Category: 教科書的基礎知識篇

ポジショニング設定の基本

それでは
ポジショニング設定の基本を記載します。

側臥位の基本
1)肩甲帯と骨盤帯をクッションできちんとサポートする
2)下側の上下肢はきちんと引き出す
3)頭部のアライメントが適正に保持できているか、枕の高さを確認する

仰臥位の基本
1)骨盤の傾きの確認と対応
2)肩甲帯の安定性の確認と対応
3)股関節は過剰に(安静時の最大可動域以上に)外転・伸展させない
4)膝関節は過剰に(安静時の最大可動域以上に)伸展させない
5)下肢の重さを面できちんと支える
6)上記1)から5)が担保できていれば基本的には
  足部は挙上位設定(褥瘡予防のための設定)しなくても大丈夫です。
  そのかわり、足底全体がベッドに接地するように設定します。

   変形拘縮があるけれど褥瘡ができていない方に対して
   褥瘡予防という名のもとに変形拘縮を増悪させるようなポジショニングをしていると
   本当に褥瘡が発生してしまいます。
   そうすると「だからもっと褥瘡対応が必要」と言う人もいますが
   事実はまったく逆で不適切なポジショニングが褥瘡を引き起こしていたのです。
   変形拘縮のある方に対して筋緊張緩和を目的としたポジショニングが適切にできれば
   結果として褥瘡も発生しにくくなります。
   その理由は別の記事で述べます。 

そして、最も重要なのに、多くの人がしていないことは
ポジショニング設定後の確認です。

ポジショニングを設定したら
肘や膝を動かして、筋緊張が緩和していることを必ず確認してください。

適切に設定できていれば
設定直後から筋緊張は緩和しますから、その変化を実感できるはずです。
ガチガチだった膝を他動的に抵抗感なく左右に動かせるようになったり
体幹にピッタリくっついて動かせなかった腕を抵抗感なく体幹から離して動かせるようになります。
   
設定後に筋緊張の緩和がみられない、抵抗感を感じる場合は
設定が不適切であることの証左ですから
もう一度、全身のアライメントを確認し、設定し損ねている部分を見つけます。
設定を忘れているのか、過剰なのか、不足なのか
見つけた部分を修正して、再設定すれば良いだけです。

臥床時に筋緊張緩和の変化を確認できれば
離床介助時の抵抗感の減少や車椅子座位時の姿勢の変化が目で見てはっきりとわかるようになります。
車椅子上で体幹が前傾してしまい介助しても背もたれに寄りかかることができなかった方が
(前傾方向への力が強くて介助しても体幹を後傾させることができなかった)
背もたれに身体を預けてストンと座れるようになります。
体幹前傾位から中間位へ自身で立ち直ることができるようにもなります。
車椅子上で何度姿勢修正しても前滑りしてしまい食事介助が必要だった方が
前滑りすることなく座れるようになったので
姿勢修正の必要もなく食事を全量自力摂取できるようになった方もいます。

対象者の障害や困難と自身の未熟を混同してはいけないのです。
混同しない、区別できるようになるためには
ポジショニング設定後に筋緊張緩和の確認をすれば良いのです。

また、
ここが誤解されがちなところですが
ポジショニングとは、良い姿勢に整える
ということではありません。

車椅子での座り方やベッドでの寝方には
その方の障害や困難だけでなく能力も反映されています。

本来の能力発揮を阻んでいる環境を変更することによって
本来の能力を発揮した状態で寝られるようになります。
臥位レベルで能力が発揮できるようになり
座位レベルでも能力発揮できるようになるから
結果として車椅子座位姿勢も改善されるのです。

姿勢には機能、働きが反映されています。

良い姿勢には、機能、働きの良さが反映されており
悪い姿勢には、機能、働きの不合理や不全が反映されているのです。

悪い姿勢を見た目良い姿勢のように整える、修正するのがポジショニングではありません。

悪い姿勢に対して、見た目を修正するのではなく
悪い姿勢に反映されている機能や働きを
より合理的に発揮できるように援助すると
機能や働きが改善された結果として、姿勢が良くなるのです。

