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153号:第6回 モンゴルの基礎情報と私が感じたモンゴル

執筆者近景 現地語学訓練を終え、とうとう仕事が始まった。今回は、私がこれから働く国モンゴルと、配属先の病院、そこで求められている活動についてちょっとだけご紹介。

モンゴル

 モンゴルと言えば?モンゴルに行くことが決まった約1年前、私がモンゴルに抱いていたイメージ、それは、草原、遊牧民、そして、…。それ以上はいくら考えても出てこなかった。周囲の人に聞いても、だいたいみんな似たり寄ったりで、相撲やゲル(円形のテントのような住宅)が加わった程度。TVで、マンホールチルドレン(マンホール生活をするストリートチルドレン)なるものを見たという人もいたけど、それも数年前の話で現在はどうなのだろうか。

 まず、モンゴルの基礎情報はというと、正式名称はモンゴル国。国土の面積は約156万4千㎢で日本の約4倍。人口は約278万人(2010年)で、国土面積を考えると非常に少ない。首都ウランバートル(以下UB)の人口は約115万人で、約40%の人口が首都に集中している。民族は約95%がモンゴル人でその他カザフ族などの少数民族もいる。言語はモンゴル語、宗教はチベット仏教。1992年に民主化し、大統領制へ移行。民主化以降、経済は壊滅的状況に追い込まれたが、近年は豊かな鉱物資源等を背景に経済成長が著しい。失業率約3.7%(2010年)と単純に数値だけで比較すれば、日本よりも失業率は低い。

 実際に、来てみてどうだったか。UBは、高層ビルの建設ラッシュ。道には高級車も多く走っている。現在は、年末パーティーシーズンであり、街中はプレゼントや衣装、きらびやかな電飾であふれている。何だか勢いがある国なのだ。物価上昇も著しく、正直、私のお財布は苦しいです…。年末のパーティー代として配属先から徴収された金額は私の1カ月分の昼食代と同じ額で、びっくりして目の玉が飛び出て落っこちそうたったほど。羽振りいいなあ、と思ってしまう。マンホールチルドレンは?周囲のモンゴル人に聞いてみると、消えてしまったとのこと。
 しかし、経済が急成長しているモンゴルでも経済格差は大きい問題となっており、マンホールチルドレンは未だいなくなってはいないという記載もある。とはいえ、様々な国内外による対策により激減したことは確かなようだ。私の行動範囲が限定的なことも関係あるだろうけども、今のところ私は全く目にしてない。モンゴルへ来てから間もないため、解らないことも多いが、これが私が今、直に感じているモンゴル。これから、少しずつモンゴルのことを紹介していけたらなあ、と思う。

国立外傷病院(配属先)

 病院と研修センター機能を持つ外傷・整形治療の病院として設立され、手術科、リハビリ科、トレーニング研究科等10科併設。病院全体の年間患者数は約6千~8千人、400床。リハビリ科には医師4名、看護師10名が在籍。看護師による物理療法や運動療法が行われている。

 病院では、事故等による治療のため、頻繁に手術が行われている。しかし、術後の症状に合わせた適切なリハビリテーションが行われていないために運動機能に障害が残る患者が出ているのが現状だ。そのため、理学・作業療法による専門的な治療・訓練が必要とされる。
 しかし、現在、モンゴルでは、それらに関する専門家の数や技術が十分ではない。私に求められるのは、スタッフの専門的知識・技術向上のため、協働しながら技術移転することだ。現在、JICAからはPTも派遣されており、協力しながら活動を進めている。詳細は、また次号以降でゆっくりと!

おまけ:モンゴル語のあいさつ

サインバイノー
直訳すると、「ごきげんいかが?」転じて、「こんにちは」。昼夜問わず使える。
あいさつへの返礼は「サイン!(いい感じ)」と。その後、こちらからも「サインバイノー」。


青年海外協力隊 平成23年度1次隊 堤由貴子

 大学卒業後一旦就職するも、退職。その後、作業療法士資格を取得し、都内の病院へ3年間勤務する。平成23年9月より協力隊員としてモンゴルに赴任。現在、首都ウランバートルの国立外傷病院にて活動中。


青年海外協力隊とは

 JICAボランティア事業は日本政府のODA予算により、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する事業です。開発途上国からの要請に基づき、それに見合った技術・知識・経験を持ち、「開発途上国の人々のために生かしたい」と望む方を募集し、選考、訓練を経て派遣します。その主な目的は、(1)開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与、(2)友好親善・相互理解の深化、(3)ボランティア経験の社会還元です。(JICAホームページより)

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153号:神奈川障害者職業センター

リワークプログラムを専門的に行っています
 ここ数年でうつ病は大きな社会問題となっており、映画やドラマでうつ病を題材にしたものを見た方も多いのではないでしょうか。
 そんな中、精神科デイケアや外来OTでも気分障害に対する利用者の割合が多くなっており、中でも職場でのストレスといった様々な理由で休職しての利用者が増えています。デイケアで復職(以下「リワーク」)に向けてのサポートをする中、リワークを専門に取り組んでいる専門機関の存在を知りました。
 今回、リワークプログラムを専門的に展開している神奈川障害者職業センターに行ってきました。神奈川障害者職業センターでは精神障害者総合雇用支援の中でリワークの他に新規雇用・就職に関するニーズとしての雇用促進支援や雇用継続に関するニーズとしての雇用継続支援を精神障害者と事業主を対象に行っています。(表1)今回の取材ではリワークに対する職場復帰支援に焦点を当てて紹介します。相模原市の閑静な住宅街の中にある神奈川障害者職業センターにてリワークカウンセラーの湯田さんにお話を伺いました。

