Category: 工夫のひきだし あれやこれ

予防可能その3:美容院脳卒中症候群

美容院脳卒中症候群(スタンダール症候群)は
美容院業界では対策がとられているようですが
高齢者施設では、そこまで注意喚起がなされていないようにも思います。

美容院脳卒中症候群とは
長時間の頸部圧迫や上方注視によって
後頸部にある椎骨動脈を圧迫してしまうことによって
めまい、ふらつき、手足のしびれやひどい時には脳梗塞を起こしてしまうことを言います。

高齢者施設でよくあるケースが
普通型車椅子に乗車している方が
頸部後屈位のまま長時間居眠りをしているというケースです。

認知症が重度になると
手足のしびれを言語化できないことも多々ありますので
職員が予防的に対応できないと片麻痺がいつの間にか生じている
ということも起こり得ます。

このような姿勢で居眠りしていたら
ベッドで臥床を促したり
ベッド臥床が難しい場合には、
ヘッドレストを後付けしたり
ヘッドレストがついているタイプの車椅子に変更することによって
予防するように気をつけたいものです。

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予防可能その2:下垂足

  
たまに見かける下垂足
足関節を背屈しようとしてもできません。
圧迫による腓骨神経麻痺による場合は
不適切な側臥位ポジショニングや長時間の横坐りや
椅子で足を組んだまま長く座っている方に起こることがあります。

認知症が重度になると
ご本人は下垂足の自覚がなくとも
無意識に股関節や膝関節を過剰に屈曲する代償歩行をしています。

認知症が軽度までの方なら
プロフッター を装着してもらうことも可能ですが
重度になると説明した意義を忘れて外してしまい装着継続が困難になったりします。

代償歩行ができるとはいえ、歩行時の転倒リスクはありますから
予防できるに越したことはありません。

側臥位ポジショニングは適正に設定すれば良いのですが
足を組んで座るというその方の座り方の癖を直すというのは難しいものです。
長時間、足組み座位が連続しないように
体操やトイレ誘導など、立ったり足を動かす機会を作ることで
腓骨神経の長時間の圧迫による麻痺を回避させる工夫をする方が現実的だと思います。

 

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視覚理解の援助:ナースコール

認知症のある方で
ナースコールを使えそうで使えない方がいます。

なぜ、使えないのか
どうしたら、使えるようになるのかは
人それぞれですが
ナースコールを目立たせる工夫が有効な場合があります。

私たちは「ナースコールがどこにあるのか」を覚えていることができますが
認知症のある方の場合、どこにあるのか伝えても忘れてしまいます。
特に夜間のお部屋は暗くなっています。

夜中にトイレに行きたくなった時に
ナースコールを必死になって探さなくても
目立つように気がつきやすいように
蓄光シールを貼ることもあります。

ナースコールにベタベタ汚れがつかないように
養生テープを貼った上に蓄光シールを貼るようにしています。

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視覚的理解の活用:透明のコップ

ダイソーさんで購入した、透明のコップです。

認知症があると、いろいろなことを忘れてしまいますが
目で見てわかるチカラは、かなり保たれています。

ところが
高齢者施設や病院では不透明なコップを使用していることが多いですよね。

近時記憶が低下していると
水分摂取を促しても不透明なコップだと
飲み残しがあるということを忘れてしまいます。

透明なコップだと、コップにまだ飲み物が残っているということが一目瞭然
飲み残しがある→飲む という
環境認識→判断→行動の一連の過程を職員の声かけではなく
認知症のある方の視覚理解を活用する
環境調整によって援助することが叶います。

「水分摂取に促しが必要」な方の中には
「飲みたくない」のではなくて
「飲んでいたことを忘れてしまう」
「飲み終わっていないことを忘れてしまう」
「コップの中に飲み物が残っていることを忘れてしまう」
というケースも多々あります。
そのようなケースに有効なのが、視覚理解に働きかけるという環境調整による工夫です。

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検査結果は表裏一体/できないできる一体

目標設定の記事で
評価と治療の乖離
検査結果を対応に活かせていない という内容を書きました。

せっかくですので
もうちょっと具体的に書きますと
HDS-R18点の方とHDS-R3点の方に同じ声かけをしているとか
構成障害のある方に折り紙を提供して
「ここをこうしてこうやって」と説明しているというようなことは
認知症のある方や高齢者を対象とした現場でよくよく見られることです。

しかも
それで指示通りに実行できないと
簡単に「疎通困難」とか「認知症だから」と言ったり
折り紙のほとんどをセラピストが仕上げて「頑張りましたね」と言ったり
認知症のある方の手をセラピストが動かしている状態にしていたり
というのも現場あるあるです。。。

本当にそれで良いのかなぁ。。。?
 
