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「脱!ハウツー」のススメ

私がすごく疑問に感じるのは
「その人らしさを大切に」「認知症のある方に寄り添ったケア」
と唱えられることはあっても
実際の実践は、単にハウツーの当てはめをしているだけというケースが多いことです。
「〇〇という時には△△する」
これのどこが、その人らしさを大切にしていることなのか、寄り添っているのか
私にはさっぱり理解できません。
ハウツーは個別性の真逆にあるものです。
そもそも、どういう言動がその人らしさを大切にしていることで
どういう言動が寄り添ったケアではないのか
具体的に現実的に考えていくと、とても難しいことです。

たとえば
帰宅要求がある方に対して
「お茶を飲んでいただく」「タオルを畳んでいただく」
などの気をそらす対応が為されています。

諸般の事情で、そうするしかない時だって、もちろんあるとは思います。
そのような時には、望ましい対応でも適切な対応でもないことを自覚した上で
気をそらせる対応をするしかないからするのだと自覚しつつ行えば良いのです。
けれど、実は、
「気をそらせる=良い対応」と思い込んで為されている場合が多いのではないでしょうか?
帰宅要求に対して、気をそらせるような対応は
決して望ましい対応でも適切な対応でもありません。
だって、もしも上述の対応が良い対応だとしたら
どれだけ上手く気をそらせられるか、どれだけ上手く誤魔化せるか
ということが良い対応ということになってしまいます。
そんなバカなことがあるはずがありません。

認知症と人権擁護がご専門の齋藤正彦医師は
「微笑みながら徘徊したり帰宅要求を訴えている人はいない。みんな必死だ。」
とおっしゃっていました。
本当にその通りだと思います。

この問題はとても根深くて
「帰宅要求→気をそらせる」対応は単に表面的に表れているだけで
それよりも根本的な問題があって、
「帰宅要求→どうしたらおさめることができるか」
という発想のもとに対応の工夫が展開されてきた
そしてそのようなハウツー的対応への疑問や改善提案が
為されてこなかったことにあると考えています。

それって、下図のような思考過程(本当は思考ですらない)
で為される対応です。
帰宅要求だけを切り取って、どうしたら帰宅要求がなくせるか
考える。という対応です。

私が実践し提案してきていることは、まったく違うことです。

上図の通り、まず、きちんと情報収集をします
目の前に起こっている、一見すると不合理な言動、
たとえば、帰宅要求をしている場面そのものをきちんと観察します。
(この過程がすっ飛ばされている、不十分過ぎることが圧倒的に多い)
知識があれば、その場面に反映されている、
その方の能力と障害と特性を見出すことができます。
見出すことができれば、その方に今、何が起こっているのかを洞察することができます。
洞察することができれば、どうしたら良いのかを判断することができます。
それは、自然と一本道のように浮かび上がってくるものです。
あとは、その判断を具現化できる技術があれば良いだけです。

錯綜した現実を解きほぐす
そのためには、知識が必要です。
知識がなければ、単に「何度も繰り返し帰りたいと言う」ことしかわかりません。
知識があれば、近時記憶障害があっても再認可能だからきちんと説明しよう。
という判断ができますし
説明する時には口調に気をつけて、伝わりやすい言葉を選択しよう。
といった、その方の特性も理解できているからこそ可能な判断ができます。

観察の解像度を上げる

きめ細やかに現実を解きほぐせるほど
より的確な対応がその時々、その方それぞれに可能になる所以です。

ポジショニングの現状とまったく同じコトが違うカタチで起こっているだけです。

どうしたら良いのかがわからないのではなくて
何が起こっているのかがわからないのです。
だとしたら、「自分にはわからない」という事実にきちんと向き合って
錯綜した現実を解きほぐせるように
情報収集からやり直せば良いだけです。
その繰り返しで、パッと観てパッと洞察できてパッと対応できるようになります。
知識を習得しようとしない人や情報収集の過程をすっ飛ばす人には
結局、何が起こっているのか皆目わからないでしょうし
その人ができていなくて、私がやっていることとの違いもわかりません。
本当に違うのは、実際にやっていることではなくて
実践を下支えしている観察・洞察なのです。

