高齢者の中には
歩けても立ち上がれない方や
立ち上がるのに時間がかかる方は大勢います。
その状態に対して、
「老化・廃用・筋力低下→筋力強化・立ち上がりをたくさん練習すべき」
という説明が為されることが多いのですが
本当にそうなんでしょうか?
筋力低下状態、例えば、大腿四頭筋の筋力がMMTで2しかない方と
立ち上がり困難な高齢者の立ち上がり方は全然違います。
立ち上がる機能はあるのに
立ち上がり困難な方の一番の特徴は、腰を浮かせる時の強い抵抗感です。
腰を浮かせられない=筋力低下
とは表面しか見ていないから言えることです。
実際には、腰を浮かせるために必要な
腰背部の筋肉を円滑に伸ばして足底に重心を移すことが
文字通り、うまくできないのです。
「頑張って!」「しっかり立って」「足に力を入れて!」
と声をかける人の善意を疑うものではありませんが
そのような声かけは腰背部の過剰な同時収縮を一層強めてしまい
立ち上がることに効果がないどころか、逆効果で立ち上がれなくなってしまいます。
その結果、筋力低下が起こることはあるでしょう。
順序は逆で
協調性低下し、うまく立ち上がれず、立ち上がるのが億劫になって
結果として筋力低下状態になる。
筋力低下が原因ではない
ことの方が圧倒的に多いのです。
筋力強化や立ち上がりのリハをしているのに
自分一人では立ち上がれるようにならないとか
一時的に立ち上がれたのに、だんだんと立ち上がれなくなる
そういうケースに遭遇しているはずなんです。
そして、そういうケースでも
座る練習を適切に行うことができれば立ち上がれるようになるんです。
必要なのは
頑張って立ち上がる練習ではなくて
スムーズに座る練習です。
スムーズに座る体験を通して
もう一度、身体の使い方を再学習することなんです。
立ち上がれない方は、座り方も上手にはできません。
スムーズに座れないんです。
どっかと後方へひっくり返りそうになってしまったり
静かにそっと座ることができません。
そのような方に対しては
重心の移動方向に注意して
静かに音がしないようにそっと座る練習をします。
背中に手を当てて重心の移動方向をコントロールします。
座る練習をしただけで
立ち上がれるようになった方は大勢います。
身体各部の協調の練習をしていたからです。
座るのと立ち上がりとは、使う筋肉は同じで重心の移動方向が真逆なだけです。
だから、効果があるのです。
立ち上がり100回なんて練習をして
腰部の筋を硬くしまうと、
下肢の強張りや座位保持や臥床時の姿勢にも
悪影響が出てしまいます。
ぜひ、座る練習を試みてください。
ポイントは重心の移動方向です。
ここさえ、的確に介助できれば状態は改善します。
決して過剰な努力をさせずに、がんばらせずに
積極的に介助をしてください。
決して、筋力低下が問題ではなく、
過剰努力によって身体協調性が低下してしまったことが問題なので
がんばったり、踏ん張ったりさせないように。
重心の移動方向を体験学習できるように
身体と身体を通したコミュニケーションで伝えてください。
ラクに
スムーズに
座ることができるように
介助を通して、もっている身体協調の再学習を促してください。
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