Category: とらえる視点と対応
毎年カブトムシの幼虫を販売しているのですが,今年は手元に残った子が多く,毎日続々と成虫になっています.カブトムシはとても力が強く,入れ物のフタを持ちあげて脱走.出勤すると部屋のあちこちでカブトムシが発見されます.虫が怖い私にとっては恐怖の館です.
でも,利用者さんはカブトムシが好きなようで,こまめに世話をしています.観察も怠らず,体長2センチくらいしかない小さなオスが元気に動き回っている,などと報告してくれます.自分から行動することが苦手な人も,カブトムシのところには足を運んでいます.興味は行動を引き出すのですね.
先日,匹数把握のために,オス・メスを別々の水槽に移し,「わかるようにしてほしい」と伝えると…ユーモアたっぷりに「殿方」「奥方」と書かれていました.温泉みたいですね.
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脳損傷の後遺症に「症候性てんかん」があります.脳波に発作波が見られても,痙攣発作を起こさない場合もありますが,大多数の人は抗てんかん薬の服用をしています.この薬は血中濃度を維持しなければならず,みんな飲み忘れのないよう気をつけて生活しています.でも,体調や疲労,睡眠不足などさまざまな要因で,痙攣発作を起こしやすい人もいます.
先日,カブトムシの幼虫を納品に行きました.利用者に経路を調べてもらい,電車とバスを使って移動することになりました.電車やバスの乗り継ぎも予定通り.みんなで「今日の経路は完璧だね」と喜んでいた矢先,異変が起こりました.利用者のひとりが,痙攣発作を起こしたのです.でも,間もなく目的の停留所に到着してしまいます.
小発作(欠神発作)なら,ほんの一瞬で治まるので心配はないのですが,今回は大発作(強直間代発作)でした.呼吸状態と周囲の安全確認をし,とりあえず座席から落ちないよう対応しながら,バスの運転手さんに報告.「救急車呼びますか?」と聞かれました.でも,重積発作ではない限り,救急車は必要ありません.「1~2分で治まるので,少し時間をください」と伝えたものの…近くにいた乗客が心配して,本人に声をかけたり,身体をさすったりしてくれます.これが誘因となり発作は長引くばかりでした.周囲の人の厚意に応えつつ,「静かに見守ってください」と伝えるのは難しいな…と改めて感じた場面でした.
病院では,すぐ対応してもらうことができますが,退院後は病院以外で過ごす時間が圧倒的に長くなります.でも発作はいつでも・どこでも起こる可能性があります.もしひとりのときに発作が起きたら,入浴中だったら…など,さまざまな場面を想定し,対応策を講じなければいけません.外出するときはけいれん時の対応や連絡先を記入したカードを持ち歩く,入浴は誰かがいる時間帯にするなどの工夫が必要です.でも,その前に「定期的な服薬」を習慣づけるよう,早期からの支援が大切ですね.
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前回の「自転車」で少し書いたのですが,高次脳機能障害の方の無断外出ってわりと頻回に起こります.病院でも患者さんが離棟や離院をしてドキっとした経験があるのではないでしょうか?
無断外出のときの対応では,「本人がどうしてその行動をしたのか」という気持ちを確認することと,場合によっては行動を修正してもらうために「気分や目先を変えること」が大切になってきます.
Aさんは「会社に行く」と言って出て行こうとするので,私も同行しました.途中の公園で私が「ブランコに乗っても良いですか?」と聞くと「ちょっとなら」との返答.結局20分くらい付き合ってもらいました.
すると「飽きたから帰りましょう」と本人が提案してくれたのです.ラッキー,言い争いではなく,本人の意思に基づいて無事帰ることができました.
出て行こうとしている人や出歩いている最中に本人を見つけた場合,「ダメです」や「帰りましょう」は通用しません.押し問答になり,出かける目的に「固執」してしまいます.こんなときは,気分や目先を変えてしまうのも,支援方法のひとつですね.
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先日,利用者の通所時間帯に市営地下鉄ブルーラインが止まってしまいました.
第一報の連絡は非常勤職員からで,状況を聞くとしばらく動きそうもないとのこと.この時点では交通局のホームページ情報も更新されておらず,私たちとしても予測ができません.利用者をどうやって誘導しようかな…と考えていました.
そのあと続々と利用者から電話が入り「電車が止まっているので遅刻します」「今,どこの駅にいます」と報告できていました.すばらしい! 高次脳機能障害って一般的に「不測の事態が苦手」「臨機応変な行動が難しい」といわれているけれど,社会人として行動することができていました.新しい一面をまた発見ヾ(*´∀`*)ノ
みんな30分遅れで無事到着.「電車が動かなかったらどうするつもりだった?」と聞くと,「他線を使ってセンター南駅から徒歩」,「バス」など別の手段も検討したそうです.誰一人として「休む」という選択肢がなかったらしい…大人です.私ならサボって遊びまわっていたかもしれません.
非常事態から,利用者の想像以上の能力を知ることのできた,嬉しい一日でした.
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すてっぷななの玄関には,赤い自転車が置いてあります.開所したときに頂いたものなのですが…座面が高く足が接地できないので,毎回ドキドキしながらの乗車.先日も電柱と標識の間に挟まりました.
でも,これが大活躍しています.銀行や買い物に行く時はもちろん,あるときは緊急車両に変身.できれば変身させたくないのですが,高次脳機能障害の方,道に迷ったり,無断で外出してしまうなど,行方不明が起こりやすいのです.
利用者が外へ出てしまったとき,こっそりこの自転車で追跡し,見守りをします.「困ったときにはどうするのか」「何が目的で外出したのか」など,注意深く観察し,評価・支援を考えていきます.
その場で本人に声をかけてしまうのは楽だけど,その行動の問題解決方法までを見届けたい!
施設の中では見ることのできない,意外な能力に驚かされることも多いのです.
私たちって,リスク管理や時間を優先しがちで,つい先回りして支援していることが多いような気がします.でも,それは彼らの可能性を潰してしまっていることもある,ということを意識したいですね.
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すてっぷななの夏休みは7月末~8月初旬.利用者との話合いで「お盆はどこに行っても込んでいるから,違う時期が良い」「こどもの夏休みと合わせてほしい」などの意見があり,この時期になりました.
夏休み明け最初の活動日.案の定…日課や作業,役割分担など,今まで積み上げてきたものが,たったの10日でリセットされていました.休み前の状態に戻すのに何日ぐらいかかるのかな?
手続き記憶は残りやすいので,作業はもう少し大丈夫だと思っていたけど,大誤算でした.クッキー作りでは,手順書を出さずに作業を開始し,道具も材料も間違える…進捗状況の報告・相談を忘れるなど,通常できていたことがうまく繋がらない様子.でも,宅急便の集荷依頼の電話はとても上手にできていました.このあたりの「ムラ」が高次脳機能障害の特徴のひとつなんですよね.
今回は,休み明けに「はじめまして」と自己紹介されなかっただけ良し,としましょう.
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