座右の書

私は特養で働いていますが、研修などで会った人から「特養で作業療法士は何をするの?」と聞かれることがあるんです。自分の仕事ぐらい説明できないとダメなのでしょうが、情けないかな「作業療法士として」と前置きされると私は言葉に詰まります。ちょっとややこしいですが、私は特養で「作業療法士として」ではなく、機能訓練指導員として働いています。では「機能訓練指導員として何を?」と問われれば、私は大まかにひと言で「生活のお膳立て」と答えることにしています。入居者が過ごしやすい環境づくり、入居者の身体のコンディショニング、介護職の負担が軽くなるような提案、などなど、そのお膳立ては様々です。「車椅子のタイヤがパンクした!」と連絡があれば、すぐさま修理に駆けつけもします(笑)。

そんなお膳立ての中で、介護職と認知症ケアについて話し合うことがあります。そんな時についついヒートアップしてしまうのは、私も認知症ケアについては大いに悩んだ人間だからでしょうか。そんな悩みの中で本を読み漁っていた頃、出会った1冊があります。

室伏君士編『痴呆老人の理解とケア』

編者であり著者の室伏君士は認知症ケアの草分けであり、おそらく我が国で初めて認知症ケアの理念を提唱した人だと言われます。「老人にそった理にかなったケア」を築く。かなり古い本で恐縮なのですが、今読んでもこの本から学ぶことは多いし、介護保険制度が始まる15年も前に書かれていたことには驚くばかりです。悩みに悩んでいたあの頃、この本に出会っていたらどんなに心強かったか、、、

 

室伏君士は『老年期痴呆の医療と看護』の中で作業療法にも触れています(この本も介護保険制度の10年前に書かれています)。これらの本は私の座右の書ともいうべき2冊です。

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