繰り返しますが
認知症のある方への生活障害やBPSDへの対応も
生活期の方の食べる困難への対応も
カタチを変えてまったく同じコトが違う表れをしているだけなのです。

どれか一つで良いから
結果を出す、誰が見ても対象者が良くなったことがわかるまで変化を起こす
ように挑戦してみていただきたいと思います。
その時に私が提案してきていることの数々の一端をご理解いただけると思います。

 

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車椅子で前傾してしまう方への対応

上図のように
車椅子上で体幹が前傾してしまう
背もたれに寄りかかるように動作介助しても
身体が硬くてすぐに前傾してしまう方っていますよね?
ティルト型車椅子に変更してティルトを倒してもやっぱり前傾してしまう
そのような場合、どうしていますか?

車椅子上での姿勢について
車椅子上でクッションを入れる対処はしても
臥床時の姿勢、ポジショニングの見直しをしている人は少ないのですが
実はここが重要なのです。

上述のような方の場合
骨盤と体幹の分離が不十分というケースが圧倒的に多いものです。

臥床や離床介助の時に
立ち上がり時の動作を確認すると
腰背部を伸張した前傾ではなくて
骨盤も一緒に浮き上がってしまう。
なんなら、下肢も屈曲位のまま、浮き上がってしまい
足底接地や足底への荷重が難しい。。。ということもあります。

臥床時は
体軸内回旋が乏しく
骨盤を動かすと下肢も体幹も一緒にゴロンと転がってしまいます。
運動麻痺があるわけでもないのに(運動麻痺があることも多々ありますが)
全身がガチガチに硬くなってしまっているのです。
そして、このガチガチの硬さに対応せずに
座位でのポジショニングしかしていない人がとても多いのです。。。

こんなにガチガチだとおむつ交換も大変ですし
臥床はしていても、寝ても寝た気がしないと思います。
臥床本来の目的である身体をゆっくり休めることができないのではないでしょうか。

こんなにガチガチに硬くなってしまうのには理由があって
1)ポジショニングをまったくされてこなかった
2)不適切なポジショニングをされてきた
どちらでも起こり得ます。

筋緊張緩和目的のポジショニングは
過剰な筋緊張をせずとも臥床できるように環境調整することが肝要です。

まず、個々人のキーポイントを見つけられるように観察します。

臨床上、最も多いのは、
骨盤の傾きや肩甲帯の不安定さを見落とされているケースです。
そこを対応するだけで身体柔軟性が発揮されるようになります。
また、下肢の伸展パターンに対しては
骨盤後傾と股関節の屈曲位を引き出すような設定をすると
伸展パターンの抑制が可能となることも多々ありますし
側臥位設定することで伸展パターンの抑制が可能となることもあります。

どうしたら良いか、途方に暮れてしまう、という人は
まず、全身のアライメントを観察してください。
ベッドの足元側から観察し、
次にベッドの右側から、左側からも観察してください。
観察が難しければ、許可を得た上で臥床時の姿勢を写真に撮り、
各関節がどうなっているのか、一つひとつの関節角度をきちんと確認しましょう。
そして必ず筋緊張を確認しましょう。

全身の一つひとつの関節の状態がどうなっているのかがわかり
筋緊張も把握できれば
どうしてそうなっているのか、どうしたら良いのかということが
自然と一本道のように浮かび上がってきます。
あとは、浮かび上がってきたことを具現化するだけです。

この繰り返しで即座に観察・洞察することができるようになります。

どうポジショニングしたら良いかわからない
と言う人に限ってこの過程をすっ飛ばしていますが
「自分がわからない」という事実にきちんと向き合って
どうしたら自分自身でわかるようになるのかを考え対処しない限り
永遠にわからないままです。
そうするとハウツーを当てはめるだけになってしまい
しかも当てはめたハウツーがその方に適切だったかどうかもわからないままとなってしまいます。

