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本の紹介「第3の脳 皮膚から考える命、こころ、世界」

本の紹介「第3の脳 皮膚から考える命、こころ、世界」今日は本の紹介をします。
「第3の脳 皮膚から考える命、こころ、世界」
著者:傳田光洋
朝日出版社
http://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255004013/

この本の書評を機関誌「作業療法」に書いたことがあります。
一般書だけど、著者がとてもとても丁寧に仕事に向き合っていることが伝わってきます。
分野は違っても同じ専門家として、その姿勢に尊敬の念を抱きました。
また、OTなら、どの分野で働いていても
「皮膚」には日常的にお世話になっていることと思います。
でも、皮膚のこと、全然知らなかった…。

学生のときに、皮膚が脳と同じ外胚葉由来ということを聞いて
すごく不思議に思いました。
皮膚と脳とではその働きがまるで違うのに何故同じ起源なんだろう?って。
そんなこともあり、手に取ったのがこの本です。

すごく刺激的な本です。
著者が丁寧に積み重ねている研究結果から
皮膚は単なる袋ではない。
触覚に錯覚があることや
色の識別をしている可能性
免疫機能も
思考回路も
伝達回路までもっている可能性について記載されています。

もう1つ、驚いたことは
私が大好きな大切にしている本のことが
この本にも記載されていたのです。

「非因果律的世界を護る皮膚」として
渡辺慧の生命論のことが記載されています。
「未来が過去を決定する」
そして著者もまた皮膚の働きから
生命の非因果律的存在の意味を考えています。

私たちは普段対象者の身体に触れることを許されている職業ですが
もしかしたら
私たちが業務として対象者に触れることには
私たちが想像している以上の関与が為されているのかもしれません。

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バリデーションセミナー2012

バリデーションセミナー2012バリデーションってご存知ですか?
まだまだ知らない人のほうが多いと思いますが、認知症(主にSDAT)のある方とのコミュニケーションの方法論です。

私は2006年にバリデーションワーカーの資格を取得しました。
バリデーションと出会えて本当に良かったと思っています。
バリデーションの勉強をするまでは、OTとして「共感」については、それなりに自負している部分もあり、また他者からもそのような評価を受けてもいましたが、バリデーションワーカー資格を取得するスクーリングの過程で「自分は何と浅はかだったのだろう」と、とても恥ずかしく感じたことを覚えています。
認知症のある方との対応の過程において、とても辛い、自己嫌悪に陥る日々もありましたが、学んで以降は本当に自分がラクになりました。
また、バリデーションの勉強をしたからこそ、OTとしての本分も発揮できるようになったと感じています。

私がスゴイなと思うことの1つに、セミナーも本もスクーリングも、始まりが過去の反省で始まるということをあげたいと思います。
「かつて自分も過ちを犯していたが、変わることができた。だからあなたも変わることができる」というメッセージです。
そんな研修に出席したことはありません。
創始者の思いが伝わる始まり方です。
もちろん、バリデーションで全てが解決できるわけではありませんが、対応の根幹を支えるトレーニングになると考えています。
認知症のある方に接する人はもちろんのこと、対人援助職に従事する人全般に知っていただきたいと思っています。

私は、自分の名刺に「作業療法士」だけでなく「バリデーションワーカー」も記載するようにしています。名刺交換した時に、たいていの方に「これは何ですか?」と興味をもっていただけるからです。初対面の方には会話の糸口にもなるし、バリデーションそのものの宣伝にもなるかな?と考えています。

「バリデーションセミナー2012」についての詳細はこちらのサイトをご覧下さい。
「公認日本バリデーション協会」
http://www.clc-japan.com/validation/seminar.html#vali2012

バリデーション創始者のナオミフェイル氏が来日講演されます。
東京では、7/8(日)と7/16(月)に江東区で開催されるそうです。
迷っているなら、あなたの背中、私が押します(^^)

