聴覚情報の取捨選択

以前に食事中の音環境を録音したことがあります。
その結果は、まさに、音声多重放送状態。でした。

こんなに大きく聞こえるとは思わなかった音の筆頭は
スプーンに残った食塊を食器に軽く叩いて落とす音でした。
金属音の高い音でカンカンと響きわたっていました。
配膳者のシャッターを上げ下げする音も
ガガガーッと響きわたっていました。

実際の食事場面では
スプーンを食器で叩く音や配膳者のシャッター音は
まったくといっていいくらい気にならなかった…。

そうなんです。

音が小さかった…のではなくて
音が気にならなかった…に過ぎないのです。

私たち職員は、気にならないでいられる
つまり、無意識のうちに脳の中で
スプーンや配膳者の音は
「気にしない」という取捨選択が為されているのです。
耳は聞いているけれど脳は聞いていないのです。

認知症のある方にとっては、どうなのか…

当事者のクリスティーン・ブライデン氏は
スーパーマーケットなどのにぎやかな場所での音環境を
このように表現しています。

「音の洪水」 

Permanent link to this article: https://kana-ot.jp/wp/yosshi/637