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136号:就労支援施設特集~その2「港風舎」

 就労を支援する施設を取材している、隔号連載企画の第2弾です。

<港風舎について>

 港風舎は、新横浜駅から徒歩10分のところにある横浜市総合保健医療センター(以下センター)内にあります。センターは、介護老人保健施設、診療所、精神障害者支援施設(デイケア、就労訓練、生活訓練、精神障害者就労支援センター)を持つ福祉施設です。(「港風舎」は今まで精神障害者通所授産施設でしたが、この4月1日より、自立支援法の就労移行支援事業所に移行します。)

●「港風舎」の利用者は精神病圏の方で、統合失調症7割、その他うつ病や、てんかん、不安神経症等の方もいます。(アルコール依存等の方はご利用できません)
●開所時間は月~金曜日9時~16時ですが、今後の就労目標により、自由に通所日数設定ができます。
●現在の登録者は25名(6ヵ月コース20名、短期評価コース5名)で、職員は施設長1、CP:2、PSW:1、OT:1、印刷指導員1の6名です。
●作業種目は、印刷・製本作業(名刺、チラシ、冊子の印刷、検品、納品発送、請求事務)と請負軽作業(携帯電話関連部品、検診検査台紙シール貼り、DM封入発送、医療機器部品作成など)が中心で、その他事務等の課題作業や、物流センター内での企業内訓練もあります。
イメージ_1●「港風舎」にはA.6ヵ月就労訓練コース(原則6ヵ月、最長1年)とB.短期評価コース(1ヶ月)の2つのコースがあります。A.6ヵ月就労訓練コースの目的は、6ヵ月以内で一般企業での就労を目的としており、約3ヶ月を目途に就労条件の設定から職場開拓→職場実習(約1ヶ月間)→雇用という流れになっています。実際に6ヵ月以内で就労される方もいますが、現在は経済不況も影響し、職場開拓の段階で時間がかかってしまっているのが現状です。B.短期評価コースは、1ヶ月実際に作業訓練をしてみて、働くために必要な基礎的評価をし、その後の就労をどのように行うか、考える材料としています。
●評価は、作業を通しての作業能力評価の他に、病状の自己管理、通勤態度、精神的な力、体力、状況判断、社会性、労働力などを総合的に評価し、その方が今の力で無理のない範囲で働ける条件設定を行います。

 今回は実際に就労支援に関わっている、作業療法士の馬場さんにお話を伺いました。

<まずは…Q1 誰もが気になる就労率はどうなっていますか?>

 就労率は平成16年度30%、平成17年度50%、18年度59%、19年度53%です。平成16年度までは訓練期間を1年(最長2年)としてきましたが、17年度より、訓練期間を原則6ヵ月(最長1年)に変更し、より集中した実践的な評価訓練システムに変更したところ、就労率が向上しました。残念ながら期間内に就労に至らなかった場合には、作業所やデイケアで働く基礎作りを目標として訓練される方もいます。また、平成17年度から精神障害者就労支援センター(以下ぱーとなー)が併設され、ぱーとなーと連携し積極的な職場開拓や定着支援のためのジョブコーチ支援などを行ったことも就労率向上につながった要因の一つです。

<Q2 どんな目標や目的で利用される方が多いですか?>

 もちろん一般企業での就労が目標です。訓練を終えて就労される方は皆一般企業で働いています。(福祉的就労の例はありません)また、復職を目指す方もいます。短期評価コースは、働くためのウォーミングアップや、現在の力を試すために利用される方も多いです。

<Q3 どんなところへ就職するのですか?>
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 精神障害者の方の独特の疲れやすさや、認知機能障害のために多工程の同時遂行が難しい方が多く、大多数の方が日数と時間が一致し、比較的少ない工程でできるパート・アルバイト雇用から働いています。たとえば工場での製造ラインや野菜の袋詰め、ピッキング、スーパーのバックヤード、清掃、社員食堂での下膳など多種多様です。その他、その方の持つ能力によって、事務系作業や、調理などの多工程の仕事や、契約社員という形態で働く方もいます。

<Q4 訓練での、利用者とOTの1日の流れを教えて下さい>

8:55
利用者Aさん:タイムカードを押す
OT:利用者さんの状況確認(出欠や状態など)

9:00
利用者Aさん:朝のミーティング(今日1日の作業確認),体操
OT:指示に対して返事や頷きをして返答する、積極的に聞いているか、働く準備態度などを見ます。

