表面化していない問題その1

今、私が接している認知症のある方は
さまざまな援助を受けながらも
暮らしの困難が解消されなくて入院された方だから
対象者の母集団がある意味、限定されている可能性があるとは思っています。
「問題がない」方が存在しているけれども、私がただ会う機会がないだけなのだと。
ただ、表面的に「問題がない=適切な対応ができている」とは言い切れないとも感じています。

「こんなに明確に説明されたのは初めて」
「今まで誰も教えてくれなかった」
「そういうことだったんですね」
私に言われたご家族の言葉です。

在宅で介護保険サービスを複数使っていても
それぞれの事業所はそれぞれの役目を果たそうと一生懸命に努力されていることと思います。
けれど、その一方でサービスを使ってもご家庭での困りごとに対して事業所がアドバイスをする
ということもまた少ないように感じています。
つまり、介護保険サービスを使っているにもかかわらずご家庭での家族間での困りごとは
ご家族がなんとかするしかない…という構図もあるのではないでしょうか。

NHKスペシャルで放送された「介護殺人 当事者たちの告白」
その取材記録をまとめた本です。
NHKスペシャル取材班『「母親に死んでほしい」−介護殺人・当事者たちの告白−』新潮社

この本の中には
介護殺人に至ったケースの3/4は何らかの介護保険サービスを利用していた
なかにはホームヘルパーを毎日利用していた方もいた
隣近所からも孤立しているわけではなく近隣との交流がある方の方が多かった
という記載があります。

介護だけに没頭して
ご家族だけが抱え込んでいるわけではない
にもかかわらず悲劇が起こってしまっている。

つまり、単にサービスを利用するだけでは解決しない
ということが現実に示されているのです。

本の中には
「認知症という病気を理解しろと言われても理解しても介護負担が軽くなるわけではない」
という介護者の言葉も記載されていました。

この言葉に
まさしく現在表面化はしていない、けれども厳然としてある
認知症のある方をとりまく現実の一端が端的に示されているように感じました。

認知症のある方に適切な対応の工夫は
介護する側にとっても負担が軽くなる方法です。
お互いにとってプラスの体験を得られるようになります。

1人でも多くの方に伝わりますように。。。 

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