153号:神奈川障害者職業センター 表1

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利用者の9割近くの方が職場復帰されています
 神奈川障害者職業センターは独立行政法人である高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しており、各都道府県に最低1ヶ所の地域障害者職業センターを設置しています。リワーク支援事業は平成17年から開始され、企業の産業保健スタッフ、人事、総務、主治医等からの紹介や、個人によるインターネット検索からの利用もあります。年々利用者は増えており、再発を防いでスムーズに復職し、職場定着ができるための準備を整えることを目的として平成22年度には、約70社の方がプログラムを利用しています。そのうち9割近くの方が職場への復帰を果たされているとのことでプログラムの成果が出ている結果と感じました。

153号:神奈川障害者職業センター 表2

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 期間は3ヶ月でウォーミングアップコースが1ヶ月と本コース2ヶ月となっています。詳しい内容は表2を参照して下さい。ウォーミングアップコースは週5回の実施で体調管理、スケジュール管理を中心に行います。プログラムを2回休んだら本コースに進めない場合もあるとのことで、厳しい条件になっています。本コースではグループワークが中心で、同時期に10~20名のグループで実施しています。午前と午後の2コマで行われています。月曜日から金曜日まで様々なスケジュールが組まれています。(表3)
153号:神奈川障害者職業センター 表3

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私が伺った時にはグループミーティングを行っていました。(写真1)参加している方の意欲が伝わり、様々な意見が出され、活発に議論されていました。最初は発言もまばらとのことですが、回数を重ねるごとに熱の入ったものになるとのことです。
153号:神奈川障害者職業センター 写真1

写真1:クリックで拡大されます

デイケアに求めることは基本的な体力、生活リズムの構築
 最近のリワークに求められる傾向として、1.フルタイム復職を想定した体力、生活リズムの構築 2.再発予防の為の振り返り 3.ストレス対処法の習得 4.職場での対人スキルの向上 5.通勤力、の5点について話がありました。
 この中でも、すべての基盤となる①の「フルタイム復職を想定した体力、生活リズムの構築」が特に重要であり、ここをデイケアで築いていけるとプログラムが円滑に進むとのことです。
 つまり、働く力の構造として健康管理の力と日常生活の力を養うことが大切ということです。(図1)実際に早めの就寝、リワークを想定した起床、身支度、デイケアに通所するならば朝から週5回、半日以上での外出リズムなどが構築できているとリワークが始まっても疲れが出にくくプログラムに集中できるとのことです。反対に今は起きることができないけれど、予定がないだけ。リワークが始まれば多分行けるだろうという考えですと、結果として遅刻、欠席が多くなり、復職後の安定が見込めず、復職判定にも不利に働くようです。後者のようにならないためにも、リワークプログラム前の準備をするステップはデイケアでの大切な役割であると感じました。
 さらにデイケアを利用する中で人間関係を築けたとの話もありました。コミュニケーションに対して自信を失っている対象者にとってデイケアは人と関わる上でストレスや煩わしさを感じすぎない中で、対人関係を築ける適度な環境なのだと思いました。

153号:神奈川障害者職業センター 図1

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職場だったらどうなのか?想定した視点を持って欲しい
 今回の取材でリワークプログラムに入る事前準備として精神科デイケアなどの医療機関が携わることが大切であることを知りました。
 そのような中でOTに求めることとして「利用者が復職された時に、職場の方にも受け入れられる対応をなさっているかどうか、という視点を持って支援をして頂けると、復職後のコミュニケーション等にも効果的です」と湯田さんから話がありました。
 具体的には職場の環境を想定して話を聞きながらメモを取ったり、報告、連絡、相談といった行動、社会に適した整容といった部分を行うことでリワーク後に活かされるとのことです。私自身、OTとして利用者と雇用者側の視点に立った復職へのサポートと共に、その方の長所を見出して復職につなげていけるような評価もできればと思いました。そのためにもリワーク全般に対する知識や技術をさらに高めていく必要があると感じました。
 様々なニーズの利用者があり、リワークに特化した対応をするには専門的なデイケアでなければ限界があるかもしれません。しかし、今回の取材を通して神奈川障害者職業センターと連携する場合はデイケアでのリワークに対する援助の視点が明確になったと感じました。
 リワーク支援を受けるためには利用者、雇用事業主、主治医の3者の協力が必要です。支援を受ける費用は無料で現在休職中であり、雇用保険に加入していることが条件となります。詳しいことはホームページにも掲載されていますので、是非ご覧になって下さい。(文責:千葉)


神奈川障害者職業センター
神奈川県相模原市南区桜台13-1(小田急「小田急相模原」駅北口1番乗り場より「北里大学病院」、
「JR相模原駅」、「町田バスセンター」行で「第一住宅」下車 徒歩1分)
電話:042-745-3131  URL:http://www.jeed.or.jp

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