今、本当に問われているのは
どう対応するか、ではなくて
観察、洞察、評価が不十分だという、私たちの側の問題なのです。
だからこそ、今すぐにでも改善可能なのです。

「その人らしさを大切にする」
「寄り添ったケア」
という高邁な理念は唱えているだけでは決して実現できません。
理念は唱えるものではなく、実践の際のもう一つの指針となるものです。
どのように指針となるのか
理念がどのように対応の工夫に役立つのか
次からの記事でご提案していきます。

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ICD11を意識して会話・観察する

会話も大切な情報源ですが
目的を持たずに会話しているだけだと
大切な情報をどんどん聞き落としてしまいます。

リハやケアにおいて
会話することの意義は
会話を通して、その方の状態を把握することにあります。
決して、単に笑わせるためでも時間をつぶすためでもありません。
その方の話に合わせて聞いているだけでもわかることは多々あります。

「従命可だから年相応の物忘れ」「お話ができるから認知症じゃない」
なんて安易な言葉を聞くことがなくなる日が1日も早く来ることを祈っています。

年相応であってもなくても
忘れっぽいなら、その程度や現れ方の把握が必要ですし
そもそも「認知症である」「認知症ではない」
といった診断ができるのは医師だけです。
私たちは医師ではないから診断はできません。
私たちは援助職ですから、的確な援助が行えるために状態把握が必要です。
確定診断があってもなくても同じです。
確定診断があった方がより状態把握がしやすくなるだけです。
より広くより深く状態把握ができれば
それだけ的確な援助ができるようになります。

そうならないためには
2022年に発効された、 _ICD11_ の定義にある7兆候を意識すると良いと思います。
・記憶
・遂行機能(実行機能)
・言語
・注意
・社会的認知・判断
・視覚的理解・認知
・精神反応速度

記憶については
近時記憶を意識するのはもちろんですが
再生と再認の可否についても意識して会話・観察することも大切です。
対応の工夫に直結するからです。

アルツハイマー型認知症では
その場の会話は円滑にできたとしても
実際の行動が伴っていないこともあります。
たとえば、車椅子のブレーキをかけ忘れたり
フットプレートから足を下さずに立ちあがろうとしたり。
スタッフが先に声かけをしたり介助してしまうと
貴重な情報を得られる場面を逃してしまうことになります。

 

 

 

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HDS-RとMMSEの扱い方・留意点

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HDS-Rを施行すると、怒り出してしまう方がたくさんいます。
(怒り出すということも大事な情報ですが)

検査は大事ですが
検査しなくても観察から検査と同等の洞察ができれば
認知症のある方の心身の負担を減らすことができるとずっと思っていました。

そのため
HDS-Rやかなひろいテストをする一方で
日常生活や会話の質的内容や行動との照合をずっと行なってきました。

HDS-Rの項目の意義を理解できるようになり
生活場面への反映についてそれなりに洞察ができるようになり
だんだんと観察だけでもかなりHDS-Rの予測がつくようになり
生活場面への反映についてもわかってきたので
HDS-Rの検査場面でちょっと1工夫することも始めました。
詳細は 「対応に役立つHDS-Rの工夫」 をご参照ください。

ところが、
これだけ認知症の普及啓発がなされている現状でも
実際に働いている職員の中には
「リハに支障がない」「従命可」「会話が弾む」「気遣いができる」「冗談が言える」
という程度の根拠で
「認知症じゃない」「年相応の物忘れ」などと、
安易に無責任な判断をする人がまだまだ多いという現実にびっくりしています。

「ちゃんとお話ができるから認知症じゃない」
という言葉を幾度聞いたことでしょう。
この言葉はその裏側に
「認知症になるとちゃんとお話ができない」
という思い込み・偏見があるからこそ、言える言葉です。
そんなことは決してありません。
HDS-R3/30点の方が
「こんなバカな俺に優しくしてくれてありがとう」と言ったり
HDS-R0/30点の方が
「俺はよ、ここがよ(頭を指さして)こうだから(指をくるくる回す)」
と発言されたりします。

