塗り絵は、かなりお年寄りに対して使われているAct.のようですが
実際には、複数の下絵から対象者が選んで行う…という対応が多いようです。
場面設定、段階付けがもっと細やかに為されるといいのにな…と感じています。
塗り絵については、「よっしーずボイス」の下記記事をご参照ください。
「下絵の大きさ」 http://kana-ot.jp/wp/yosshi/214
「下絵の用意」 http://kana-ot.jp/wp/yosshi/197
「下絵の工夫」 http://kana-ot.jp/wp/yosshi/196
「幼稚な画題はNG」 http://kana-ot.jp/wp/yosshi/194
ここからは、「ちぎり絵の工夫」について、場面設定のことをご説明します。
たぶん、事前に和紙を色ごとにちぎってケースに入れておくという準備をしている方は多いと思います。
でも、お年寄りで手指の巧緻性、協調性が低下している方って結構いらっしゃるんです。
まして、このような創作作業からは遠ざかっていた…というケースがほとんどです。
評価として、身体能力低下という判断を下す前に、この「やり慣れていない」ということを配慮してほしいな…と常々思っています。
認知症のある方は、日々喪失体験を重ねておられます。
その過程において、最低限の身の回りのことはしても、それ以上のことから遠ざかることがあっても決して不思議はありません。
私たちが初めて新車を運転する時の「違和感」のようなもの、それ以上のものを感じておられるのではないでしょうか。
ちぎり絵は和紙を使うと仕上がりがキレイにできますが、和紙の1片をつまむ…ということが案外難しかったりするものです。
軽く、素材からの抵抗感がほとんどないので、ひとかたまりの和紙の中から1枚だけつまみあげるということが難しいのです。
「何回いっても、和紙をまとめて持ち上げてしまう」
という状態像は、認知症からくるものではなくて、身体的な困難さから生じている場合もあります。
そんな時には、この写真左側のように、タオルの上に和紙を1片ずつ置いておきます。
タオルと和紙との摩擦により、和紙をつまみ上げる時に抵抗感が生じるのでしっかりとつまめるようになります。
また、和紙がタオルの上に並んでいるので色味を一目で確認しやすくなります。
そして、ちぎり絵の下絵といえば、塗り絵と同じように枠線だけ描かれてあるものを用いることが多いかと思いますが、時には、写真右側のように塗り絵の見本をカラーコピーして使ったりもします。
「対象を想起し、その対象の色を紙で再現していることを行っているのだ」という短期記憶が(この場合は、ナスの色を紙で再現している)落ちている方でも、下絵の色と同じ色を貼っていくという工程をおこなうことはしやすいです。
塗り絵は色を創り出すことによって対象を再現するという課題です。
創り出す過程を楽しめるのなら良いのですが、往々にしてその過程を楽しめているかどうかの判断よりも、ただ単に色を塗ることはできるかどうかという判断によって塗り絵が提供されているケースが多いように感じられてなりません。
そのような方には、塗り絵を続けるよりも、ちぎり絵のほうが適切な場合もあります。
色を創り出すことは紙に任せてしまえるからです。
和紙には微妙な濃淡の違いがあるという素材の特性を活用できます。
あまり深く考えずとも、結果として微妙な色合いの変化が起こって作品の仕上がりがキレイになります。
既に色のついている下絵を使用すれば、和紙の貼り残しがあったとしても目立ちません。
かえって色合いの変化という良い面が生じる結果となります。
和紙だけでなく、100円ショップで売られている折り紙でも濃淡のある折り紙を使用してもよいでしょう。
作品としての仕上がりが美しいかどうかは対象者の方自身がしっかりと感じられることです。
せっかくがんばっておこなったのに仕上がりが今1つでは、どんなに周囲の職員から褒められても満足度は高くないのではないでしょうか。
単にできるかできないかではなくて、より容易に行いやすいように、より仕上がりのキレイなものになるように、私たちができる準備はたくさんあるように感じられてなりません。
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