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映画『木漏れびの家で』

映画『木漏れびの家で』とても良い映画です。
お年寄りに接する若い方には特に観てほしい映画です。

お年寄りの日々の暮らしを鮮やかに紡ぎ出しています。
1日をどんな風に過ごし
どんなことを感じているのか
歳をとるということで
暮らしにどんな不便が生じるのか。

細やかに丁寧に
そっと、でも、明確に描き出します。

現実に起こることの中に
過去も未来もある

そのことを自らの体験を通して確信できた時に
老いるということを
否定や肯定にとらわれずに
ただ、そのままに生きることができるのだろうか。

映像のもつ「ちから」は強い
「ちから」に頼らずに
「ちから」を活かしている映画だと思う。

主人公を演じる俳優の方も90歳を超えておられるとのこと。
生身の人間が任意の役柄を演じることの凄みも堪能できます。

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老年期認知症ナビゲーター

老年期認知症ナビゲーター認知症のある方を対象としている方に超オススメの本です。
メディカルレビュー社
http://m-review.co.jp/shop/goods.html?item_base_id=130

本の後半にちょこっと、認知症のある方への対応についての記載もありますがむしろ、医学情報について基本的な概要を押さえることのできる本です。
診断基準、評価スケール、原因疾患、症状、病態などについて見開き2ページに1項目が記載されている形式で統一されています。
左ページの左端には項目名が右ページの右端には下位の項目名が印刷されているため調べたいことを探す時に非常に便利です。

簡潔にわかりやすくまとめられています。
まず、1冊として勧めるならこの本。

まずは、教科書として読んでみて必要に応じて該当項目を読み返して教科書のようにも、辞書のようにも使える本です。

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高齢者の孤独と豊かさ

高齢者の孤独と豊かさ私が、実習にくる学生に事前課題として読むようにすすめている本です。
「高齢者の孤独と豊かさ」竹中星郎 NHKブックス

この本の素晴らしいところは
さまざまな老齢期を迎えた人をみつめる著者のまなざしの温かさと
とりまく現実を見据える公正さです。

古今東西の老齢を迎えた人の声や
臨床で出会った人の生き方を
鮮やかに温かく描き出します。

私たちが出会うお年寄りは
認知症をもった状態で出会いますが
その方は最初から認知症であったわけではない。

一人の人として生き抜き、老い、そして認知症を患った…

お年寄りへのサービスや政策が充実する一方で
「老い」そのものを「わからない」人たちが
現実に接していることの矛盾

認知症があろうとなかろうと
老齢期の人間として対応せざるを得ない課題と
サービス提供者側の無自覚な老いの否認

モノゴトが関係性の中で起こるならば
一方になんらかの変化がある時に
他方にも変化が起こらないわけがない

柔らかな語り口ですが
語られている内容は、とてつもなく深く
あちこちに鋭い警鐘がちりばめられています。

日々の現実からの要請で
何をしたらいいのか…という観点から資料を探すこともあると思いますが
結局のところ、モノを言うのは、私たち自身の在りようで
日々の現実に腹をくくって向き合うしかなく
そんな時に支えとなってくれる1冊だと思います。

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沼野一男先生の回答集

沼野一男先生の回答集県士会サイトのリニューアル前は、下部のほうに掲載されていたし
リニューアル後の今は、トップページ黒帯の「お知らせ」の中に掲載されているので、案外、知らない人も多いのではないかと思いますが
これはすごい資料です!

神奈川県作業療法士会>お知らせ>学術部:実習指導者養成講座(講師沼野先生)に寄せられた質問の回答集
http://kana-ot.jp/post/225

沼野先生は教育工学の第一人者です。
目標設定について、とても明確に簡潔に言語化されています。

目標設定ができれば
具体的な試行錯誤を積み重ねて修正していける

目標設定が1番重要
臨床経験を重ねるにつれ
そのことを痛切に感じています。

臨床の現場では
目標と目的と方法の混同が頻繁にみられています。
目標を目標として設定できない人も大勢います(^^;

リハビリテーションマネージメントは画期的な概念なのに
その具現化であるリハ実施計画書が現実的には活用されずに
単なる書類作成の手間としか受けとめられずにいることを
とても残念に感じています。

私たちの臨床においては、目標こそが羅針盤

もしも、迷いを感じるような時には
基本に戻ってこの資料をもう1度読んで
目標設定にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。

ちなみに
沼野一男先生のこちらの著書もオススメ
「情報化社会と教師の仕事」国土社

教師だからこそできることは何か
教師にしかできないことは何か
その切り口からも教育の本質を問うています。

圧巻は後半の「講義しない授業」「質問する授業」です。
詳細は是非ご一読を!

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