年相応の物忘れと判断された方のHDS-Rは10点
認知機能低下に言及もされず、しっかりした方と言われていた方の
HDS-Rは5点ということもありました。

これだけHDS-Rが低いと明らかに生活に影響が生じいるはずなのに、
認知機能低下が見落とされている。。。
ご家族や生活の支援をする看護介護職は困っているのに
一部のリハ職はまったく気づいていないという。。。

ひとつには
認知症、認知機能低下という概念の理解ができていない職員側の問題がありますし
他方
他者に合わせようとして生きてきた方、他者に合わせるタイプの方は
自主的に起こす行動が少ない場面だと
認知機能低下が目立ちにくいという傾向があります。
たとえば、困った時わからない時には
誰かに尋ねて返ってきた答えの通りに対応する方や
自分から何かしようとはせず指示があるまではじっと待っている方は
その場では「穏やかな方」「良い方」といった判断がなされがちで
記憶の連続性が低下していたとしても
行動特性から表面化しにくいので見落とされてしまいます。
また、俗に言う地頭の良い方、元来認知機能が高かった方は
記憶の連続性が低下しても逆症や計算ができるので
これまた見落とされがちです。

「同居しているご家族は認知機能低下によって生活支援で困っていても
 たまに来るご家族には理解してもらえないことも多い」
と言われるゆえんです。

MMSEを施行する時に
MMSEはHDS-Rとは違って、検査項目が記憶だけではない
という前提条件を見落としていると
得点結果だけで判断してしまい、状態を見誤ります。
同じ30点満点のテストでも、
得点結果が同じ20点であったとしても
どの項目で失点してどの項目で得点したかは全く異なります。

実際に
他院でMMSEが10点代後半、疎通も良好で礼節も保持されていた方で
他院からのリハサマリーに認知機能低下への言及がまったくなかった方とお話をしていたら
1分前にした説明を忘れてしまっていたので
HDS-Rをとったら10/30点だったということがありました。
遅延再生も見当識も0点でした。そのかわり計算や語想起は満点だったという方もいました。

得点結果だけで判断してはいけないのです。

HDS-RとMMSEの違いを認識した上で使い分ける
そして、失点項目と得点項目に着目する
わからない時にどんな風に対応するのかということを観察しておくと
日常生活で困難に遭遇した時の行動パターンが予測できて
対応方法を明確化することに役立ちます。

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車椅子で前傾してしまう方への対応

上図のように
車椅子上で体幹が前傾してしまう
背もたれに寄りかかるように動作介助しても
身体が硬くてすぐに前傾してしまう方っていますよね?
ティルト型車椅子に変更してティルトを倒してもやっぱり前傾してしまう
そのような場合、どうしていますか?

車椅子上での姿勢について
車椅子上でクッションを入れる対処はしても
臥床時の姿勢、ポジショニングの見直しをしている人は少ないのですが
実はここが重要なのです。

上述のような方の場合
骨盤と体幹の分離が不十分というケースが圧倒的に多いものです。

臥床や離床介助の時に
立ち上がり時の動作を確認すると
腰背部を伸張した前傾ではなくて
骨盤も一緒に浮き上がってしまう。
なんなら、下肢も屈曲位のまま、浮き上がってしまい
足底接地や足底への荷重が難しい。。。ということもあります。

臥床時は
体軸内回旋が乏しく
骨盤を動かすと下肢も体幹も一緒にゴロンと転がってしまいます。
運動麻痺があるわけでもないのに(運動麻痺があることも多々ありますが)
全身がガチガチに硬くなってしまっているのです。
そして、このガチガチの硬さに対応せずに
座位でのポジショニングしかしていない人がとても多いのです。。。

こんなにガチガチだとおむつ交換も大変ですし
臥床はしていても、寝ても寝た気がしないと思います。
臥床本来の目的である身体をゆっくり休めることができないのではないでしょうか。

こんなにガチガチに硬くなってしまうのには理由があって
1)ポジショニングをまったくされてこなかった
2)不適切なポジショニングをされてきた
どちらでも起こり得ます。