うまく言語化できないけど
「どこか違う」「何か良くない」と
漠然とした違和感を抱いている人も少なからずいると思います。

HDS-R18点であれば、遅延再生に一部得点できたりヒントで答えられることが多いでしょうし
HDS-R3点であれば、遅延再生はヒントを出しても答えられないケースが多いと思います。
つまり、近時記憶障害の程度が違う、記憶の連続性が異なるので
リハ場面で諸々の説明をする時には配慮が必要です。
HDS-R18点の方の場合では
最初に1回説明するだけで「何をどうやるのか」リハ中の20分間覚えていられても
HDS-R3点の方の場合では
説明を数分しか覚えていられないので
工程を簡略化し、その工程を終えるたびに同じ説明を繰り返す配慮が必要です。
ところが、現実には
HDS-Rをとって「認知症重度」と判断しているのに
認知機能が低下していない方と同様の対応をして
その結果、認知症のある方が工程を遂行することができないと
「やっぱり認知症が重度」と判断を上塗りするだけのセラピストは多いのです。。。
いやいや、対応を変えなきゃ。でしょうに!
そうすると「ちゃんと優しい声かけをしてる」って言うのです。。。

構成障害とは
全体と部分、部分と部分の位置関係を認識し再現する能力の障害のことですから、
「ここをこうしてこうやって」と見本を見せながら説明しているつもりであったとしても
隣にいるセラピストの折り方と自身の折り方を照合させながら動作することを要請しています。
構成障害がある方に対して、できないことをさせていることになってしまっています。
再現できなくても認識はできる方は大勢いますから
「自分がやろうとしてもできない」体験を反復強調させていることにもなってしまっています。
ところが「ここをこうしてこうやって」が適正な説明だと思い込んでいる人も多いのです。
構成障害のある方にとって最も困難な説明なのに。。。
  
もちろん、このような対応をしているセラピストに悪意があるわけではなく
単に知識がなかったり、概念の本質を理解できていないことによって
本当は適切な対応でないことを自覚できていないに過ぎません。

  だからこそ、厄介とも言えますが。。。
  まさに、
  「地獄への道は善意で敷き詰められている」

  「天国には善行が満ち、地獄には善意が満ちている」
  わけです。。。

HDS-RやMMSEをすることが評価でもなければ
立方体透視図模写テストや五角形模写課題をすることが評価ではありません。
「検査=評価」ではないのです。

HDS-Rや立方体透視図模写テストなどの検査は、
ふだん能力低下に直面せずに暮らせている人に対して
「できない、わからない、困った」ことに直面させる体験でもあります。
そのような辛い体験をさせてまで得た結果なのだから対応に活用しましょう。
私たちは評論家ではないのですから。

評論家なら、
「HDS-Rが1桁で重度の認知症」
「立方体透視図模写テストが全然できなかったから構成障害重度」
と宣って終わりで良いでしょうけれど
私たちは評論家ではなくて、援助者なのですから。

それら検査結果を踏まえて
「じゃあ、どうするのか」が問われているのです。

リハとは、「じゃあ、どうするのか」の協働作業です。
「認知症だから、どうするのかが難しい」わけではありません。

「HDS-R3点だった」
という結果から「どうするのか」が出てくるわけがありません。
「じゃあ、どうするのか」を具現化できるためには
能力を見出し活用することが必須です。
「HDS-R3点だった」ということは、
1)3点はとれた
2)尋ねたことの枠組みで答えることができた
ということでもあります。
ここに、能力を見出すヒントがあります。

そしてこれって、実は
検査に限らないし
リハの場面設定に限らないし
食事介助でもポジショニングでもBPSDへの対応でも言える
ことですし
もっと言うと認知症のある方に限らないと思うのです。

 

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車椅子サイドガードの工夫

上の写真の緑色の矢印の部分に
足が挟まってしまうと聞いて
赤い星印のようなカバーを作りました。

認知症のある方は
じっとしていられなかったり
理解ができなかったり
かったるかったりといろいろな理由で
手足を動かす方もいます。

足が挟まってしまっては危ないので
挟まらないようにどうしようかと考えました。

まず考えたのは、板を設置することですが
実際に足を挟んだことがある以上、板では足が当たって痛いだろうし
板を認識できずに手で持ったり投げたりしたら危ないし

段ボールや発泡スチロールも考えましたが
手で持ったり投げたりするリスクは変わらないし
トランスファーのたびに、どけたり入れたりするのは手間がかかります。

毎回必ずしなければならないというのは
大した手間ではなくても毎回毎日続けなければならないのは
心理的な負担が増してしまうものです。

そこで考えたのが、フェルトカバー
フェルトなら触れた時の感触も柔らかいし
布とは違ってほつれることもないし
幸い、使用する方は食べ物などで汚染する可能性が少ない方だし
サイドガードを上げ下げしても、使用時に違和感はないし手間も増えない
フェルトが1枚だと伸びてしまうので
耐久性を考えてフェルトを3重に重ねて縫い留めました。