どうポジショニングしたら良いのかがわからないのではなくて
その方に何が起こっているのかがわかっていないのですから
何が起こっているのかをわかるようにならなければいけません。
(認知症のある方への生活障害やBPSDへの対応とまったく同じコトが違うカタチで現れています)

ここを誤解している人がとても多いのです。
「どうしたら良いか」と問うのではなく
「何が起こっているのか」と問うべきであり
「自分がこの方に何が起こっているのかわからない。どうしたらわかるようになるのか」
と問うことから始めるしかありません。

正しく問うことができるから正しい答えを得られます。
今までは問うてはいたけれど問い方を間違えていたのです。
だったら、間違えずに問えるようになれば良いだけです。

   ポジショニングに限らず
   食事介助や認知症のある方への対応なども含めて
   最も重要なことは常に状態把握・評価です。

   実習において学生に体験学習させるべきはこの臨床姿勢であり
   協会主催の研修会でも再学習を促した方が良いと考えています。
   なぜなら、私の経験ですが
   (各地で多様な主催者から多様なテーマで多数の講演を依頼されてきました)
   講演後の質疑応答で「どうしたら良いのでしょう?」と質問する人は多くても
   「どうしたら的確な評価を行えるようになるのでしょう?」と質問した人は
   今までに1人しかいませんでした。
   正しく問える能力を養成すべきだと考えています。

それでは、次の記事で
ポジショニング設定の基本についてご説明します。

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目標設定に際して

認知症施策

目標設定に際して
前の記事で記載したことを実践する際には
下記のことに気をつけると設定が明確になります。

主語を「対象者」述語を「〇〇できる」という文体で記述する。
これでかなり、治療方針や治療内容との混同を回避することが可能となります。
  
つまり、「△さんが〇〇できる」という文体で記述するようにします。
この枠組みに沿って記述するとなれば
「△さんが現状維持できる」という文章では疑問を抱きますよね?
すごく曖昧な文章だということに気がつけるようになります。
行動・条件・基準という指針に照らすと
すべてが曖昧だということを自覚することができるようになります。
現状維持とした行動が何なのかということを
記述の枠組みによって具体化することを求められるからです。

だから
「記述の仕方が問われるべき」
なのです。

また、よく聞くのが
「目標とは現状を改善するもので維持は目標ではない」
という指導を受けたという言葉です。

う〜ん。。。
現状維持だって概念としては立派な目標です。
ただし、ADLのどの部分を維持することが重要なのか
どのような行動を維持することが重要なのか
そして、それはなぜなのか
ということをきちんと認識できていることが必要なのです。

「歩行能力の維持」を短期目標として設定したとして
この短期目標の達成の可否をどうやって判断しますか?
杖歩行できていた方が転倒してしまったら?
杖歩行できていた方が歩行器歩行に変わったら?
杖歩行できていた方が歩行中のふらつきが目立つようになってきたら?
判断基準が曖昧であれば、きちんとしたPDCAを回すことができません。
結果、漫然としたリハの提供に陥ってしまうのです。
たとえ、善意の関与であったとしても、です。

   善意だからこそPDCAを回しにくいものです。
   善意というのは本当に恐ろしい。
   善意ではなく善行を為すことが重要です。
   この辺りの怖さを昔は実習で体験できていたんですよね。。。
   でも今は実習で体験しがたくなっていて
   善意の恐ろしさを身にしみてわからないままに
   臨床経験を重ねているセラピストが多いように感じています。

「歩行能力を維持」するために関与した結果として
どんな行動を維持する必要があるのか
行動・条件・基準 に基づいた目標を設定できれば
どんな人でもブレることなく判断できます

ここで大切なことを書きます。

1)行動とは状態ではない。
2)条件と基準は対象者にとっての優先順位によって変わる。

このあたりは、実際に自分で目標設定をしてみるとよく実感できると思います。

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目標とは何か

それでは、
前の記事で出した問題の正解をお伝えいたします!