筋緊張緩和目的のポジショニングは
過剰な筋緊張をせずとも臥床できるように環境調整することが肝要です。

まず、個々人のキーポイントを見つけられるように観察します。

臨床上、最も多いのは、
骨盤の傾きや肩甲帯の不安定さを見落とされているケースです。
そこを対応するだけで身体柔軟性が発揮されるようになります。
また、下肢の伸展パターンに対しては
骨盤後傾と股関節の屈曲位を引き出すような設定をすると
伸展パターンの抑制が可能となることも多々ありますし
側臥位設定することで伸展パターンの抑制が可能となることもあります。

どうしたら良いか、途方に暮れてしまう、という人は
まず、全身のアライメントを観察してください。
ベッドの足元側から観察し、
次にベッドの右側から、左側からも観察してください。
観察が難しければ、許可を得た上で臥床時の姿勢を写真に撮り、
各関節がどうなっているのか、一つひとつの関節角度をきちんと確認しましょう。
そして必ず筋緊張を確認しましょう。

全身の一つひとつの関節の状態がどうなっているのかがわかり
筋緊張も把握できれば
どうしてそうなっているのか、どうしたら良いのかということが
自然と一本道のように浮かび上がってきます。
あとは、浮かび上がってきたことを具現化するだけです。

この繰り返しで即座に観察・洞察することができるようになります。

どうポジショニングしたら良いかわからない
と言う人に限ってこの過程をすっ飛ばしていますが
「自分がわからない」という事実にきちんと向き合って
どうしたら自分自身でわかるようになるのかを考え対処しない限り
永遠にわからないままです。
そうするとハウツーを当てはめるだけになってしまい
しかも当てはめたハウツーがその方に適切だったかどうかもわからないままとなってしまいます。

どうポジショニングしたら良いのかがわからないのではなくて
その方に何が起こっているのかがわかっていないのですから
何が起こっているのかをわかるようにならなければいけません。
(認知症のある方への生活障害やBPSDへの対応とまったく同じコトが違うカタチで現れています)

ここを誤解している人がとても多いのです。
「どうしたら良いか」と問うのではなく
「何が起こっているのか」と問うべきであり
「自分がこの方に何が起こっているのかわからない。どうしたらわかるようになるのか」
と問うことから始めるしかありません。

正しく問うことができるから正しい答えを得られます。
今までは問うてはいたけれど問い方を間違えていたのです。
だったら、間違えずに問えるようになれば良いだけです。

   ポジショニングに限らず
   食事介助や認知症のある方への対応なども含めて
   最も重要なことは常に状態把握・評価です。

   実習において学生に体験学習させるべきはこの臨床姿勢であり
   協会主催の研修会でも再学習を促した方が良いと考えています。
   なぜなら、私の経験ですが
   (各地で多様な主催者から多様なテーマで多数の講演を依頼されてきました)
   講演後の質疑応答で「どうしたら良いのでしょう?」と質問する人は多くても
   「どうしたら的確な評価を行えるようになるのでしょう?」と質問した人は
   今までに1人しかいませんでした。
   正しく問える能力を養成すべきだと考えています。

それでは、次の記事で
ポジショニング設定の基本についてご説明します。

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座位で身体が傾く方へのポジショニング

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前の記事で
車椅子座位で身体が傾いてしまう方に対して
臥床時のポジショニングをすることで座位姿勢が改善されるケースがあることに言及しました。

臨床の現場では
車椅子で身体が横に傾いている方に対して
1)傾いている側にクッションを当てる
2)車椅子の座面を調整する
対応をされることが多いようです。

 

大切なことは、
なぜ傾いている側にクッションを当てると良いのか?
なぜ、車椅子の座面を調整すると良いのか?
その前後で対象者の身体に何が起こっているのかを理解した上で対応する。
ということだと思っていますが、
多くの場合にそれらについての言及はなく、
単にハウツー的にそうするものだと先輩から教えられ
そうした結果の身体の違いを確認することもないのが現実ではないでしょうか。

褥瘡予防と言って
不必要に過剰に下肢を伸展させ踵部を浮かせてしまうと
下肢の屈曲拘縮を増悪させてしまいます。
大腿四頭筋や縫工筋は2関節筋ですから
筋緊張を緩和させることなく、
遠位の膝を過剰に伸展させたり股関節の外転を行えば
近位の股関節周囲の筋は短縮するしかありません。
クッションを当てている間は膝が伸びているように見えて
クッションを外した途端、ギュンと一気に膝が曲がったり
股関節が内転・内旋してしまうことも現場あるあるです。
  
