があると認識するか
その違いは本当に大きい。

「原因」と認識している限り
食べ方を良くしていくことは難しい
結果として、脱水や低栄養や誤嚥性肺炎を予防することも
食べられるようになることも難しい
今までそういったことが「常識」や「現状」として
認識されていたのではないでしょうか?

でも本当はそうじゃない

「必然」と認識すれば
もう一度、私たちの実践を振り返り
異なる実践へのチャレンジをすることができる

その結果
重度の認知症のある方でも
もう一度安全に楽に円滑に早く
食べられるようになっていく

これは
本当に起こっていることなのです。

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(株)geneセミナー「対応」@大阪

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株式会社geneさん主催のセミナーが
2月7日(日)、大阪府社会福祉会館にて開催されました。

認知症のある方への対応の工夫を
単なるハウツーやマニュアルではなくて
ICFの理念にそって
評価と結びつけて考えるという視点でお話しました。

担当してくださったKさん
お世話になりました。
どうもありがとうございました。
Kさんから頂いたメールがきっかけで
geneさんのセミナーでお話できるようになったので
お会いできて本当に嬉しかったです。

参加してくださったみなさま
おつかれさまでした。
1月の評価編から引き続き参加してくださった方も
何人かいらっしゃって、ありがたい限りです。

私は本当に遠回りをしてここまで来ました。
これからの人たちが同じ轍を踏むようなことになっては
もったいない。
認知症のある方とご家族の困難が少しでも減るように
もっともっと対応を工夫できる余地があると考えています。
そのためには、余分な遠回りをするような人が1人でも少なくなり
もっともっと上に積み重ねていってほしいと願っています。

私の提唱している考え方と方法論は
ごくごく当たり前で基本的なものです。
だからこそ有効なのだと自負しています。
どんなツールでも下支えできる王道なるものだと。
(おーっと、言ってしまいました)

知らないために苦労されている方
誤解に基づいた方法論に翻弄されて疲弊している方
努力が足りないのではなくて
努力の方向性が違うだけなのだということを伝えたい。
私たちの側の問題なら
私たちの側で解決できるのだということを伝えたい。

認知症のある方と私たちとの恊働で
日々の暮らしの困難をもっと乗り越えていけるのだと。
そして認知症のある方の能力と
人間の脳の可塑性の凄さに触れる機会は
時に対人援助職としての自分が崩れそうになる時にも
励まし支えてくれる場なのだということを伝えたい。

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原因ではなく必然

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ICFのポイントは、実はここにあると思う。

いきなりで恐縮ですが (^^;
「ICIDHではなくてICFの考え方で」
ということは、既にもう耳タコ状態だと思いますけど
現実には、ICIDHが顔をのぞかせる…しかも、そのことに気づいてない
って結構よくよくあります (^^;

たとえば
認知症のある方の生活障害やBPSDへの対応に関して
「不安や何らかの原因があるから探索して改善する」
という考え方が現在ケアの最前線で言われていることだと思います。
でも、この考え方って、ICIDHそのままでしょう?
抽象的な理解と具体的な方法論が乖離しているのに
なぜか流行しているとそのまま踏襲されてしまう…(^^;

原因と考えるから、一生懸命な人ほど辛くなるし
莫大な時間とエネルギーを費やした割に
効果は高くなかったりする…(^^;

人口に膾炙していることって
真実ではないけど、真実の一端が含まれているから
ということが多いように感じています。

私は
「原因」ではなくて「必然」と考えています。

「原因」を追求するのではなくて
現状そうなる「必然」がある。
その「必然」を理解した上で。というか、理解できると
(心情的に理解するという意味ではなくて
必然として起こっていることが根拠をもとにわかる。ということ)
どうしたらよいか方策が自然と浮かんでくる。
その方策は
目の前にいる人の不足や困難を修正したり改善したりするのではなくて
その人の能力を活かした方法論に他ならない。
まさしくICFの理念を具体的現実的に表現することになる。

自分も辛くならないし
(だって「修正」って
要するに、その人の今も過去も否定することになるんだもの。
そんなの対人援助職として、イヤじゃん。)
目の前にいる人にも行動変容があらわれる。

「必然」を理解できない時には
焦らない。判断を保留する。思考と感受を停止しない。かな。

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着地点 ≠ 困りごとの解消

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認知症のある方の生活障害やBPSDに対して
それらがゼロになることを
最初に着地点に設定して
さて、どうしようか?

とは、考えない方が効果的だと思っています。

繰り返しになるけれど
生活障害やBPSDは、確かに困り事ではあるけれど
障害だけでなく能力も反映されているから
結果として起こっていることに過ぎないのに
ゼロになることを着地点に設定するということは
能力を評価しないということをも意味してしまいます。

どうしたら良いのか、わからない
そんな時は、評価ができていない
今、何が起こっているのか、わかっていない時

だから
そんな時ほど
今何が認知症のある方に起こっているのか
焦らずに、評価することが大事

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(株)geneセミナー「認知症」@大阪

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geneさんが合同会社から株式会社に変わって
私が初めて行うセミナーが
1月24日(日)エルおおさかにて開催されました。

ご参加くださったみなさま
おつかれさまでした。
運営を担当してくださったHさん
お世話になりました。
どうもありがとうございました。

九州や四国から参加された方もいらっしゃったようですが
無事にお帰りになれたでしょうか?

当日はふだんSNSでお見かけする方とお話することもできて
とても嬉しかったです。

何人かの方から
2月7日のセミナーにも参加します。とお声かけいただきました。
お忙しい中、ご参加くださることに感謝します。
その分、みなさまの期待に答えられるようなお話ができるように
努力します。

まだまだ寒い日が続きそうですが
こちらでは、梅の花が咲きそろっています。
季節の移り変わりを感じます。
もうすぐ春なんですね。

季節の変わり目
年度の変わり目
みなさま、どうぞくれぐれもご自愛ください。

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私だったら

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NHKのHPでみかけたこの記事。
TVのニュースでもみました。

「認知症が影響 エアコン操作間違え熱中症に」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150921/k10010243811000.html

記事には
認知症のある方ご本人の言葉として
「リモコンの操作はよく分からない。
教えてもらってもボタンをあちこち押してしまう」
とあります。

また、ご家族の工夫として
エアコンのボタンに色をつけたり、
イラストで詳しく使い方を書いてあるノートも放映されました。

この「説明」「援助」は
認知症のある方には難しいなぁ。
私だったら
違うアドバイスをするのに。
と思いました。

ボタンがいっぱいあってわからないから
あちこち押してしまうように
文章がいっぱい書かれていると
何が書かれているのか文字は読めてもわからない
丁寧に書かれているほど、わからないんじゃないかしら。
たくさんの実物のボタンとノートの説明と
対照しながら理解するのは難しいんじゃないかしら。
でも、リモコンを操作しようとしてボタンを押すことはできる。
ただ、どのボタンが何を意味するのかわからない。

だとしたら
電源の「ON・OFF」のボタンだけ見えるように
硬い不透明の素材でカバーを作ります。

カバーを無理矢理はずしてしまうようだと
使えないテになってしまいますし
温度調整やタイマー設定など
それでも「見守り」は必要ですが。
ただ見守りが必要…ではなくて
どこの見守りが必要で、どこは見守らなくて大丈夫
という「その人にとってのポイント」があるから
そこを伝えられる人がいないと
見守る人は大変だと思うし
ご本人だって辛いと思う。

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