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履物を選択する時に確認すること

施設を利用する時には
履物を用意するようにご家族にお願いしているところが多いと思います。

介護用品店が身近になかった頃は
バレーシューズを用意するご家族が多くいらっしゃいました。
さすがに最近はバレーシューズではなく
最初から介護シューズやリハビリシューズを用意されるご家族が多くなりました。

ただ、緊急に入院された場合などは
病院の売店などで購入されることが多いと思います。

対象者の方、お一人お一人に合わせた履物をどう選ぶかって
結構難しかったりします。

私が履物を提案する時に確認することは、下記の通りです。
1)移動・移乗能力
2)靴の着脱能力
3)日中・夜間の行動範囲
4)経済面
5)ご本人の好み

まず、確認するのが、移動・移乗能力です。

日中の覚醒が良い時に
どの程度歩行できるのか、移乗できるのか
その方一人でおこなえるのか、
あるいは介助が必要な状態なのに自分一人でおこなってしまうのか
その安定性はどの程度なのか

夜間にトイレ覚醒があるのか
その時には自分でトイレまで移動できるのか
その安定性は?
夜間は自分では確認できないので
看護介護職員に確認します。
その時に看護介護職員は総合的な判断として
「ふらふらしている」
「危なっかしい」
と教えてくれることが多いので
眠気が強いのか、覚醒は良くても歩き方がおぼつかないのか
を言葉にして尋ねるようにしています。

日中離床して長距離長時間歩くような方の場合や
膝や腰の変形・痛みのある方や
脳血管障害後遺症片麻痺のある方や
短距離のみ歩行可能な方の場合には
きちんと踵があるタイプの履き物が良いでしょう。

車椅子を利用していて、移乗動作も全介助
ご自身では立ち上がる機会がない
というような方であれば、安楽さを優先して
上記のような履物か、もしくは
あゆみシリーズ
チャルパー
チャルパーII
などがお勧めです。
こちらは、足底には滑り止め機能がありますし
片足ずつの販売も可能です。

認知機能障害が軽度な方であれば
日中は、靴タイプ
自室内や夜間のトイレ覚醒の時には、チャルパーなど
という風に、使い分けることも可能です。

靴の着脱をご自身でできるのか、どうかの確認も必須です。

身体的な面と認知面との両面で確認するようにしています。
認知症のある方の場合、できることが変動することも多々ありますので
変動の幅も確認しておく必要があります。
でき方をよく観察して、必要であれば自助具や環境設定の工夫も考慮します。

身体的な面で
一人では履けない場合でも
柄の長い靴べらがあれば履けることもあります。

認知面では
左右を間違えてしまう方の場合には
あえて、右側の靴と左側の靴の間を離して置いておいたり
靴の中敷きをカラフルな色に変えておくことで
間違えにくくなることもあります。

介護シューズの選択肢が増えたのはとてもありがたいことですが
足にゆとりを持たせるために
ベルトやマジックテープで甲を覆うタイプが多くなっています。

ところが、認知症があると
ベルトやマジックテープをきちんと扱えない
ベルトを止めずに歩いてしまう方もいるので
ベルトを踏んでしまうと転倒に直結しかねず危ない場合もあります。

認知機能というのは多岐にわたっているので
近時記憶がある程度保たれていたり
その場の会話が弾んだりすると
認知機能障害を見誤りやすいので要注意です。

ベルトやマジックテープの扱いが困難であれば
「 ゆったり簡単スリップオン 」などの
足を入れるだけで履ける靴を選択します。
(手続き記憶として踵は入れられるケースが多い)

この時にサイズが合っていないと
踵を踏んだまま歩こうとするので
サイズを合わせることも必須です。
 
  あゆみシリーズであれば、
  カタログにサイズ表も足形も掲載されているので活用しています。
  あゆみシリーズは、かゆいところに手が届くような対応がされていて
  片側サイズ違いの購入もできますし
  5Eや7E対応の靴もあるし、ベルト延長も可能なので
  むくみのある方にも対応できます。
  今回記事を書くのにチェックしたら
  名前入れサービスや補高や靴底変更までありました。
  詳細は「パーツオーダー」でご確認ください。

夜間、トイレ覚醒をする方の場合には要注意です。

ナースコールを押し忘れたり
コールマットやセンサークリップなどの安全装置の誤作動などで
トイレ覚醒の時に見守りに行けないことが起きた場合に
中途半端に靴を履いて、ちゃんと履ききれずに
トイレに向かって歩き出してしまうかもしれません。

靴の着脱能力の確認は必須
身体面も認知面とその変動の幅
環境設定の工夫の余地についても確認します。

また、事情のあるご家族もいますので経済面も確認します。
介護シューズだけでなく、
靴の量販店などで市販されている履物も選択肢に入れられるように
自分の靴を購入する時には
ついでに、代替できる履物がないかぐるっと巡るようにしています。

  ちなみに
  こちらの履物は靴の量販店で見つけました。
  
  2000円台で購入できましたし
  足あたりも柔らかいし、靴底に滑り止めもあります。
  

履物のタイプが決まったら
色やデザインに選択肢がある場合には
カタログをお見せしながら
必ずご本人に希望を尋ねるようにしています。

好きな色、嫌いな色がある方の場合
どんなに必要で有効な履き物であったとしても
「こんな派手な色は嫌!」
「こんな柄は嫌!」
という理由で絶対に履いていただけないこともあります。

「なんでもいいよ」っていう方もいれば
トラブル回避のためだけでなく
「買う楽しみ」の一環としても
選べる場合には選んでいただくようにしています。
 
選択肢のない場合もありますが、
(最近はそういうケースはほとんど遭遇しないものですが)
たいてい、黒などの無地というケースが多いので
お見せする時に、「この靴はこの色とデザインしかないので」とご説明しますし
絶対に嫌ということにはなりにくいようです。

介護シューズは高いので
後から「あっていないので買い直してください」
とは言いにくいものなので事前確認をしっかりするようにしています。

ご家族が新品を購入してくださったけれど
大き過ぎてかえって危ないという時には
よっぽどでなければ
靴ベルト を作って対応したこともあります。

 

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