その場面を切り取って
「やっぱりクッションを当てないとこうなっちゃうのよね」と思われていますが、
実際に起こっていることは全くその反対のことなのです。
クッションが膝の伸展や股関節の外転を援助しているのであれば
クッションを外してもしばらくはその肢位を保持できているはずです。
ところが、実際にはそうではなくて
クッションを外すと逆方向に力が働いてしまうというのは
クッションを外さなくても逆方向に力が入っていて
クッションはその力を止めるだけの作用しかしていなかった。。。
良かれと思っての不適切な対応、過剰に膝を伸展させたり股関節を外転外旋させる対応が
逆効果となって筋緊張を亢進させ、拘縮を増悪させているのです。

なぜ
「ちゃんとクッションを当てているのによくなるどころか悪くなっているのか?」
疑問に思わないのでしょうか?
ちゃんとした対応をすれば悪くなることはないはずです。
悪くなるとしたら、
見立てのもとに行った対応が悪かったのか、
それとも見立てそのものが悪かったのか、
そのいずれかということを検討する必要があるのではありませんか?

さてさて、話を元に戻します。

生活期において、
車椅子座位で身体が横に傾いてしまう方で圧倒的に多いのが、骨盤周囲筋の硬さです。

その場合、臥床している時にも骨盤周囲筋は硬く、
往々にして骨盤がどちらかに傾いているものです。

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このような骨盤の傾きに対処せずに、
膝を伸展させようとクッションを当ててしまいがちですが
まず、写真では骨盤が左へ傾いていますから
左右対称になるように骨盤の左側の下に折りたたんだタオルを設置します。
筋肉の働きをタオルで代償させるのです。

臥床レベルでも姿勢保持するために筋肉は働いていますから
筋肉の働きを代償するように、身体とベッドの隙間を埋めるようにクッションを設置します。

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姿勢保持のために過剰に働いていた筋肉を休ませることができれば
身体はリラックスしますから
、結果としてリラックスした状態
(骨盤周囲筋の左右差のある筋緊張が緩和される)
で車椅子に座ることができるようになります。
だから、結果として車椅子の座位姿勢が改善されるのです。

リハやケアの分野では
良かれと思って、
でも結果としては過剰筋緊張を生むようなポジショニングをしていることが散見されます。
そこを改めれば良いだけなのです。

筋肉はゴムのように伸び縮みをするものです。
縮みっぱなしでは筋肉は有効に働けません。
車椅子座位で骨盤よりも上の、
体幹や上肢の動きに合わせて骨盤内での重心移動が起こります。
その重心移動に応じて骨盤が無理なく動くことで
骨盤上位の姿勢を保つことができる。
筋肉の柔らかさを保つことが大切なのです。

そして、ポジショニングを設定したら必ず確認をすることが重要です。
必要に応じて動けるように身体の柔らかさを担保することが目的ですから
設定した後に身体が柔らかくなったかどうかを確認します。
適切なポジショニングを設定できれば、その効果はすぐに現れます。
  
仰臥位でも側臥位でも膝を軽く左右に動かして抵抗感なく動くかどうかを確認します。
もしここで抵抗感を感じるようであれば、設定のどこかに問題があるという意味です。
ベッドの足元からとベッドの横からの2方向から
全身のアライメントを確認し直して
見落としている部分があるのかどうか、
設置したクッションが過剰だったのかどうかを見直します。

抵抗感なく膝を動かすことができれば、リラックスできている証左となります。

じゃあ、そもそもなぜ、骨盤周囲筋が硬くなるのか
私の考えと実践を記事にしていきます。

 

 

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車椅子で身体が傾く方にどうする?

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写真のように身体が傾いていると、
第一選択として、右脇にクッションを当てているのではありませんか?

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でも、クッションを当てた後に状態を確認してほしいと思います。
クッションを当てたって、右側への傾きは解消されていませんよね?

