森下史子OTR(済生会横浜市東部病院)
作業療法士になって15年以上が過ぎました。
作業療法士になる前は、一企業で銀行のATMのソフトウェアを作る仕事をしていました。自分自身が社会人として働く一方で、社会に出られない人たちがいる。その人たちのために何かしようと思い立ち、作業療法士になりました。そして、機会あってこれまでに急性期、回復期、慢性期に携わってきました。
初めて就職をしたのは急性期病院でした。先輩方の大きな背中を追いかけ、疾患ごとの治療、離床の進め方、スプリントの作り方、高次脳の治療、文献の読み方など、1つでも多くの手技や技術を真似しようと必死で過ごしていました。それでも今振り返るたびに、あの頃学べることはもっともっとあっただろうと思います。
回復期病院では、数か月という時間をかけて自宅へ帰っていく患者さんの、ADLを初めとする治療や住宅改修にじっくりと向かい合うことができました。
回復期病院に併設されていた施設では、緩やかながら回復をしていく多くの老人に出会いました。作業そのものや作業療法士の関わりが治療となりうることを改めて勉強しました。
急性期、回復期、慢性期。いずれも作業療法士が行うべきことがたくさんあり、いずれも作業療法を必要とする人たちがたくさんいました。
6年前に、病院の立ち上げと作業療法室の開設を行い、再び急性期病院で勤務することになりました。病院職員でさえ「PTは知っているが、OTは知らない」という人が多い中で、作業療法の対象疾患や対象患者を周知してもらうことに長い時間を要しました。作業療法士と働いた経験がなかったPTも多くいました。どこからどこまでを作業療法士が担当するのか、PTそしてSTと話し合うことも必要でした。ましてや急性期。「OTがベッドサイドで何をやるのか」と思っていた職員も多かったように思います。それでも、発症後まもない患者さんにも作業療法士が介入できるよう、医師と繰り返し話をし、現在では何とかその流れができてきました。
一方で、作業療法の対象領域は、以前はPTしか行われていなかったところへ拡大してきています。また、病院の性質上、やっと連携がとれるようになった医師や看護師が異動していくこともよくあります。急性期の作業療法を啓蒙し続けていくのは、頂上の見えない山を登っているような気分になることもあります。
私が急性期の病院で再び働くことに決めたのは、初めて就職した急性期の病院でやり残したことがあったと感じていたからかもしれません。回復期、慢性期を経験できたことで、急性期が以前よりも一層意味深いものとなってきたからかもしれません。でも、一番には、単に急性期の仕事が好きだからでしょう。突然昨日とは異なる身体になってしまい、不安さえもまだ感じることができない患者さんたちが、初めて起き上がり、座り、立ち上がり、食事をして、着替えをして、トイレへ行く。その手伝いをすることが好きなのだろうと思います。
急性期病院では、車椅子に乗れるようになり、酸素や点滴、各種モニタがはずれ、身体機能や高次脳、ADLなどの治療を行えるだけの耐久性がついてきた頃には、多くの患者さんが回復期病院へ転院してしまいます。開院当初は、患者さんのゴールまで関わることができないことに対して、急性期の作業療法士でいることを迷った後輩もいたのだろうなあ・・・と思います。現在では、我々が早期から介入するからこそ、身体機能・高次脳・QOL、すべてを考慮して日常生活や社会生活の予後予測とそれに合った治療を行うことができるのだということを理解してくれているのではないかなあ・・・と思います。
私自身はというと、めまぐるしく患者さんが入れ替わり、慌ただしく流れていく時間の中、目標としてきた先輩に近付けているのだろうか、共に働きたいと言ってくれた後輩たちに恥ずかしくない仕事をしているのだろうか、とふと不安になることがあります。そんな時は、目の前の患者さんに一生懸命であること、自分自身を驕らず、作業療法を驕らず、冷静に、そして楽しく・・・そのことを心に留めています。ここまで働いてくることができたのは、いつでも頼ることができる先輩方が近くにいると思うから、いつでも助けてくれる後輩たちが近くにいると思うからです。
もう少し切磋琢磨してがんばります。
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