9:10
利用者Aさん:作業開始。今日は名刺の印刷が2版あり。他メンバーB氏との共同作業。機械設定から、インクを馴染ませ、版を作り、印刷開始。時間内に無事2版印刷を終え、機械洗浄。
OT:指示理解、作業の流れの理解、機械操作の理解、共同作業での役割分担、トラブル対処、状況判断などなど必要に応じての介入や、評価をしています。印刷機械だけではなく、他約20名の利用者それぞれの軽作業や課題作業を見て、指導や指示に加え、次に行う作業準備をしています。

12:00
利用者Aさん:お昼休憩
OT基本休憩。作業準備や個別面接をする時もあり。

13:00
利用者Aさん:午後の作業開始。軽作業に入る。(この日は携帯電話画面保護シートの値札貼り、検品、数え、PC入力、納品のため車へ荷積み)
OT:シールの貼り方一つをとっても、どうすれば作業効率が上がるかの工夫を指導しています。また効率の良い物品の置場や動き方、指示の聞き方やタイミングなども指導することがあります。

15:50
利用者Aさん:清掃
OT:自主的に動けるか、状況を見ているかを見ます。

15:55
利用者Aさん:帰りのミーティングで作業報告
OT:順序立てて説明をする、仕事の全体像の理解や、疲労度を見ています。

 この日は施設内での作業中心の日でしたが、企業内訓練において実践的な場所での訓練や、就労セミナーなどの座学の他、工場見学などに行くこともあります。

<Q5 最後に、他にはない「港風舎」のウリは?>

イメージ_3 就労に向けて「今の力で働く」ことをコンセプトに、利用者さんの就労という目標達成に向けて訓練・評価を行っています。短時間に実践的な評価を出し、“今できる就労”を見つけ出します。
 港風舎では、名刺・チラシ・封筒・冊子などの印刷や、ダイレクトメール封入発送、組み立て、検品などの、一般施設・企業・個人からの外注作業を随時承っております。お見積り無料です。お気軽にご連絡ください。
TEL:045-475-0138 FAX:045-475-0338 メール:kohusha@yccc.jp

<取材をしてみて…>

 私は今回、利用者の方々が受けられる支援が、港風舎内にとどまらず、ぱーとなーや一般企業などの様々な機関と有機的な連携によって行われ、それにより大きな効果が上がっている事を改めて実感し、他機関や地域と協同し包括的な支援を展開するノウハウ・技術が、私たち支援者に必要であると思いました。最後に、年度末であり、また法内施設への移行に伴うご多忙な時期にもかかわらず、取材から記事の確認まで快く引き受けて頂いた馬場OTRに感謝申し上げます。ありがとうございました。

文責:田原

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136号:環境をつくることの大切さ

イメージ_136 昨年の夏に、“多言語で話そう”をテーマにしたサークルに家族で参加するようになりました。
 始まりは、『息子に語学を身につけさせたい』『家族で共通の何かをしたい』という思いからでした。 そのサークルとは、色々な国の言葉のCDを家などで聴いて、サークルの場でいろいろな国の言葉で話し、ホームステイなどの国際交流も積極的に行っているというもの。
 そのサークルの参加者いわく、ただその多言語の環境に身をおいているだけで色々な国の言葉がしゃべれるようになるということで、かなり『怪しい~』と思いつつもなぜか気になって入会してしまいました。

 サークルに参加してから、インド人のホームステイを受けたり、私自身、色々な国の言葉を覚えようとして少しずつ身になってきた感じですが、息子はサークルの人たちと遊ぶことをただ楽しんでいるだけ。
 それが最近、息子に変化が現れました。突然、英語のCDのフレーズを聞き取って日本語の訳を言ってくれたり、私と一緒に中国語のCDのフレーズを言ってみたりと、溜まっていたものが溢れるようにポロポロと多言語が出てくるようになりました。

 そんなことをきっかけに、環境から学ぶことの大切さを改めて感じました。そういえばリハビリも同じで、よりよい回復のための環境づくりを心がけて患者さんと接しています。人間が本来持っている環境に馴染む能力を利用した手技もあります。嬉しいことは、大人も子供も同様にその環境に馴染む能力が備わっているということ。私にもまだまだ成長の可能性があるということです。
 息子の言葉の成長を楽しみつつ、まっさらで純粋な息子のスポンジのような吸収力にすぐに私は追い越されてしまうだろうと考えると、「負けてられない」と奮起する今日この頃です。

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