【中堅】作業療法士+母 福嶋祐子OTR

【中堅】 作業療法士+母-福嶋祐子OTR福嶋祐子OTR(汐田総合病院リハビリテーション課)

 この原稿の依頼を受け、書き始めるまで一年以上かかりました。
 母として、作業療法士として、これから作業療法士を目指す人たち、若手の作業療法士に何を書けるのか、私が書いていいのか。
 そんな思いが常に頭の片隅にありました。

 作業療法士になって14年目になりました。
 身体障害領域の総合病院に就職して、急性期病棟・療養病棟・回復期病棟と渡り歩き、デイケアへの支援にも少し行かせてもらい、作業療法士として様々な経験とさせてもらっています。
 また、県士会の委員としての仕事をさせてもらったり、学会発表をしたりと職場の外での活動も、出会った先輩や同僚のおかげで充実しています。プライベートでは結婚して無事に子供も二人授かり、職場の理解もあり子育てをしながら仕事を続けさせてもらっています。「何足の草鞋を履いているの?大変じゃない?」と周囲からよく聞かれます。私の返答は「大変だけれど大変じゃないよ」です。なぜなら、全部が私の糧になっているからです。一人暮らしをして気づいた作業、学会発表を通して気づいた作業、結婚して他の人と暮らすことで気づいた作業、こどもと一緒にいることで気づいた作業、これら全てが日々の診療の中で誰かに必要な作業になる、これは私の武器になる、そう気づいたからです。

 さて、作業療法士+母の本題に入ります。
 家のことをしながら、子供を育てながら働くことに対して、理解してくれる人、そうでない人。様々な人がいます。病院で関わった患者さんのほとんどから「お子さんはいるの?」「誰が面倒をみてくれているの?」「大変じゃない?」そう聞かれます。「私は子育てに専念するべきだと思う」とおっしゃる方もいます。逆に子育てを終えた患者さん達からアドバイスや励ましをもらい、助けてもらうこともしばしばです。私自身が患者さんの作業になっているのでは!?と思うことも。しかし、子供の体調不良による突発休で患者さんや周囲に迷惑をかけてしまうこと、残業できないことも多々あり、「働く母を続けていていいのか」と迷い悩むことが日常茶飯事です。
 そして、家ではいつも明るく笑っているお母さんでいたいと思いながら、なかなかそうもいきません。仕事でミスをして落ち込んで帰ることや、時間がなくて焦って急かして怒ってしまうことも時折あります。そんな顔をこども達が見逃すはずがありません。「慰める」「笑わせる」「さらに怒らせる(!)」という作業があの手この手で繰り出されます。私は私で、「無心で野菜をザクザク切る」「無心で洗濯機の中に洗濯物を入れて回す」という作業に没頭。こうして、家の中でも作業療法?が繰り広げられています。
 患者さんや職場、そしてこども達にも迷惑をかけてしまうことが多い日々の中で、私はどうして母をしながら作業療法士を続けているのか、何を返せるのか、とモヤモヤしながら立ち止まり考えます。そこで必ず行きつくのは、「色々な経験をしたことで得た糧」を日々の診療や後輩育成、そして自分自身の生活に繋げて返していくしかない、という答えです。(その答えに揺らいだり、決心してみたりの繰り返しですが) また、生活すべてが作業になるという根本にも立ち返り、私はこの魅力に取りつかれたんだったな、ということを思い出しまた歩き出す、そんな繰り返しで、「作業療法士+母」生活7年目に突入しました。

 私にとっての原点や魅力を再確認するだけの、まとまりのない原稿になってしまった気もします。それでも、この話が誰かの目に留まり、作業療法ってこんな見方もあるんだな、と思ってもらえたらいいな、と思います。そして、私もこの振り返り(という名の反省)を胸に、また日々精進していきます。

同じカテゴリーの記事:作業療法を語る

Permanent link to this article: https://kana-ot.jp/wpm/essay/post/230