Tag: 支援方法
以前,「一泊旅行はどこに行くでしょうか?」と投げかけたままになっていましたので,ここでは旅行の様子をお伝えしたいと思います.
利用者同士で話合いを重ね,今年の旅行は群馬の水上で「キャンプファイヤーをしながら花火を楽しむ」ことと,数年前から案として挙がっていた「乳搾り体験」に決まりました.
とは言っても10月のキャンプ場です.楽しみにしていたキャンプファイヤーは非常に寒く,火が燃え上がる前にみんなは早々に部屋へ戻っていってしまいました…今年も天候に負けた感はありますが,事前にみんなで予算を決めて花火を購入しに出かけたり,ランタンや懐中電灯を準備するなど,それぞれの楽しみはありました.
乳搾りは,グリーン牧場へ行きました.ここは整地された場所だけではなく,芝生の上を歩いたりする場所もあるのですが,利用者のなかには車椅子を使用している方もいます.このとき,利用者同士で車椅子を押すのを手伝ったりと,私たちが期待している以上のナチュラルサポートがなされていました.職員が先回りして手を出してしまうと,このような場面を見ることはできなかったな,と感じました.
今回の旅行で,その気づきを促してくれたのはバスの乗務員さんでした.昨年も同じ方が担当してくれていたのですが,「この施設の職員って何にもしないで,みんなにお任せですね」と言われたのです.一瞬なにを言われているのかわからなかったのですが,よくよく聞いてみると「他の施設では職員が親切になんでもやってあげている」ということだったのです.
支援者はリスク回避が最優先になりがちですが,「利用者の能力や可能性を信じて任せる」ことも大切なことだと思います.だからこそ細やかな評価が必要であり,確かな技術で支援をすることが求められている,と改めて考えた一泊旅行でした.
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AさんとBさんは,すてっぷなな利用開始時24歳.麻痺はなく,高次脳機能障害の症状も似ている2人.注意障害,遂行機能障害,病識欠如などが生活上に影響していました.でも受傷・発症後の将来の目標や生活イメージは異なっていました.面談や話し合いを重ね,今後の目標と支援の方向性を探りました.今回はAさんについて紹介します.
本人:「復職したい.それ以外の仕事はしたくない.」
家族:「症候性てんかんがあるので仕事は無理.」
支援者:「復職は難しいが,何らかの仕事に従事することは可能.」
利用開始3カ月後の面談で,三者の足並みは揃いませんでした.このままでは平行線… 本人の気持ちはわかるけれど,若干固執傾向か?いずれにせよ特殊な技能を要する仕事なので,注意障害が残存する状態では難しいだろうな.症候性てんかんについては,薬と疲労に気をつける以外の方法はないし,治るのを待っていたらいつになるかわからない.まだ若いので,このままの状態で過ごすのはもったいない気がする.
私の頭の中では,こんな思いがグルグルと回っていました.でも,この思いは本人と家族の考えとはかけ離れています.何か突破口はないかな?と日々探っていきました.
「症候性てんかん」は三者共通の不安要素だったので,まずはここから検討することにしました.主治医からの情報によると,服薬は必要だが,日常生活に問題はなく仕事もOKとのこと.あとは発作の傾向がわかれば,不安要素も減るはずです.本人に日記をつけてもらい,様子を見ることにしました.
すると発見が!どうやら発作が起こりやすい状況として,睡眠不足と疲労感がありそうでした.主治医に連絡,本人・家族へ説明をしていただき,「仕事に向かって頑張ろう」と方向性を示してもらうことにしました.
ここまでで既に1年が経過.家族は働くことに対して前向きに考えるようになりました.あとは本人の希望をどう叶えるか…復職は無理,と言うだけでは納得できません.復職するために必要なことを本人と一緒に考えました.
「こんな場面で注意力が欠けていたらどうなる?」「疲れやすくなってるけど,体力に自信はある?」などすてっぷななでの様子と職場での業務内容を合わせて話をしていきました.この作業に約半年.地道な,発展性の少ない話し合いにも見えますが,この過程を飛ばすと,すぐに振り出しに戻ってしまいます.
話し合いを続ける中で,支援の方向性が見えてきました.本人の希望に寄り添い,支援者の思いと一致できるもの.それは復職の前に,そのステップとして別の仕事を経験することでした.
就職して「働く自信」と「体調管理」を身に付ければ,その後キャリアアップとして元の仕事を目指せるのではないか,と提案したのです.本人も納得してくれました.この時点で利用開始から2年が経過しました.
すてっぷななの利用期間は3年.退所して新しい仕事を始めました.現在,彼は「大変だ~」と言いながらも一生懸命働いています.自分のことだけではなく,会社のことも考えながら…とてもたくましくなりました.同僚とも楽しく過ごせているようです.
先日,久しぶりにすてっぷななへ顔を出してくれたので,ゆっくり話をしたのですが「今の職場で頑張りたい」とのこと.しばらく見守っていきたいと思っています.
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前回の「自転車」で少し書いたのですが,高次脳機能障害の方の無断外出ってわりと頻回に起こります.病院でも患者さんが離棟や離院をしてドキっとした経験があるのではないでしょうか?
無断外出のときの対応では,「本人がどうしてその行動をしたのか」という気持ちを確認することと,場合によっては行動を修正してもらうために「気分や目先を変えること」が大切になってきます.
Aさんは「会社に行く」と言って出て行こうとするので,私も同行しました.途中の公園で私が「ブランコに乗っても良いですか?」と聞くと「ちょっとなら」との返答.結局20分くらい付き合ってもらいました.
すると「飽きたから帰りましょう」と本人が提案してくれたのです.ラッキー,言い争いではなく,本人の意思に基づいて無事帰ることができました.
出て行こうとしている人や出歩いている最中に本人を見つけた場合,「ダメです」や「帰りましょう」は通用しません.押し問答になり,出かける目的に「固執」してしまいます.こんなときは,気分や目先を変えてしまうのも,支援方法のひとつですね.
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