Tag: 立ち上がり

なぜ股関節周囲筋が硬くなるのか?

なぜ、生活期の方の股関節周囲筋が硬くなるのか?

一つには、前の記事で記載したように
臥床時のポジショニングの問題があると思っています。
褥瘡予防と言いながらも
結果的に逆効果となるようなポジショニングをしてしまっている。。。
近位部を短縮させるようなポジショニングをしてしまっている。。。
クッションを外した後でクッションを入れる前よりも
下肢の内転内旋がひどくなっている事実を目の前にしながらも
「善かれ」と思って為したことなので
見ているのに観落としている、PDCAを回せない、という現実があると感じています。

もう一つは、
立ち上がりの問題です。

足で踏ん張って床半力を利用して立ち上がる方法を指導された人は多いと思います。

でも、この写真を見て重心がどこにあるか考えてみてください。

床半力は足底から垂直に働きますが(黄色い線)
重心は黄色い線よりも後方にあるので
床半力だけでは立ち上がれません。
後方にひっくり返ってしまいます。
そこで無自覚のうちに腰背部の筋肉を収縮させて離臀しようとします。
 
床半力の力を大きくしようとして
踏ん張れば踏ん張るほど
後方にひっくり返らないように
より強く腰背部の筋肉を使って離臀させる必要が生じます。

そして
移乗動作時には
自力遂行する方でも介助を受ける場合でも
離臀した状態のまま、股関節屈曲させたまま、方向転換をするケースが多いものです。

日中、長時間車椅子で離床する生活、
つまり股関節屈曲位を取り続ける生活をしていて
その上、1日に何回も行う移乗動作時に股関節屈曲を使う方法で動作して
さらに、臥床ときに筋の近位部を収縮させるようなポジショニングをして
。。。これで、股関節の屈曲拘縮が起こらないわけがないと思います。

でも、逆に言えば
日中、短時間でも臥床時間を設けて
移乗動作ときには腰背部を伸長させるような方法で移乗動作を行うように指導をして
臥床時には身体がリラックスできるようなポジショニングをする
。。。そうすれば、股関節の屈曲拘縮が起こりにくい状況を作れると確信しています。

上記全てを同時に実践できなくても
どれか一つだけでも変われば、身体の働きは相当変わります。

 

 

 

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筋力低下廃用論に惑わされない

中核症状とBPSD

高齢→廃用・筋力低下 といった論調は
一見正当のように見えるので
リハやケアの分野ではよく聞く考え方ですが
疑問を抱いたことはありませんか?

高齢者に「筋力低下」と判断して
「立ち上がり」をリハプログラムとして提供している方は
とても多いと思います。
筋力低下の判断根拠として本当にMMTをしましたか?
MMTがどの段階であれば筋力低下で、
どの段階であれば筋力OKなのでしょうか?

私は過去に複数のALSの方を担当したことがありますが
筋力低下とは、まさしく力が入らない状態です。

CVA後遺症や認知症のある方など生活期にあって
「筋力低下」と判断された方々との状態は全く違います。

見た目、「立ちあがれない」からといって
「筋力低下」 とは限りません。

生活期にある方の場合
立ち上がり時に腰背部の筋肉が同時収縮を起こしてしまって
個々の筋力はあるのに総体として立てない身体
なっている例は枚挙にいとまがありません。

筋力が低下しているのではなくて
筋力の使い方、身体の働きが下手になっているのです。

以前、老健に勤務している時に
担当のPTが立ち上がりも含めた個別リハをやっていましたが
立ち上がりが自力で行えず、ずっと介助されていました。
その方に私が座る練習だけして、
立ち上がりは全介助で行うという

身体の使い方の再学習を行ったら
一人で立ち上がれるようになって
「あれ?立てた?」と驚かれたことがありました。
同じようなケースを多数経験しています。
 
老健ですから、個別リハの他にも生活リハとして
食事やおやつや排泄介助の時にも立ち上がれるように援助がなされます。
一日何回になるでしょう?
廃用ではないんです。

筋力強化や立ち上がりではなくて
身体の使い方の再学習を行って
立ち上がりができるようになったケースは枚挙にいとまがありません。
しかも、重度の認知症のある方でも可能です。

末梢の問題ではなくて
身体各部の協調性の問題、中枢の問題なんです。

立ち上がれない→筋力強化 という考え方は
身体協調性の低下を筋力で代償しようとさせるので
身体の使い方の再学習をせずに
立ち上がり100回なんて、効果がないどころか逆効果になってしまいます。

リハやケアの分野では
一見正当そうに見えて、その実不適切なことがたくさん流布しています。
「立ち上がり100回」もその一つです。
過剰な同時収縮によって
腰を痛めたり、身体が硬くなってADLが低下してしまいます。
今すぐにそんなことはやめて、
「座る練習」を取り入れていただきたいと思います。

立ち上がりができない方は
たいてい、座り方も上手にはできません。
どさっと後方にひっくり返るように座ります。

できないことを過剰努力させてやらせるのではなく
努力の方向を変えて、できることのでき方をよくしていく。

「座る練習」でのポイントは重心の移動方向を適切に導く ことです。
「立ち上がり」は全介助で
 力を入れない、踏ん張らない、身体の動きと重さを活用する ことがポイントです。
詳細はあちこちで記事にしていますから検索してみてください。

 

 

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座る練習をする

IMG_0519

自分で何とか立ち上がれる
という能力って、たとえば
「自力でトイレに行く」ためには必須の能力ですが
その能力維持のために
「立ち上がり100回」なんてナンセンスです (^^;

それよりも
自分で何とか立ち上がれる という状態像の方は
たいてい、座り方も円滑にはできないことが多いです。

ドシンって倒れ込むように座っている方がとても多い。

そのような方には
静かに、そっと音がしないように座る練習をすると良いです。

そうすると
立ち上がりも円滑にできるようになったり
歩き方も円滑にできるようになったりします。

この時大切なことは
「がんばって」「過剰に努力して」座る練習をするのではなくて
一緒にラクに座れるように
介助を主体として座る練習をすることが大切なんです。

ムリさせないことが大切。

そうすると
大抵の場合に、自分で楽に座れるようになってきます。

立ち上がりが困難な方や
あるいは立ち上がりの維持のために
筋力強化や立ち上がりの練習をするよりも
ずっとラクに効果的に立ち上がりができるようになります。

えぇ〜?ホント?と思う方は、試してみてください。
立ち上がりの練習をしている時には
絶対座る機会があるんだから
その時にただドシンと座らせるんじゃなくて
ちょっと手を貸して介助で座る練習をするだけなので
時間は全然かからずに、プラスαの練習をすることができます (^^)

ただ、押さえておくべきポイントはあります。
それはまた明日 (^^)

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