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そもそも、まず全身を観察すると、
車椅子の座面に対して臀部が斜めになっています。
クッションを当てるよりも先に、座り直しをすべきです。

そして
座り直したにも関わらず、身体が傾いてしまう場合には
1)体幹の過剰緊張
2)感覚入力の著明な左右差
3)疲労による座位保持時間の限界
4)その他の理由
によって引き起こされていますので、ここを評価することが重要です。

1)の場合
座位姿勢そのものへアプローチよりも
実は臥床姿勢へのアプローチが重要な場合が多いものです。
臥床時に良肢位保持と言いながら、
実は筋緊張を亢進させてしまうようなポジショニングをしていると
座位姿勢が崩れてしまうことがよくあります。
臥床時のポジショニングを修正することで座位姿勢が改善されるケースに多々遭遇しています。

2)の場合
基礎疾患として、中枢神経障害を持っている方で臥床時間が多い時に起こります。
ベッドの位置は固定されていることが多いので
どうしても職員の関与が同一方向からに限定されてしまいます。
そうすると職員の関与がない側からの感覚入力が減少し著明な左右差を生むことになります。
そのような場合には、
可能であれば離床時間を増やし、
意図的に職員の関与する位置や
テレビや人の出入りなどの感覚入力の左右差を減少させるような環境調整を図ります。
直接的な身体アプローチはせずとも座位姿勢が改善されるケースもあります。

3)の場合
私は普段電車にはほとんど乗りませんが
たまに電車に乗って座席に座れたとしても満員で身じろぎもできない状態だと
長時間座っているとお尻が痛くなって辛くなってきます。
対象者の場合、日中の離床時間が長いと
たとえ高機能の車椅子用クッションを使用していたとしても
辛くなったとしても不思議はありません。
対象者の方は自身の動ける部位の動ける能力を使って対応しようとしますから
前方に滑ったり横に傾いたりすることがあります。
臥床して身体を休める機会を設けることが必要です。

4)の場合
膝関節の拘縮の左右差によって座位姿勢が崩れてしまっていた方もいましたし
全身の伸筋痙性のために股関節の90度屈曲座位が困難な方もいましたし
実は脱肛があって仙骨座りになっている方もいました。
多様な状態がありますので、きちんとした評価が必要です。

私の経験では
生活期にある方で圧倒的に多いのは
上記1)のケースであり
しかも、対応し損ねていることが多いケースでもあります。
身体の総体的な把握がなされないと
「座位の不良姿勢→座位でのポジショニング」
「臥位の不良姿勢→臥位のポジショニング」にとどまってしまい、
臥位でのポジショニングとの関連性を認識できていないセラピストも少なくありません。



座位で側方に身体が傾いている対象者は
骨盤周囲筋の過剰筋緊張が起きていることが多く
臥位での過剰筋緊張を抑制するポジショニングによって
座位でのポジショニングはせずとも
座位姿勢が改善されるというケースを多々経験しています。

現場あるあるなのは
自身の気になるところだけを
そう見えないように整える方法論です。
その最たるものが、傾いている身体にクッションを当てるというやり方です。

身体が傾いていたら
痛くないように危なくないようにクッションを当てても良いですが
その一方できちんと状態把握、評価をして
その方に今、何が起こっているのかを
きちんと観察し洞察し適切な対応をすべきです。

「座位で身体が傾いている→クッションを当てる」
というような単なるハウツーの当てはめという臨床姿勢からは
もう卒業すべきだし、卒業できる時期に来ていると思います。

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論理的に考える:ムセたらトロミ

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ムセたら食事を中止する人も多いけど
ムセたら飲み物にすぐにトロミをつける人もとても多いですよね。

確かに、トロミは飲み物の粘性を高めてゆっくり通過するので
喉頭挙上のタイミングが遅い人には有益だったりします。

ですが、ムセたからトロミをつけたのに、まだムセる方もいます。
そうするとすぐに、もっとトロミをつけていませんか?
「トロミ剤を大さじ3杯入れるように」って言った人もいましたけど
トロミ剤大さじ2杯でも結構ベッタリと口腔内や咽頭にへばりついて違和感バリバリです。
介助に従事する人は是非トロミ剤を入れた飲み物を飲んでみていただきたいものです。

