学会長対談

第15回神奈川県作業療法学会プレ企画

「先人たちに聞く、作業療法の今までとこれから」




学会プレ企画としての学会長対談です.対談相手は特別公演にてご講演をいただく矢谷令子先生と長谷川元先生です.先人たちが語る作業療法の今までとこれからとは何か.学会での特別公演につながる内容です.先人たちのメッセージをお読みください.






◉ 水島眞由美

(第15回神奈川県学会学会長)所属:横浜リハビリテーション専門学校

SONY DSC

◉ 矢谷令子 

所属:一般財団法人日本リハビリテーション振興会理事

SONY DSC

◉ 長谷川元 

所属:特定非営利活動法人赤いふうせん理事長

SONY DSC
 




1.未曾有の中の確信

 

学会長: 日本や神奈川県を牽引されてきた先生方にお話を伺いたいと思います。長い期間作業療法士として、今でも現役としてご活躍されている先生方の今までを振り返ってみて良かった事や、楽しかった、苦労した事をお話ししていただけたらと思います。

長谷川: 私の記憶では清瀬に学校ができたのが昭和38年、理学療法士および作業療法士法ができたのは昭和40年、その当時リハビリテーションは花形だった。だけども医療の専門家に聞くと、PTは比較的知名度が高いが、OTはというと全然知られていない。私がたまたま勤めていたのが関東労災病院。その時に、整形外科の部長が、「なんでそんな法律を作ったんだ。米国がPT・OTがあるからって日本もマネをして二つも作る必要はない。」と言われた事を覚えている。こちらは意地を張って、「あくまでも違う職種である。これから何十年も経って振り返ってみて欲しい。それぞれの個性の持った職能団体、あるいは職業として成り立っていくはずだろう。」という話をしたのを覚えています。

学会長: 日本を動かされていた矢谷先生としてはどうでしょうか?

矢 谷: 社会的に苦労したと云うのではなく、まだ黎明期で戦う相手も何もないから。こつこつと一生懸命やってきたというところがありますね。長谷川先生はどうやってOTをお知りになられたのですか?

長谷川: 九州労災病院に服部先生がいらっしゃって、リハビリテーションの重要性を唱えていらっしゃった。最初は九州労災がリハビリテーションのモデルだった。和才先生、細川先生というPTが九州労災病院にいらして、服部先生と一緒に東大に来てリハビリの紹介をしていたのを覚えている。

SONY DSC




2.日本人に依る日本語のOTの教科書

 

学会長: 矢谷先生は教科書に関わっていたとの事ですが?

矢 谷: そう、日本人が日本人向けのOTの教科書を作ろうっていう話があったのですけれど、当初はまだその力量が無かったんです。で、協同医書出版社の前社長さんが、熱心な方で、医学よりも作業療法の教科書が作りたいってね、売れない作業療法の本をいっぱい倉庫に抱えて、それでも次の教科書を作るって…本当に一生懸命やって下さった。でも、出来上がる前に亡くなられて…。私はその最初の教科書を持って墓前に報告したんです。

学会長: OTの本の商売としてはまだ売れないものじゃないですか?

長谷川: ありがたいことですよ。だってね、本を出すって大変なことですよ?しかも売れない本を(笑)。

矢 谷: だから、私達作業療法士よりも、その社長さんが作業療法のことを考えてくださっていらしたということですよね。

学会長: 今もシリーズで続いていますもんね。今は養成校も増えて売り上げも違うでしょうけど。

矢 谷: 教科書も増えているので、教科書を選ぶ学校の教員がしっかりしないとだめ…。

学会長: 我々もしっかりしないと(笑)。

SONY DSC




3.教員の「教育力教育」は必須課題

 

長谷川: 学校がどんどん増えている。その中で、今は分からないけど教員不足が深刻ですよね。教員になろうと思えばなれちゃう時代が続いていた。それでは妥当な教育ができるかどうか疑問ですね。そろそろそういう時代が変わらなくてはいけない。