問題はこちらでしたね。
1)整形外科受診を勧める          
2)痛みの有無の確認と痛みの改善を図る   
3)バランスの強化             
4)立位での姿勢反応の強化         
5)全身の筋力強化 

この中に「目標」がいくつあるか?
正解は「ゼロ」です!

なぜなら、目標というのは対象者の目標です。
上記1)〜5)のすべての主語は対象者ではなく治療者が主語となっています。
つまり、目標ではなく治療者が為すべきこと
治療内容や治療方針を目標として設定しているのです。
このような概念の混同は現場あるあるで
分野を問わず今でも起こっていることです。

10年以上前から目標に関する改善提案をしてきましたが
いまだに、方針や治療内容を目標として
しかも、短期目標として設定している人もいます。
「現状維持」や「移動能力の維持」を目標として設定している人もいます。
それでどうやって目標達成の可否を判断できるのでしょうか?
PDCAを回せるのでしょうか?
  
目標とは何か
きちんと教わっていないから
目標と目標でないものの区別がつかないのです。

じゃあ、いったい目標とは何か

その人にとって
必要で達成可能な行動のことです。

目標の定義にはいろいろなものがありますが
私たちは臨床家であって研究者ではありませんから
臨床に役立つ目標の定義が必要だと考えます。

かつて
実習生を受け持っていた時には
目標の定義から教えていました。
必要、達成可能、行動
という3つの言葉を繰り返し尋ねることで覚えてもらいました。

次に
良い目標、明確な目標として
行動、条件、基準
という3つの言葉を覚えてもらいました。

ぜひ、_神奈川県作業療法士会のこちらの記事_をご参照ください。

本質は決して古びることがありません。
とても良い記事なのに、ずいぶん前の記事なので埋もれてしまって、
そうと知る人でないと検索できないことを
とてももったいないと感じています。
そんなわけでことあるごとにPRしています(^^)

 

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古くて新しい目標設定の問題

イメージ_お堀

私が学生だった頃は
リハスタッフを生めよ増やせよの時代でした。
1学年20名で3年制の養成校で
学科の教員は2名のみ。授業の多くは外来講師が担当していましたが
当時の各分野の第一人者に教わることができました。

しかしながら、今にして思えば
どの分野でも目標設定に関して
目標とは何かと明確に教わることはなく
実習前にプリントで仮想ケースを提示され目標を立てるように言われました。

それでも、当時から
長期目標を達成するための短期目標で
短期目標は具体的であること、達成可否の判断可能なもの
ということを指導されたことは覚えています。

ただ、説明されてあぁそうかと思うことはあっても
いざ、実践で個々のケースに即して
どのように目標設定を考えたら良いのか
という指導はなされず
実習においても、私が設定した目標に指導が入ることはあっても
じゃあ、基本的にどのように考えたらいいのか
自分自身で目標を設定しようとした時に
参照できるような考え方について
指導を受けたことはありませんでした。
今にして思えば。

私が目標設定の指導方法にこそ、問題があるのだ
じゃあ、指導の方法を改善すれば良いのだ
と気がつくことができるようになったのは
臨床を積んで模索に模索を重ねて
教育関係の図書を読みあさってからのことです。

私は2014年から目標設定についての講演をはじめましたが
その後県内の複数の養成校から
私の提案をもとにした目標設定の授業をしていると聞き
とても嬉しく思ったものです。

昨年の神奈川県臨床作業療法大会で目標設定の講演をした時に
現場あるあるの目標でないものを尋ねたところ
以前に比べて正解率がとても上がってきていて、感無量な思いがしました。

目標の概念をきちんと理解している若手OTが増えてきて
後輩や学生の指導に役立ててもらえたら
こんなに嬉しいことはありません。

安易にハウツーものに飛びついたり
PDCAを回すことのない漫然としたリハの提供に対して
(漫然としたリハはROM Ex.や筋力強化に限りません。
 漫然とした立ち上がりやActivityだって為されています。)
自己修正し具体的に現実的に改善していくことが可能となります。