誤解のないように付け加えると私が若い頃に比べるとトロミ剤はとても進化しています。
昔は変な匂いと味がしてもっとベッタベッタにへばりつく感じがしましたが
最近のトロミは変な匂いや味はほとんどしなくなって
へばりつきもずっと少なくなってきていると感じています。
トロミ剤があるから、水分を安全に飲める方がたくさんいます。

ただし、どんなに良いものでも扱い方が不適切であれば
効果があるどころか逆効果になることすら起こり得ます。

それが、口腔期に問題があって二次的に咽頭期の能力低下が起こっているケースです。
実は、そのようなケースは生活期にある方や認知症のある方にとても多いのです。

不適切なスプーン操作によって誤介助誤学習が生じ
舌が後方へ引っ込んでしまったり
板のようにガチガチに固くなってしまうと
舌のしなやかな動きが損なわれてしまって
スムーズに食塊を再形成したり
送り込んだりする働きが低下してしまいます。
その結果、喉頭挙上の動きまで損なわれてしまうのです。

舌の動きが低下しているのに
トロミをたくさんつけて粘性を高めれば
ただでさえ動きの悪い舌にもっと負担をかけることになってしまいます。
だから送り込みがうまくできなかったり
喉頭挙上の動きが阻害されてしまい、ムセてしまう。
つまり、咽頭期に本質的な問題があるのではなくて
口腔期に本質的な問題がある方に
トロミをつけると逆効果
になってしまうのです。

このようなケースはとても多いのに
「ムセたらトロミ、まだムセたらもっとトロミ」
をつけることによってますます食べにくくさせてしまいます。

摂食・嚥下5相にそって食べ方を観察すると
本来の困難が咽頭期にあるのか、口腔期にあるのか、
観察することができるようになります。
口腔期に本質的な問題があって咽頭期の能力が保たれている場合には
むしろ粘性は下げてトロミは必要最低限にしてから、
食べ方・飲み方の再学習を行う
誤嚥することなく安全にスムーズに食べたり飲んだりすることができるようになります。
舌が動くようになってきたら段階的に食形態をあげることも可能になります。

ムセたらトロミ、というパターン化した対応はもう卒業しましょう。

ムセてもムセていなくても食べ方をきちんと観察するようにしましょう。

 

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論理的に考える:ムセたら食事中止

誤解している人がとても多いと思います。
食事中に強く激しくムセたら食事を中止させていませんか?

そのような判断をする人は
「強く激しいムセ=ひどい誤嚥」と誤解しています。
ムセとは何か?がわかっていないのです。

確かに誤嚥すればムセは起こりますが
ムセとは異物喀出する生体防御反応です。
強く激しくムセたということは、異物喀出力の高さ、つまり
異物をしっかり喀出しようとする能力があることを示しています。
強くムセることができるのは良いことなのです。

ムセたら食事を中止するのではなくて
ムセたら呼気の介助をしてしっかりとムセきってもらいます。
落ち着いたら声を確認して清明な声であれば食事を再開することができます。

ところが
ムセとは何か?を知らずに
周囲が行っているから
今までそうしていたから
という理由にもならない理由で
漫然とムセたら食事中止という対応がまだまだ多いのが現実です。

むしろ、中止すべきなのは異物喀出能力の低下を示唆するムセ方です。
弱々しくしかムセられない
痰がらみのムセ
遷延するムセ。。。

これらの方は要注意ですけど
概念の本質が理解できていないと
弱々しくしかムセられない、異物を喀出しきれていないのに目立たないから
そのまま食事を継続させられたりしてしまいます。
逆なんです。

そして
ムセとは異物喀出作用なのに
なぜかムセの有無が食べ方の指標になってしまっています。

曰く
「ムセることなくお食事を全量召し上がられました」。。。
「今日は途中でムセたのでお食事を半量ほど摂取したところで終了しました」。。。

あちこちで何回も書き、機会あるごとにお話していますが
ムセは異物喀出作用なので食べ方の指標にはなり得ません。
摂食・嚥下5相に則って、きちんと食べ方を観察しましょう。
その方の本来の食べるチカラを見出せるように、きちんと介助できるようになりましょう。

上唇を丸めて食塊を取り込めているか
舌で食塊再形成ができているか
送り込みが円滑にできているか
喉頭は完全挙上できているか
など、観察すべきポイントがたくさんあります。

 

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