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【中堅】徒然なる思ひ 窪田聡OTR

徒然なる思ひ-窪田聡OTR窪田聡OTR(国際医療福祉大学小田原保健医療学部)

 断ることのできない古くからの友人に「作業療法を語って欲しい」という依頼を受け,この文章を書いている.自虐的ではあるが,私が作業療法を語るというのは何とも相応しくない話である.私のことを知っている人であれば,きっとそう思うはずであるし,自身でもそう思う.
 ただ,せっかくこういう機会をいただいたのだから,私の作業療法に対する思いを徒然なるままに書き綴らせていただく.

 私の作業療法のバックグラウンドは老年期障害である.臨床の場に立っている時は,結果を出さねば,というある種の脅迫的な思いにいつも駆られていた.介護老人保健施設の入所者が少しでも身の回りの事を自身で出来るように,とか,より充実した日々を送ることができるように,なんて思って日々過ごしていたように思う.
 20代半ばの当時(あれから10年も経過してしまった)は,エネルギーも有り余っていたこともあって,頭痛や吐き気に襲われるまでひたすら考えていた.そして必死に向き合った結果,それなりに変化し,身の回りのことが出来るようになったり,活き活きと日々を生きていくケースを体験することができた.当初は,そういった成功例に遭遇すると,自分の力でケースの人生を変えた気になっていた.

 しかし,次第に自分が変えたのでは無く,スタッフとの協働の中で変わっていったのだ,と思うようになった(何より本人が変わっているのであるが今回はそのことには触れない).
 例えば,褥瘡の酷いケースでは,姿勢の評価をOTが行い,現実的に継続可能な体位変換の方法を介護・看護スタッフと一緒に決めていった.そうすることで実際に継続でき,改善していった.自分だけで体位変換の姿勢やリズムを決めて,それを介護スタッフに伝えていた頃は継続もせず,改善にもつながらなかった.
 また,介護スタッフやST(言語聴覚士)と共に企画運営を行った創作活動や季節の行事では,それが元になって,入所者同士がつながり,バラバラだった施設生活者達にコミュニティが形成されていったりもした.
 そしてそのことにいち早く気がついたのはSTであった.摂食に対する介入では,嚥下機能の詳細をSTが評価し,食形態をSTと管理栄養士が相談して決定し,ケースが手を伸ばし,スプーン操作が行い易い姿勢をOTが考えた.どれか一つが欠けていても摂食に対する適切な介入はできなかった.

 結局,私は多くの人と共に考え,共に働き,感動を分かち合った結果,ケースの変化を体験することができた.今であればそれがはっきりと理解できる.我々OTはケースの日々の営みにポジティブな変化をもたらすことを期待する.
 しかし,一方で日々の営みに関わり続けるわけでは無い.だからこそ,日々の営みに関わる介護・看護スタッフや,それぞれの専門的立場から関わるスタッフとの協力が必要なのだと思う.

 人間は利他行動(他人の利益になる行動)をとる動物として知られており,それが人類の進化に貢献してきた(Nowak,2006; 山本,2011).そして利他行動にはお互いを助けあう「協力」がある.「協力」は現生人類に古くからみられる行動であり,「協力」が集団を強固にするとされる.この事は言うまでも無いことかもしれない.ただ,「協力」が我々の進化に深く関わっているのであれば,作業療法の進化のためにも今こそ他職種とのより一層の「協力」が必要なのかもしれない.

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