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非習慣的遂行機能の評価

「非習慣的遂行機能の評価」

当院に実習に来る学生さんには、遂行機能の評価は習慣的遂行機能と非習慣的遂行機能の2つを評価するように指導しています。
でも認知症の病態が進行してくると、非習慣的な遂行機能評価の「使えるバッテリー」がないのです。
正確に言うと、現存する非習慣的な遂行機能評価バッテリーは要求水準が高すぎて、中等度・重度の認知症のある方には実施できないのです。
そこで、たとえ標準化されていなくても「評価」ができるツールを考えようと思いました。
それがこちらです。

非習慣的遂行機能の評価

「この線の上にシールを3枚貼ってください」という課題です。
もうすでに、講演等で紹介してはいますがより多くの方に知っていただこうと思ってご紹介します。

用意するものは、写真にあるように、真ん中に太い線をくっきりと引いたA4用紙1枚とシール数枚。
写真ではシールがたくさんありますが、通常はシールは6枚提示しています。
その場の言語理解が可能であれば、HDS-R0/30点の方でも行えました。
この課題のオススメは、日々の暮らしの場面で失敗体験を重ねている認知症のある方にとって失敗やわからないという不安を想起させにくい。いかにも「テスト」「検査」という雰囲気が少ないということです。
また手指の巧緻性の低下があっても、シールを「貼る」だけなら失敗もしにくい。
認知症のある方にとっては「紙に○を書く」よりも「丸いシールを貼る」ほうがずっと心理的抵抗感は少ないものです。
それでいながら遂行機能の「意図・計画・立案」「実行・評価・修正」「目標保持」の過程を明確に評価することが可能です。

「線の上にシールを貼る」のは、線の真上に並べて貼っても良いし、重ねて3枚貼っても良い。
線の上の方の空間にシールを貼っても間違いではありません。
肝心なことはそれらのうちどの方法を選択したのかということです。
なかには、どの方法を選択すべきか確認する人もいるかもしれません。

そして指示した枚数よりも多めにシールを用意しておくというのがもう1つのポイントとなります。
3枚で貼り終えることができるのか、それとも「3枚」を忘れてしまって用意されたシールをすべて貼ってしまうのかが観察ポイントになります。

一見単純に見える「ツール」ですが、人によってさまざまな結果を見せてくれます。
もちろん、私は日常生活での行動観察を重視していますが、認知症のある方の非習慣的な遂行機能障害が明確になることによって、日常生活での暮らしの困難がどういうものであったのかより明確になり、ひいてはどのような援助が適切なのか具体的に考えることができるようになります。

当院では重度の認知症のある方が多いので、このような形で実施していますが、もう少し軽度の方であれば課題を複雑にするように工夫できると思います。

認知症のある方に心理的抵抗感がより少ない方法で、重度の認知症のある方の非習慣的遂行機能障害を評価できる「ツール」としてご紹介しました。

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食事介助のセミナー

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今自分がしている介助が
食べさせている・口の中に入れている「使役」なのか
目の前のAさんが食べることの「援助」なのか
その違いが明確にわかるセミナーです。

合同会社gene
「認知症のある方への食べることへの対応」
http://www.gene-llc.jp/seminar_info/?id=1421721432-587034

参加された方に
食事介助の奥深さと怖さを感じていただければ
そして
認知症のある方の能力と脳の可塑性の凄さを感じていただければ
と思います。

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食事介助 ≠ 口の中に入れる

ちょっと待った

大きくて根深い誤解の1つ

食事介助 = 口の中に入れること
そんな風に思っている人
そんな風に介助している人
って実はとっても多い

でもそれは違う

食事介助 = その人が食べることの援助

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今の1手間が将来の3手間5手間を予防する

我慢のしどころ

だから、今ちょこっと手をかけるのはどう?

今ちょこっとかける手間が
将来の3手間5手間を予防してくれる

今の1手間を惜しむことで
今はラクでも将来3手間5手間かかってくる

認知症のある方への対応も
食事介助でもまったく同じことが起こってる

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痛切に思ったこと

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私はラッキーだったんだと思う。

実習で重箱の角をつつくような指導はされなかったし
就職して間をおかずに
雲の上のような人のデモンストレーションを見ることもできた。

こんなに腕前が違うのに
同じ「療法士」だから
ご家族は同じ時間で同じお金を払わなきゃいけない
その理不尽を痛切に思った。

担当が私だったから
良くなるものも良くならない。
そんなんじゃあ、申し訳ない。

そこからスタートできて
本当にラッキーだったんだと思う。

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地表と地下の結びつけ

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Activityには地表と地下を結びつけるようなPowerがあると思った。

だからこそ
容易に
意図せずとも
「援助」から「使役」にすり替わってしまうし
逆に
その人自身を「再発見」「再構築」する体験ともなりうる…のかも。

「悪しき物語に対抗するために−村上さんのところ/村上春樹 期間限定公式サイト」
http://www.welluneednt.com/entry/2015/02/15/173400

これを読んで
もう少し考えてみたいと思った。

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行動変容は両者に起こる

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認知症のある方の
行動変容が起こる時には
認知症のある方だけではなくて
援助者にも変容は起こる

援助者の視点や考え方に
否応もなく変容を迫ってくる

関係性の中で起こる変化は双方向のもの

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今しかできない

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認知症のある方は
単に能力低下してできなくなっているのではなくて
能力があるが故に混乱してしまう。
能力があるからこそBPSDも起こる。

でも
疾患の特性上、いつか必ず進行していく。

今日できていることが半年後にはできなくなるかもしれない。

だからこそ
今日ある能力を
埋もれている能力を見いだし
合理的な方向で発揮できるように援助したい。

能力があるのに
埋もれたまま喪失してしまうのは
哀しい。

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