精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける

「精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける」
 想田和弘 著  中央法規出版 1400円
⇒ 中央法規出版・書籍紹介

 ドキュメンタリーとは何かということを追求する著者が、対象にありのままに肉迫しようと事前のリサーチを一切おこなわずに映画「精神」を撮影、編集、上映される過程で起こったできごとを中心に、映画に出た当事者の方たちとの座談会や撮影場所の主治医との対話なども記載されている本です。
 座談会での「人薬が大切」という言葉や、主治医の「病院という文化に適応しているのだから社会という文化にも適応する力をもっている」という言葉の端々から、人間への信頼感が映画の撮影場所となった精神科診療所「こらーる岡山」を「こらーる岡山」として成り立たせているだろうことや、ここだからこそ、ドキュメンタリー映画の撮影が可能だったということが行間からにじみ出てきます。
 「モザイクが守るのは被写体ではなく作り手。モザイク処理は一切しない。」というスタンスを貫き誠実に実行され続けた「説明と同意」の過程や、ドキュメンタリー映画と患者治療者関係の根幹は同じという著者の認識、複数の映画祭で上映終了後の観客との質疑応答が長時間にわたった…というエピソードは胸に迫ります。

9月には県内でも映画が上映される予定とのこと。
映画「精神」公式サイト

 

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