適切な目標設定ができるようになることの効果は本当に大きいのです。
地道な学習かもしれませんが
回り回って、目の前に起こった事象を的確に観察することが叶うようになります。
本当の意味で対象者のために有意義な試行錯誤が行えるようになります。

それでは本題に入りましょう。

次の中に「目標」がいくつありますか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1)整形外科受診を勧める          
2)痛みの有無の確認と痛みの改善を図る   
3)バランスの強化             
4)立位での姿勢反応の強化         
5)全身の筋力強化   
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

正解は次の記事で!

 

 

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リハ計画書「目標設定」の問題

短期目標「現状維持」長期目標「現状維持」

実際に私が見聞きした、リハ計画書の目標です。
嘘みたいなホントの話です。

これでは、「目標とは何か、がわかっていない」と自分で言っているも同然です。

今や、ご家族やご本人が同業者。ということも増えてきています。
同業者でなくても医療・保健・福祉に従事している方や
一般企業であっても、大企業に勤務されている方は目標管理を徹底されています。
むしろ、企業の方が目標管理には厳しいかもしれません。
  
本来であれば、対象が「人」という、「あぁすればこうなる」が通用しない
私たちの分野こそ、目標設定・目標達成の確認・対応の検討が必要だと思うのですが
目標はとりあえず書かれていればあまり検討されずに
治療方法について検討するパターンが多いように感じています。

日々の多忙さに追われ
目の前の切実さに追われて
目標については後回しにされてしまう。とか
目標設定の意義の重要性が実はあまり認識されていない。とか
あるんじゃないかな?
違うかな?
だから、いざ実習生や新人に目標を指導するときに
ちゃんと教えられない、言語化して説明できない場面に遭遇しても
その時に、実際に「臨床に役立つ目標設定の考え方」を探しても見当たらないから
諦めてしまう。。。ということはありませんか?
対象者に「やりたいこと」を尋ねても
「そんなものはない」
「暮らしに精一杯でそんなこと考えたこともない」
と言われてしまって、何と言っていいかわからず困ってしまった。
そんな経験をしている人は本当はすごく多いはずなんです。

ご家族がリハ計画書を読んでも
何もおっしゃらないかもしれないけれど
ご自身がきちんと目標設定をしている方なら
「目標設定ができているか、できていないか」がわかってしまいます。
言わないだけで。
私自身、ご家族に
「よく読み直してみたんですけど〇〇について確認させてください」と言われて
事前情報の病歴が違っていたことが判明したり
リスク管理について病状確認した時にリハ計画書をもとに説明した時に
「あぁ書いてありましたね」
と言われたことが複数回あります。
ご家族はきちんとリハ計画書を読んでくださっている
リハ計画書が信頼関係構築のとっかかりにもなるのだと感じています。

目標を目標というカタチで設定することさえ、できるようになれば
PDCAを回すことができるようになるから
的確に評価することができるようになり
自身で不足している情報を明確化できるようになり
何をどうしたら良いのかを明確化することができるようになります。
有効な試行錯誤ができるようになるのです。

おそらく、リハの、OTの分野で
目標設定に関して、カタチが重要、記述の仕方こそが重要
と言明したのは、私が一番最初だと思います。
目標設定について私が講演し始めたのが2014年からですから
もう10年以上前から公の場で提案してきています。

教育工学の第一人者である、沼野一男が著書の中で
「目標は記述の仕方が問われるべき」と記述したのが1986年ですから
教育分野で40年以上前から提唱されていることを
リハの分野ではまだ常識化できていないという現実があるのです。

