対象者の方が
飲み物を飲んでいてムセたら
すぐにトロミをつけている人はとても多いですよね?
それはもうやめましょう!
やめるべき理由は
1)その方がどのように飲んでいるのか観察していない
その方の飲食の能力も困難も把握していない
2)ムセる人にはトロミをつけるべしと
教わったことを漫然と実行しているだけ
3)トロミという粘性の高いものを摂取させられると
かえってその方の摂取能力を阻害してしまう場合が多い
です。
確かに
トロミをつけた方が良い状態の方もいますが
トロミをつけるよりも先に修正すべき介助者の対応が
為されていないこともあります。
例えば
覚醒不良のまま摂取させている
口腔内が汚染されたまま介助している
痰がらみのまま摂取させている
頸部後屈位のまま摂取させている
足底設地為されていない
注意散漫な状態のまま介助している
不適切なコップ介助をしている
不適切な1口量を摂取させている
オーラルジスキネジアの自己抑制のタイミングを見ずに介助している
などなど。。。
上記状態を改善させずに
ムセたらトロミ、さらにムセたらもっとトロミをつける。。。
現場あるあるではありませんか?
かつて
200ccのお茶にトロミ剤を大さじ2杯つけている場面に
遭遇したことがありますが
飲めませんよ?
同じ粘性で飲めるかどうか、飲んだ時の感覚を知るためにも
ぜひ、試していただきたいものです。
おくりこみにパワーはいるわ、
咽頭のあたりにこびりついた感覚がするわ、
嚥下した後も違和感がずっと続きます。
私たちは
その違和感を解消しようとして
唾液を繰り返し飲み込むことで解消することができますが
さて、該当する対象者の方々はそこまで実行できるのでしょうか?
寝たきりに近いと
口唇や舌、口腔内が乾燥してしまいがちです。
そのような方の咽頭付近にトロミのついた飲み物が
貯留し続けることで細菌感染の温床となる危険性はないのでしょうか?
誤解を招きたくないのではっきり言いますが
トロミ剤が悪いと言っているわけではありません。
必要な方には必要なトロミをつけた飲み物を提供すべきです。
悪いのは
「ムセたらトロミ」
「うまく飲み込めない方にはトロミ」
という漫然とした対応・パターン化した対応です。
例えば、認知症のある方は
睡眠導入剤や抗不安薬、抗精神科薬を処方されることも多々あって
オーラルジスキネジアのある方は少なくありません。
オーラルジスキネジアのある方の飲食介助は、実はとても難しいものです。
準備期や口腔期に問題が生じていますが、
咽頭期には問題がないことの方が圧倒的に多いのです。
ところが、オーラルジスキネジアがあることにすら気づかずに
「なんか食べにくそうだから、トロミをつけてみようか」
とトロミがつけられてしまい
口腔期に一層の負担をかけて、結果、
おくりこみができずにため込んでしまうというのは現場あるあるです。
講演などの質疑応答で
「ため込んでしまって飲み込んでくれない人がいるのですが
どうしたら良いのでしょうか?」
という質問をいただくことはよくあります。
ためこむというのは、おくりこみ困難の結果として起こっていることですから
本来は「送り込むのに時間がかかる」という事象として観察・判断すべきです。
そのような問題設定ができれば
「現在の食形態は口腔期に負担をかけている」
「楽に送り込める食形態を選択しよう」と考え直すことができます。
対象者自身の食べ方そのものを観察・洞察するのではなく
介助者にとっての介助困難を対象者の問題と認識してしまう傾向がある
という根本的な大きな問題が現場には存在しているのですが
明確に把握し危機意識を抱いている人がどれだけいるのでしょうか。
ムセ→トロミ
という漫然とした根拠のないパターン化した対応は、もう卒業しましょう。
立ち上がれない→筋力強化
という漫然とした根拠のない対応と、同じコトが違うカタチで起こっています。
大切なことは
その時々の対象者の方の状態をきちんと観察・洞察することです。
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