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159号:株式会社青海社『臨床 作業療法』編集室 松岡 薫さん

“こんな人たちに会ってきた”
株式会社青海社 『臨床 作業療法』 編集室 松岡 薫さん

159号:株式会社青海社『臨床 作業療法』編集室 松岡 薫さん 今号の「こんな人に会ってきた」は、隔月刊誌『臨床 作業療法』を出版している、㈱青海社の松岡薫さんのもとに取材に行ってきました!
 筆者は去年、知人の作業療法士の紹介で、『臨床 作業療法』のリレーコラムを執筆する機会を得ました。その時にお世話になったのが、編集室の松岡さん。コラムの編集・校正作業などのやりとりを通して、一般には、まだまだ知名度が低い作業療法の分野に、出版社としてどのようなスタンスで関わっておられるのか興味が湧き、青海社さんのご厚意で、今回の取材へと至りました。

Q.まずはじめに日々のお仕事の内容について教えて下さい。

 私の仕事は、隔月刊誌『臨床 作業療法』や各種書籍の出版制作業務です。具体的には、執筆される先生方への依頼や事務連絡、校正・編集作業や印刷所とのやりとりなどの業務を、主に担当しています。その他、日本作業療法学会をはじめ、作業療法に関係する学会・研究会の取材をして、見聞を広めています。

Q.年間でどのくらいの人数の作業療法士と関わるのですか?

 そうですね、雑誌でお世話になる先生は、毎号40名程です。そのうちの半分くらいが連載の執筆者の先生方ですので、年間6冊発行する中で140名程の先生方とやりとりしています。取材では、実際にお話を伺い、記事として掲載させていただくこともあります。直接・間接的に作業療法士の方の専門とするところを聞かせていただいたり、いつも作業療法への熱い思いを感じ、興味深く仕事をさせていただいています。

Q.初めて作業療法を知った時の事や、『臨床 作業療法』に携わるようになった経緯について教えて下さい。

 初めて作業療法のことを知ったのは、高校1年生の時に、同級生が「将来は理学療法士か作業療法士になりたい」と話しているのを聞いた時です。私は文系でしたが、作業療法については、「理系のお仕事」「歩行訓練や機能訓練をする」というイメージでした。

 私は「隣のトトロ」に出てくるような田舎で生まれ育ったのですが、東京の大学に進学し、そのまま東京で就職活動をしました。昔から本が好きで、将来は出版の仕事に就きたいと思っていて、就職活動の時にも、活字に接したいという気持ちは変わりませんでした。青海社が出版しているのはリハビリテーションや緩和ケアの雑誌、書籍が中心です。障がい者やターミナルの方に気持ちを寄り添わせて、その人がその人らしく生きていくお手伝いをするという医療分野に関われるところが、初めに惹かれた点のひとつです。そして入社してからすぐ、『臨床 作業療法』に携わりました。

Q.出版に携わる大変さやおもしろさはどういうところですか?

 業務の大変さといわれると正直思いつかないのですが、『臨床 作業療法』は隔月刊誌で、かつ特集のテーマを刊行の1年前に決めるという雑誌の特性上、情報のスピードには気を遣っています。一方、専門誌の特性として、読者と執筆者の多くが同じ作業療法士というところはおもしろいですね。執筆していただいた方や本誌の読者の方に、学会の会場でお会いすることもたびたびあり、距離がぐっと近づく気持ちになることがあります。

 学会・研究会という集いの場もありますが、活字という手段を通して、作業療法士のコミュニティづくりにも貢献できればいいですね。病院や施設の作業療法部門に1冊備えられていることもありがたいですが、「読みたい」という個人に支えられ、大切にしていただける雑誌づくりも目標にしています。

Q.それでは今回の本題、作業療法について、どう感じられていますか。

 実際に文献や作業療法士さんと接するようになって、高校生の頃の印象とは大きく変わってきました。ある尊敬する作業療法士さんとお話しした時に、「出版と農業は似ているね」とおっしゃっていたことがあったんです。「目の前にいない誰かの笑顔を思いながら物を作る点が似ている」ということで、なるほどと思いました。私は、別の点で「作業療法と農業も似ている」と感じています。人にもよりますが、種を蒔き続けて、少し経ってからやっと芽が出、実を結ぶまでにさらに時間がかかることもあります。また、作業療法は目には見えないところが多く、一般の方の理解につなげるには、大変な点も多いかと思います。

 人にはそれぞれ生きる力を与える源があると感じています。千差万別のその“いのちの源”に寄り添って支援する作業療法は、息をするというだけでない「生きる」という意味を何よりも捉えているようで、共感と感動を覚えています。

Q.最後に、これからの作業療法や作業療法士に期待することなどを教えて下さい。

 現場の先生方は、日々ご自身の専門性を深めておられて素晴らしいなぁと感じています。スペシャリストとしての側面が大切な一方で、作業療法の目的は「人の営みを具体的に支援すること」という側面も大きいかと思います。そのため、若手の先生方は、所属先以外での実践や別分野のことにも興味を持ったり、作業療法の歴史や対極を知るなどして知見を深め、幅を持たれる活動も大切なことなのかなという印象を持っています。もし、私自身が作業療法の支援を受ける立場になった時には、そんなジェネラリストの作業療法士さんに出会いたいと願っています。

 『臨床 作業療法』では「編集部が見つけたキラリ発表」という、学会発表の内容をご紹介するコーナーがあります。そこでいつの日か、学会の会場などでお会いして、所属されている病院や施設でのユニークな実践のご報告をお聞きしたり、お話できることを楽しみにしています。また、会場でお声掛けいただければ嬉しいです。

 大変なことも多いと思いますが、神奈川県の作業療法士さんに、「いつもそばにいてくれるような作業療法士さん」として輝いてほしいなと思っています。

おわりに

 今年『臨床 作業療法』は創刊10年目になるそうです。取材終了後に、代表取締役の方と一緒に懇親会をさせていただいた席で、この雑誌や作業療法に対する熱い思いを、たくさん聞かせていただきました。作業療法の役割や、作業療法士の仕事を理解してくださっている心強いサポーターに巡り合えた喜びに浸る反面、作業療法への情熱に関しては、私たちもうかうか負けてられないなと感じました。

 今回の取材を通して、1人の作業療法士として、これからも心強いサポーターの協力を得て、神奈川の作業療法を魅力的なものにしていこうと心に決めました。青海社の皆さま、ご支援、ご協力ありがとうございました。

青海社HP:http://www1.tcn-catv.ne.jp/seikaisha/

(文責:本間)

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