これから目標設定について記事を書いていきますが
今すぐにでも知りたい、困っている方は_こちら_をご参照ください。

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論理的に考える:なじみの関係

「毎朝訪室して挨拶してなじみの関係になって信頼関係を作る」
という言葉をいまだに聞くことがあってびっくりしています。

結果として、信頼関係ができるのであって
それを目的化するのは本末転倒だし
そもそも看護介護職員は、なじみの関係になっていなくても
入院入所の当日からケアをしなくてはならないのです。
なじみの関係になってから排泄介助をします、なんて言っている看護介護職員に会ったことはありません。

私は常々、何か良いとして提唱されたツールでも
最初から除外要件が大きいものは本質ではないと考えています。
その一つが、なじみの関係です。

また、自分のことを考えてみてもわかると思いますが
毎日顔を合わせているから信頼関係ができるわけではありませんよね?
職場の同僚や先輩や上司にも、いろいろな人がいますよね?
その人が信頼に足るからこそ信頼しているのであって
毎日挨拶したって信頼できない人は信頼できないじゃないですか。
仕事だから自分の感情は傍に置いておいて普通に接しているだけで。

認知症のある方に信頼してもらえるかどうかは
認知症のある個々の方の価値観に反した言動をしていないか
認知症のある方の困りごとを解消しようと努力しているか
ということが認知症のある方に伝わった結果として起こることです。
まずは、自分が認知症のある方の信頼に足る存在になれるように努力することが先なんです。

「なじみの関係になる」ということは
結果として起こることを目的化しているのです。

せっかく毎朝訪室するなら
なじみの関係になることを目的化するのではなくて
一定の時間帯でその方の言語理解力や言語表現力に変動があるかないか
あるとしたらその変動の幅を把握することを目的化した方がずっと有益だと思います。

 

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論理的に考える:手引き歩行

    
30年以上前からずっと言い続けていますが
手引き歩行撲滅作戦!

お年寄りの前に向き合うように介助者が立って
お年寄りの両手を引いて歩かせる方法がいまだに為されています。。。

もちろん、狭いところでも介助歩行ができるというメリットはありますが
手引き歩行のデメリットを考慮することなく
「歩行介助=手引き歩行」周囲の人がみんなそうやっているから、
手引き歩行を行っている人の方が多いのではないでしょうか?

手引き歩行のデメリットを下記に挙げます。
1)介助者もご本人も移動先の前方を見ることができない。
  前方の安全確認をしようとするとご本人に背を向けなければならない。
2)ご本人がいざバランスを崩して倒れそうになった時に
  介助者との距離があるので助けにくい。
  無理に手を引っ張ると腕神経叢麻痺を起こす恐れもある。
3)手を通してご本人の動きをコントロールしようとしても
  複数の関節があるのでコントロールの力が伝わりにくい。
4)歩行の本質(重心の前方移動)と
  真逆の身体反応(重心の後方移動)を引き起こしてしまうので
  いつまで経っても介助から脱却できないどころか
  ますます歩きにくさを助長してしまう。
5)「前から引っ張る方法」なので、心理的にも「寄り添う」のではなく
  介助者に依存させてしまう恐れが高い。

というわけで
私は側方から骨盤を支える介助歩行をしています。
(たぶん、リハスタッフで似たような思いをしている人はきっと多いのではないでしょうか。。。)

骨盤からの側方介助であれば
1)ご本人も介助者も同じように前方を見ることができます。
2)ご本人がバランスを崩しても骨盤を支えているので転倒防止が容易です。
3)複数の関節をまたぐことなく直接骨盤から介助するので
  途中でコントロールが抜けてしまうことがないし
  繊細なコントロールも可能です。
4)歩行の本質に沿った介助が行えるので
  段階的に介助量の調整も可能です。
5)横に立って歩行介助するので
  文字通り見た目も心理的にも「寄り添った」介助の実践ができます。

歩幅が狭く下肢が前に出にくい方に
骨盤からごくわずかに重心移動を介助することで
スムーズに足が前に出て歩幅も広く歩けるようになった方の経験もあります。
(このことについては別の記事で)

 

 

 

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