かきこまずにすくって食べるトレー

認知症のある方で
ご飯をかきこむようにして食べる方っているでしょう?

そのような時に
小さなスプーンを提供するのは現場あるあるですが
それでは効果がないどころか、逆効果になっていることってありませんか?

認知症のある方は
「これでは1口量が少ない」とちゃんとわかって
1口量を増やそうとして、ますますかきこみ食べをするという。。。

かきこみたべをする方には
その方にとっての必然がありますから
まずは、そこをちゃんと観察・洞察すべきです。

スプーンを使って食塊をすくう動作というのは難しいものです。
すくいあげることができるだけでなく
1口量の調整ができなければなりません。

ところが、上肢操作能力が低下していると
こぼさないように食べようとした代償として
食器を口元へ持っていき、口で取り込むようにして食べようとします。
ある意味、自身の上肢操作能力の不十分さを感受しているからこそ
上記のような代償をするわけです。
能力がないからかきこみ食べをするのではなくて
能力を不合理に発揮した結果のかきこみ食べなのです。
だとしたら、能力を合理的に発揮してもらえるようにするには
「楽に食べられた!」という体験が必要です。

ところが
たいていの人は「ちゃんとスプーンで食べてね」と言います。
そしてスプーンで食べられないと「認知症だから」と諦めてしまいます。
私たちの仕事は「スプーンで食べて」と言うのではなく
「スプーンで食べられるように」援助するのが仕事です。

そこで、写真のトレーを作ってみました!

食器は手に持たずに置いたまま食べるように対象に語らせる。
食器は置いておくのだということが視覚的に伝わるような設定です。

自助食器がすっぽり収まるようにお菓子の空き箱をくり抜きます。
箱は防水加工されている包装紙(ダイソーで購入しました)で包みます。
多少の食べこぼしがあってもおしぼりで拭きとれば綺麗になります。
箱が潰れないように、裏側はスポンジで固定しました。

これで
「すくって食べる」という体験学習を重ねることができます。
すくう動作が改善すればするほど、食器を持ち上げる必要はなくなります。
結果として、かきこみ食べが防止できます。

口腔機能が保たれている方であれば
全粥の方が1口量の調整がしやすいのですが
そうでなければミキサー粥を選択します。
ミキサー粥は塊となっているので
そのまま提供するとすくうことができずに
塊のままこぼれてしまいます。
そこで提供前にミキサー粥を細かくクラッシュしてから提供します。
これで多すぎるミキサー粥をすくっても
スプーンからミキサー粥がこぼれてくれます。
おかずはペースト食にすると1口量を調整しやすいものです。

食形態は
口腔機能だけで選択するのではなくて
上肢操作能力も含めて選択するようにしています。

ちなみに
食具の提供の順番にも気をつけています。
最初にスプーンを右手に持っていただきます。
スプーンを右手に持ったのを確認してから
食事を乗せたこのトレーを提供すると持ち上げようがありませんから
まず、スプーンですくう動作を引き出すことができます。

「トレーを持ち上げないで」と言うのではなく
トレーを持ち上げずにスプーンですくう動作を促すように
場面設定に語らせます。

 

 

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