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CCSの振り返りを

実習指導に
クリニカルクラークシップ(CCS)が導入されて久しくなりました。

倫理的な問題も踏まえて
時代の流れとしての必然もあると思います。

CCSで臨床実習を受けた学生が多数臨床に出ているので
CCSのメリットもデメリットも
養成校側にも臨床現場側にも当の学生(新人や若手)にも職場管理者にも
把握できている頃合いなのではないでしょうか?

このあたりで一度メリット、デメリットを踏まえて
検討してみることも必要なのではないでしょうか?
より良いCCS、より良い実習体験、
最終的にはより良い臨床家を育てるための実習という目標に照らして
検討してみた方が良いのではないでしょうか?

実習で本当に体験学習をさせなければならないことは何なのか?

かつて
私が実習で感じたことは
今は指導者がいるから良いけれど
就職したら自分でPDCAを回していくんだという責任の重さ、怖さでした。

就職してからも
対象者に悪いことをしないで済むように
できれば良いことができるようになりたいと必死でした。
職場に来てくれたボバースの紀伊克昌先生や古澤正道先生のデモンストレーションで
いつもできない動作をスムーズにできるようになっていく対象者を目の当たりにして
天と地ほどの実力差を痛感し
にもかかわらず、ご家族は同じ時間と同じお金を支払うのだと思い知らされました。
  
まず、自分が真っ当なOTになりたいとずっと願っていました。
そのために必死になって学んできました。
自分自身がそれなりの実践を提供できていると自信を持てるようになったのは、かなり経験を積んでからのことです。
そして今でも、自分の技量の未熟によって対象者の方に不利益を提供してしまうようなことは避けたいと強く思っています。
自分が結果を出せるようになることが最優先で
実習では結果を出せるようになるための礎を体験してもらうことが最優先で
OTの楽しさ、素晴らしさを伝えたいと思ったことは昔も今も一度もありません。  
自分自身が納得できない現行の方法論から脱却し
どうしたら結果を出せるようになるのか
非常に大変な思いをしてきました。
私が興味関心を抱き続けてきたのは終始「結果を出す」「対象者がよくなる」こと
今も、それを一人でも多くの人に伝えていきたいと思っています。

かつて実習指導者会議に出席した時に
「実習では学生にOTの楽しさを体験させてほしい」
と複数の養成校の複数の教員から言われました。
当時はものすごく納得できなくて
でも、何をどう伝えたら理解してもらえるのかがわからなくて
結局は何も言わずにいたのですが
そして今となっては指導者の立場からは身を引いて外から養成を眺める立場ですが
やはり同じ思いを抱いています。

  私がよく言うことは
  飛行機のパイロットが同業者に向けて
 「パイロットの素晴らしさを伝えたい」と思うだろうか?ということです。
  どのような飛行条件であったとしても安全に目的地に着陸できるように
  自身の技量をトレーニングしているのではないでしょうか。

OTを志望してもらえる裾野を広げるために
一般の人に「OTの素晴らしさや楽しさ」をPRしていくことは必要だと思います。
けれどOTの養成過程にある人に対して
素晴らしさや楽しさを優先して伝える意義がどこにあるのか私には理解できません。
まず、OTとして最低限の技量を身につけるように養成するのが最優先なのではないでしょうか。
善意と善行の区別がつくように養成しなければならないのではないでしょうか。

私は志の高い、優秀なOTをたくさん知っています。
と同時に、そうではないOTがいることも知っています。
どんな職業でもピンキリであり
人にはそれぞれの事情やバックグラウンドもあるでしょう。

でも、対象者にとって、それは無関係なことです。

自分や自分の大切な人が対象者の立場に立てば
誰だって腕の良いOTに担当してもらいたいと願うものではないでしょうか。

たとえば
目標設定や筋緊張を緩和させるポジショニングについて
悩んでいる人がたくさんいることが記事のアクセス数からも伝わってきます。
でも、同時に、これって基本的なことなんじゃないかな?という思いも抱きます。
だけど、こういった基本的なことをちゃんと教えられる人が少ないから
困ってしまう人が多いんだろうとも思います。
そして、悩んでいる人はまだ良くて
目標設定やポジショニングができないのに
悩むことすらできないOTがいることも知っています。

私が思うに
検査はできても評価ができないOTが多いように感じています。
目の前で起こっている事象から障害を観察できなかったり
個々の事象の関連性を認識できず障害と代償との区別がつかなかったり
事象に対して表面的に対応したり、
ハウツーを当てはめるだけでそのハウツーが適切かどうか確認しない
そのような臨床姿勢が適正であると思い込んでいる。。。

OT協会の加入率が年々減少していて
卒後研修や自己研鑽に積極的ではないOTも少なからずいて
OTの質を底上げすることに関して
結果的にであったとしても就職先の職場に丸投げしているような現状だと
直接のOJT指導者にものすごい心身の負担がかかっているのではないでしょうか。
協会主催の卒後研修において、
もっと基礎的な実践的な知識と技術、臨床姿勢について指導も必要なのではないでしょうか。

一個人の私にできることは
日々の実践や講演などを通して
結果を出すとはこういうことだ
評価とはこういうものだ
評価を踏まえた対応とはこういうものだ
と伝え続けることしかできませんが、
その必要性や意義について再認識させられています。

卒前の養成過程において教授すべき知識量の増加や
卒前の実習の位置付けの変化
を踏まえて、
CCS導入によるメリット、デメリット
特に、臨床実践への影響について共有し検討すべきではないでしょうか。
そうでないと、昔は学生のうちに体験学習できていたことを
暗黙のうちに臨床現場に先送りすることになってしまわないでしょうか。
それは、真摯な若いOTにとっても、担当される対象者にとっても
大きなデメリットとなっているように感じられてなりません。

 

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