スポンジでROM維持

私は老健で勤務している時には
スポンジやゴムといった収縮性や反発性のある素材を
さまざまな場面で活用していました。

今は精神科病院の認知症治療病棟で勤務していますが
対象患者さんは身体に障害のある方
例えば、脳血管性障害後遺症で身体に麻痺のある方もいます。

認知症治療病棟ですから
身体面のリハの実施はメインではありませんが
もともと入院している患者さんが転倒骨折をした場合も含めて
身体面のリハも行います。

その時に心がけているのは
今ここでのリハで完結することをベースにリハ実施を行うのではなくて
退院して次の施設での継続したリハが展開できるように
どのような場面設定や対応の工夫をすれば
リハが進展しやすいのかということを明確化しながら行っています。

BPSDが落ち着いていれば
老健に移行すれば、より充実したリハが行えます。
他に優先すべき事情があって老健には移行できないとなれば
退院先の施設で可能な代案を提案することも考えます。

ポジショニングもまだまだ誤解が多いのと同じように
ROM訓練にも誤解が多いのが現状で
知識と技術が伴わないと善かれと思ってやったことが
結果として逆効果になることもままあります。

脳血管性障害後遺症片麻痺によって
手指が拘縮してしまう方は大勢います。
そのような生活期の方に対して
漫然としたROM訓練が提供され、結果として逆効果になることを防ぐには
ROM訓練は行わずに、きちんとフィットしたスポンジを装着することで
ROM訓練の代替として拘縮予防・改善をすることが可能です。

リハスタッフがいない施設へ退院する場合に
比較的安全に対象者のためになることを提案できます。

正確に言うと
生活期にある方の場合に
関節を他動的に動かす時には
筋緊張を緩和しないと本来の可動域を明らかにすることができません。

適切に調整されたスポンジは
筋緊張の緩和にとても役立ちます。
筋緊張の緩和にかかる時間とエネルギーを省いて
次の段階のリハを提供しやすくなりますし
スポンジを装着するだけでも関節の可動域を維持するために役立ちます。

もちろん、前段階として適切なポジショニングは大切ですが
ポジショニングだけではできないこともあります。

スポンジ装着は
筋緊張を緩和し、拘縮を予防するだけでなく
できてしまった拘縮の悪化を予防し
拘縮による外傷を予防することもできます。
(手指を硬く握り込んでしまうことによって
 手掌に爪が食い込んでしまう等よくあります)

こんなふうにごく細い薄いスポンジでも効果があります。

タオルを巻いて握らせたり
ガーゼをはさみこむのなら
私はスポンジをお勧めします。

スポンジだから加工も容易です。

その方の手指の状態に合わせて
今の状態を否定せずに
今がより楽になるように

手指がタオルやガーゼに合わせるのではなくて
スポンジが手指に合わせてくれます。

スポンジという反発性のある素材によって
手指に力が入ってしまっている時には縮んで
手指の力が抜けた時には、膨らんで
常に手指にそって形を変えてくれます。

タオルを巻いて握ってもらうにしても
ポジショニングでも
よくあるのが、無理矢理伸ばしてるだけで
外したとたんに、ぎゅっと肘や膝や手指が屈曲してしまう
というケース。
これは百害あって一利もないので
今すぐにでもやめていただきたいものです。

適切に調整されたスポンジであれば
外しても、手指がリラックスして伸びていますし
手指に装着しただけなのに、手関節や肘関節まで緩んできます。

ウソみたいなホントの話です。
ウソだと思ったらぜひ試してみてください。
ただし、手指の最大可動域まで広げた大きさに作らないこと
そして、スポンジ装着によって手指を伸展させても
近位の手関節や肘関節を代償的に屈曲を引き起こすことのないように
スポンジを大きく作りすぎないことがポイントとなります。

作り方は、こちらをご参照ください。

また作成上の注意点は、こちらをご参照ください。

スポンジは
力を入れて潰れてしまうものだとちょっと弱いです。
ピンクのスポンジは、ダイソーさんのキッチンスポンジで作りました。
私のお気に入りのキッチンスポンジはこちら。

もし該当商品が陳列されていない時には
他の商品をちょっと触らせてもらって
しっかり反発性のある素材を探してみてください。
キッチンスポンジだけでなく、バススポンジや、洗車スポンジにも
良いものがあるかもしれません。

 

・・・・  2021/12/26追記・・・・・・・

使用する時には、ケースによっては
ガーゼでスポンジを包んで手背に固定することもありますが
衛生面を考慮して、スポンジを洗って乾燥させる時用に
すぐに置いてすぐに取り出せるように
100均で購入したものを使っています。
元々はスポンジ置きではなくて、他の何かだったと思います。
確認しました。
「ステンレス棒掛けボトルホルダー」でした。

私が欲しかったのは
1)通気性・換気性が良いもの
2)置く場所は流しの上と決まっているからそこに吊るせるもの
3)置いたり、取り出したりが1工程ですぐにできること
OTだからこそ、商品本来の使い道に限定して探すのではなく
使用時のイメージに合うものを幅広く探していくと
良いモノに巡り会えます (^^)

あと、ちょっとしたことですが
洗い替え用に予備も必ず作って看護介護スタッフに提供しますが
その時に破損や紛失を見込んで
自分用に予備を1つ作って保管しておくと
万が一、破損や紛失をした時にもすぐに追加で作り直すことができます。
自分用の予備がないと、状態確認〜大きさ決定に時間が必要です。
自分の予定と対象者の方の都合が合わないと
それだけ作成までに時間がかかってしまいますが
手元に予備があれば、予備に合わせてすぐに追加作成できます。

当然のことですが
適合させてしばらくは
装着中、装着後の手指の状態確認は必須です。
また、適合に問題がなくても、
装着して1ヶ月もすれば、効果が出て
上肢の筋緊張が緩んで当初作成したスポンジでは
良い意味で合わない=小さすぎる
ということも起こってきますので
その場合には、近位の関節の状態を確認しながら
スポンジを一回り大きく再作成することも必要となります。

 

 

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