縫うのはもちろん手縫いだったので大変ではありましたが
赤い点線のところは部品ギリギリに2重に縫って
緑の実戦のところはアームレストの形状に沿って縫うことで外れにくいようにしています。

フェルトの色が目立つと手でいじってしまうので
色も目立ちにくいように車椅子本体の色、特にアームレストの色と揃えて黒にしました。

汚染の可能性が少ない方だからフェルトを選択しましたが
もしも、汚染の可能性が高い方なら交換の簡便性を優先して
ビニールクロスにガムテープか養生テープかな?
手で触られにくいように切り口は外側にしてテープで固定した後に
固定跡を隠すために同一のクロスを両面テープで留めておくとか?

そうすればサイドガードを上下させる時の操作の邪魔にはならないし
ちょっとした汚れは拭き取るだけで
しっかり汚れを落としたい時には全面交換になるけど
交換時の手間もさほどかからずにできます。

ちょっとした工夫ではありますが
考え方としては
乗車する対象者の方の安全確保を第一に
操作する職員の工程・手間を増やさないことを考え
汚染可能性について検討して素材を選択した
ということになります。

 

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かきこみ食べ→小さいスプーン?根底にある問題

かきこみ食べをする方ってよくいると思いますが
対応としてどうするかというと
たいていの場合に
かきこみ食べをしないようにと、箸や小さいスプーンが提供されるかと思います。
でも、それでかきこみ食べが解消されたかというと
小さいスプーンでもかきこみ食べをしてるんですよね。。。
当初の問題設定に対して実効的な対策となっていないのに
そこはスルーされるという。。。
そして、かきこみ食べも解消されないし
当初、なかった別の問題、例えば、吸い込み食べや誤嚥といった問題が
新たに出現してしまいます。
実際に、「かきこまずにすくって食べるトレー」で紹介した方は
かきこみ食べ→小さいスプーン→もっとかきこみ食べ→誤嚥性肺炎に至っていました。。。
現場あるあるです。。。

こういった、パターン化した対応ができるということは
〇〇という時には△△する、というパターン化した思考回路がベースにあるわけで
パターン化した方法論を単に当てはめているだけで
目の前にいる方の状態像を的確に把握できているわけではないのです。
根本的な問題はここにあります。

逆に言えば
先の記事で紹介したトレーだって万人に通用する方法論ではありません。
当然のことですが。
ただし、紹介した事例にはドンピシャ!的を射た対応だった、
つまり、事例の状態像を的確に把握できていたことの証左だったわけです。

蛇足ですけど
別のかきこみ食べをしていた方には
全介助で食塊のとりこみの練習をしたこともあります。
かきこみ食べをせざるを得ない必然が
上肢の操作能力にあるのか、口腔機能にあるのか、私はきちんと判断しています。
私は必ず、最初にその方の食べ方の総体を観察していますが
多くの人は、かきこみ食べをしているという判断が先にあって
その方の食べ方の総体を観察しないという現実があります。

多くの人は
自身の気になるところしか、見ていません。
観察が不十分なんです。
やることばかり考えるけれど、やる前に観なければ。
でも、観るに足る知識がないから観ることができない。
だから、やることで補償(防衛機制)してるんです。
これは、食事介助に限らず、
認知症のある方への声掛けやリハやポジショニング、Activityの提供などなど
対応全般に言えることです。

 
だからこそ、私たちが変われば対象者の方も変わるんです。

ここに、未来への希望があります。
私が情報発信する意義もここにあります。

つまり、養成の問題なんです。
 
私の話は具体的です。
聞いた人が汎化できるように思考過程を明確化しています。
自己努力を惜しまない人に必要な情報提供ができるレアな話です。
講演あるあるの
単なるハウツーではありませんし、
理想論・抽象論だけを語る(騙る)こともありません。
理想を具現化してきた事実をお伝えしています。

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認知症のある方へのActivity 現場あるあるの誤解その2

 

Activityって何のために認知症のある方に提供するのでしょう?

提供者側の考えによって
ずいぶん実態が異なるように感じています。

問題は
提供されたActivityについて
認知症のある方が
どのように感じ
どのように為していたのかを
どれだけ観察しているか
どれだけ確認しているか
どれだけ本音を語ってくれる関係性を構築しているのか
ということだと考えています。

知識があって
状態把握ができれば
適切なActivityを選択・提供できるだけでなく
提供した後の様子や発言から
何が起こっているのか
どうしたら良いのかもわかって適切に修正することができます。

選択・提供に悩む人は多いけど
事後確認・修正も大切だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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