学会長: 他の職能団体でもありますよね。

矢 谷: OT協会が頑張って欲しいところですよね。長期講習だけじゃなく、教員の為の教育校があっても良いと思います。学位があれば良いと云うだけじゃなくてね。

学会長: 教育の立場にいて、教育者を教育するシステムってすごく重要だと思います。

矢 谷: OT協会でOTの教育者のための資格の整備を進めても良いのじゃないかと思いますね。

長谷川: もうそういう時代ですよね。

矢 谷: OTがOTの基本を教育課程のどこで学ぶかですよね。スプリントも自助具も作らない、患者さんのどこを支援していいか分からない。限りなくPTのまねをするOT…。PTはPTでOTに近づく。だから、ひとつの職業で良いってことになってしまう。でも、リハビリテーションの根底にあるものを考えると、OTもPTも車の両輪で、一緒に働きながらも、それぞれの長所を活かして協力し、専門性を発揮するから成り立つのですよね。

学会長: はい。

矢 谷: そういう考えを先生方に充分に教えてもらわないで臨床に出て、PTと同じことをして安心して、でも、かたやそれに悩むOTがいる。けれど、それをなんとかするOTがいない。そういう現状ですよね。

長谷川: そうですよね。学校の代表が集まって話をしないと。

学会長: 今は全国リハビリテーション学校協会で行われるようになりました。でも協会もそうですけど、けん引する人が少なくなっているのでしょうか?

矢 谷: 大きくなってきて、統率も難しいのでしょうが、何等かの手を打たねばと思います。

SONY DSC




4.「作業療法を行う作業療法士」が必要

 

学会長: これからのOTに期待することは何かありますか?

矢 谷: 一言で言うと、“作業療法を行う作業療法士になる”ということです。作業療法の、「作業を療法とすることができる。これが力の源なのだ。」ということを体験している人。ものを作ったりするのが嫌いっていう人が作業療法士になって、患者さんにこれ作って喜びを感じたり、生活に役立ててみましょうと云っても、自分が好きじゃないなら、所詮“作業”を手段としなくなるでしょう。

長谷川: その通りですよ。発達系では、直接子供・親・学校の先生に関わる。難しいとは思うけど、作業療法の中で、子供達に関わる理由が明快に見えてこない。作業療法士として明確に示せる力を全体が持ってほしい。

学会長: 本当の意味での作業療法が出来るような、私もまだ出来てない部分があるので…

矢 谷: やっぱり、どうやって作業療法が発展してきたかという歴史、先人達が生活の中で色々試案し実践しながら、作業と人間がどのような関係にあるかを充分に考える…。作業療法は生活の中から生まれ、生活に人間を還していく、その強みがあるはず。後輩を引っ張っていくリーダーが必要。だから5年、10年以上のベテランの教育チャンスを作りたいですね。

学会長: はい、そうですね。

矢 谷: (作業療法は)生活の中に手段があふれている。お金かけなきゃできないのでなく、生活力、人生力をつけていくものだから。そういうアイディアをふんだんに使って患者さんを引き上げ支援していけたら良いと思います。

SONY DSC




5.OTが全体で考える学会を作ろう

 

長谷川: 今度の学会では、学会長の個性を出して下さいね(笑)。

学会長: 重荷ですね(笑)。

長谷川: OTが全体で考えていこうというものを作って欲しいなと思います。そのために、神奈川県の中でどういうことをすればそれが出来てくるのか。

学会長: これからもっと発展していく若い世代にとって、古きをたずね新しきを知るといった意味でも今度の学会のテーマを“原点回帰”という形をとらせて頂きました。それで先生方にも講演依頼を。

矢 谷: 講演なんて面白くない(一同笑)。講演じゃなくて、意見交換とか、インプットしたら皆さんでアウトプットするとかしましょうよ。学会までに今の作業療法というものを客観的にみて、何が課題かを挙げてみて、作業療法士自身がどういう対策を選べるかということを考えることが良いと思いますが。問題提起できる作業療法士がいないといけない。その辺りでパンチの入った学会にして下さい(笑)。

長谷川: 神奈川県内の、新人もいればベテランもいればモノを考えないOTもいる。その中で、少しでもOTとしての役割、目標を共有できるものが作れたら良いと思います。

学会長: 貴重なお話をありがとうございました。学会に向けての課題も頂いたので、実行委員で検討していきたいと思います。本日はありがとうございました。

SONY DSC