私が、実習にくる学生に事前課題として読むようにすすめている本です。
「高齢者の孤独と豊かさ」竹中星郎 NHKブックス
この本の素晴らしいところは
さまざまな老齢期を迎えた人をみつめる著者のまなざしの温かさと
とりまく現実を見据える公正さです。
古今東西の老齢を迎えた人の声や
臨床で出会った人の生き方を
鮮やかに温かく描き出します。
私たちが出会うお年寄りは
認知症をもった状態で出会いますが
その方は最初から認知症であったわけではない。
一人の人として生き抜き、老い、そして認知症を患った…
お年寄りへのサービスや政策が充実する一方で
「老い」そのものを「わからない」人たちが
現実に接していることの矛盾
認知症があろうとなかろうと
老齢期の人間として対応せざるを得ない課題と
サービス提供者側の無自覚な老いの否認
モノゴトが関係性の中で起こるならば
一方になんらかの変化がある時に
他方にも変化が起こらないわけがない
柔らかな語り口ですが
語られている内容は、とてつもなく深く
あちこちに鋭い警鐘がちりばめられています。
日々の現実からの要請で
何をしたらいいのか…という観点から資料を探すこともあると思いますが
結局のところ、モノを言うのは、私たち自身の在りようで
日々の現実に腹をくくって向き合うしかなく
そんな時に支えとなってくれる1冊だと思います。
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