Category: ホントにあった体験談
大きな声で独語が続いて対応困難…というEさん。
前の施設では、高機能のリクライニング車いすを使用していたそうですが
うーん…ポジショニング、合ってない。
全身が突っ張り、なんと、顎まで歪んでしまっています。
上顎は左前へ、下顎は右奥へ…
(ここまでの方は見たことない…!)
当然、舌の動きまで制限を受けてしまっています。
咀嚼運動がほとんどできず丸呑み状態です。
初回の食事介助はとても恐かったことを覚えています。
その方に、ベッド上と振り子式車いすでのポジショニングを設定し、
看護介護職員にも伝達してみんなで実施したところ、
みるみるうちに筋緊張が改善し全身の関節可動域も改善してきました。
咬合不全も解消(!)
閉口している状態が増え(!!)
上唇でのとりこみも改善(!!!)
口唇閉鎖しての咀嚼もできるようになりました(!!!!)
それだけではなくて、なんと、大声での独語まで著明に減少したのです。
この現実は、いったい何を意味しているのでしょう?
独語や大声は、本当にBPSDという症状だったのでしょうか?
不適切なポジショニングによる、苦痛の意思表示だったのではないでしょうか?
認知症のある方が、身体的な障害も合併することは多々あります。
認知症のある方にも、身体面に対して適切に対応できることが求められているのです。
Eさんには、ポジショニングをしただけです。
ポジショニングだけで、こんなにもEさんは変わったのです。
身体面への対応…とりわけ、ポジショニングの必要性・重要性について、再認識させられた体験談。でした。
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あり得るだろうな…とは思っていましたが、ホントに遭遇した時には一瞬かたまってしまいました(^^;
HDS-R29/30点の方がかなひろいテストで3点。文意把握不可。
たぶん、多くの人がHDS-R29/30点というと、認知症なしって判断してしまって「普通の人」として対応し、それ以上の観察に手を抜いてしまうんじゃないかと思います。
でも、この方はご自宅ではいろいろと異変がありました。
ゴミ箱の中に捨てられた食べ物をあさって食べる…
ご家族との言い争い…
ですが、第三者にはそのような様子は想像できないくらい、そつのない対応をされます。
また、このような方の場合、えてして「認知症」という診断はつかないものですが、そうすると、ご家族の困惑、ご本人の不安感…いずれに対しても対応が後手になってしまいがちです。
作業療法士は医師ではないので、もちろん診断することはできません。
ですが、状態像をきちんと把握しておくことはできます。
現状を適切に把握することができれば、将来の暮らしの困難を予測して対応の布石を考えておくことができます。
その他にも、HDS-R26/30点でかなひろいテスト4点。文意把握不可。
という方もおられました。
HDS-Rは簡単で便利ではありますが、結果だけにとらわれると重要なことを見落としかねません。
検査に対象者をあてはめるのではなくて、
検査結果を状態像把握のために活用できるように…。
以上、ホントにあった体験談。でした。
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ADL車いす全介助、食事も全介助、意思疎通困難で唸り声をあげるCさん。
ADL車いす全介助、食事も全介助、発語も発声も困難なDさん。
Cさんは、お食事の時に舌を前にぐーっと突き出して食塊をとりこみます。
Dさんは、下顎を前にスライドし受け口のようにして食塊をとりこみます。
このような方に口腔機能訓練なんてできようはずもありません。
けれど、この食べ方は仕方ないのか…といえば、そんなことは決してありません。
お2人とも、毎日の昼食時、おやつ時に食事介助をしただけで
3ヶ月後には、上唇をつかったとりこみができるようになりました。
この現実は、いったい何を示しているのでしょうか?
重度の認知症のある方も学習している!環境適応している!のです。
不適切な介助に適応しようとして、不適切な食べ方をしていた。
適切な介助に適応しようとして、適切な食べ方ができるようになった。
認知症のある方の食べ方は
その方の能力と障害と特性を反映しているだけではなくて
こちらのありようをも映し出している…。
ちょっと相当こわいことです。
と、同時に希望を強く感じた体験談。でした。
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以前にこんな体験をしたことがあります。
Aさんという方が総合病院から転院してこられました。転院サマリーには「普通のおばあちゃんです」という記載がありました。
お会いしてみると、うーん…普通??? HDS-Rをとってみたら9/30点でした。
このテの話題には事欠きません(^^;
まだまだ、認知症=BPSD(認知症の精神行動症状)、認知症=ヘンなことを言ったりしたりする人、という誤解が根強くあるのだと感じています。
Aさんは、会話ができます。
できますが、言われたことに答える…という感じです。
(お食事ですよ。食堂へ行きましょう)
「はい。ありがとう。」
(お手洗いに行きましょうか?)
「はい。お願いします。」
その場の会話は成立します。生活に密着した事柄の言語理解もできます。
けれど、記憶の連続性は低下しているので
(さっきお手洗いいきましたよね?)
「あら?そうだったかしら?」
(お食事が済んだら歯磨きしましょうね)
と言われたのに、忘れてそのまま座っていたり…といったことがみられます。
病院や施設など職員が日課を動かしているようなところだと、Aさんのような方の認知症の中核症状が、職員に気づかれにくいのだと思います。
けれど、普通のおばあちゃんだからといって、普通に退院をすすめられて、はいはい…とご自宅に戻ったら、さぁ大変!ということになっては困ります。
少なくとも、専門家と呼ばれる私たちには、適切に状態を把握できることが求められているのではないでしょうか。
認知症という言葉そのものは、ずいぶんたくさんの方に知られるようになってきていると思います。ですが、認知症という状態の適切な理解については、まだまだ不十分なことも多いのでは?と感じています。
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