メンクスメンタルクリニック 音楽バンド「All For One」
先日、統合失調症など心の病を抱えた方が音楽バンドを結成して音楽活動をしているとの話を聞きました。とりわけデイケアを中心としたプログラムの中で音楽活動をしている音楽バンドはあるかと思いますが、今回取材に伺った音楽バンド「All For One」は障がいをオープンにしながらも地域のイベントなど一般の方々を対象としたコンサートを積極的に行っているとのことで興味を抱きました。
All For Oneは横浜市都筑区にあるリンクスメンタルクリニックのデイケアに通うメンバーさんが結成した音楽バンドです。当初は2人から参加し、一時は7人まで増えました。私が取材した時は男性3名、女性1名で活動しており、ボーカル、ギター、キーボード、パーカッションで構成され、歌う曲によって担当を交替していました。
All For Oneが結成されたのは5年前で、「きついリハビリも好きな音楽を行うことから前向きになれるのでは?」との思いから。練習はデイケアの一室を使用しています。メンバーの中には週1回のみの参加の方がおり、メンバー全員で合わせる時間はたくさんありません。そのような限られた時間の中で各メンバーが工夫をしながら取り組んでいます。当初SMAPの「世界に一つだけの花」などメジャーな曲をコピーしていましたがそれだけでは満足できなくなり、1年半前からはオリジナルの曲作りがスタートしました。友人の悩んでいる気持ちに対してエールを送る「大丈夫、あきらめないで」が一番最初に作った曲で、人との関係を築く戸惑いや難しさを歌った「ふたりはトモダチ」など今では多くのレパートリーを持つまでになりました。活動はデイケア内だけにとどまらず、高齢者施設や児童養護施設、地域のイベント参加にまで広がっています。その後、昨年末にはCDを製作すると共に市販のオムニバスCDにも曲が取り入れられるなど、様々なチャレンジをしながら前向きに頑張っている様子をつぶさに感じました。 取材での院内コンサートはデイケアのメンバーさんと一体化し、とてもアットホームな雰囲気を感じました。初披露のオリジナル曲を含めて約1時間。コピー2曲、オリジナル5曲を気持ちをこめながら熱唱していました。オリジナルの曲はどこか自分達の内的な側面を素直に表現しているような印象でした。途中で楽器の弦が切れるハプニングなどもありましたが、焦りすぎることなく無難に対応されていました。
コンサート中にMCもあり、自分達の熱い気持ちをデイケアのメンバーさんである観客に伝えていました。その中であなたにとって音楽とは?との質問がありました。All For Oneメンバーは「生涯の友」「生涯掛けて音楽を極めたい」と話され、音楽に対して真摯に取り組む姿勢が感じられました。コンサートは大盛況のうちに終了しました。
メンバーの皆さんには音楽活動を行っている中での気持ちについて語ってもらいました。
「ストレスもあるけど、音楽で発散している」
「辛いことがあっても続けることが音楽を共有する中ではできている」
「みんなが集まって同じ目標に向かうことは苦しいこともあるけれど楽しい」
「仲間がいるからこそ音楽ができると思う」
「今回のライブ1回限りの参加で、練習の3~4ヶ月間は苦しいこともあったけど、メンバーのみんながいるから楽しめた。助けてくれた。自分としては良い思い出になった。良い仲間だと思う」
次に音楽活動を通じて心の病を持っている方や健常者へ伝えたいことを話して頂きました。
「今までの自分が通った道を作詞して、その気持ちを伝えたい」
「作詞をしていると悩んだりしていることがわかり、一緒に生きていこうと伝えたい」
「好きなことや興味あることをやっていたらいいことがありそうな気がする。人間関係は難しいけど、音楽を媒介にすれば伝えられる」
「(心の病を持った人は)ピュアな方がたくさんいる。ポジティブなメッセージを発信したい。自分の可能性に気付いていない方に頑張って欲しい。応援歌のようなもの」
と音楽を通したメッセージを通じて、自分達の気持ちを伝えていきたい様子が感じられました。
その中で、メンバーの一人がとても印象的なことを話してくれました。「(音楽を作る上で)健常者、障がい者という枠組みで考えるという感じではない」
障がい者、健常者と線引きをせず、同じ人間として音楽を通じてメッセージを伝えているとの見解に、障がい者と健常者でわけていた私自身の質問は意味をなさないことに恐縮しました。
この部分にメンバー共通の最大目標として掲げている「障がいの有無に捉われない、ココロの交流」があると思います。メンバーの皆さんは自分達の障がいにとらわれず、率直に自分が伝えたいことを音楽を通じて伝えているのだと確信しました。それは彼らが音楽を通じてリカバリーされた結果なのかもしれないと感じました。「音楽を行うことで生活リズムが整ってくることを実感した」との話も聞かれ、音楽が生活の一部となっていることで、人生そのものが潤っているように思えました。
私たちOTは様々な治療を通じて社会に貢献していますが、院内に留まって働くOTが多いことが現状です。ここ数年は地域リハ推進に向けた動きがクローズアップされています。地域に対する活動を盛り上げていく中で、障がいに対する偏見や差別を低減していくこと、そのためには地域の方々への障がいに対する理解、啓蒙が必要です。心の病をオープンにしながらリカバリーされている「All For One」のような方が地域で活動することが社会に対して障がいという障壁を低くするものと感じました。
障がいに携わるOTが地域に目を向け、より当事者の方が過ごしやすい社会を作り上げていくこともリハビリ職として大切なことではないかと思いました。
All For Oneホームページ(リンクスメンタルクリニック):http://linksmental.com/
問い合わせE-mail:all-for-oneアットマークlinksmental.com
興味のある方、応援して下さる方、なんでも結構です。お気軽にお問合せ下さい。
アメリカで1980年代後半より登場し始めた概念
そのプロセスは多様多種であり、様々な定義が多くの当事者や専門家によりなされている。
- 病気からの回復ではなく、人々の偏見、精神医療の弊害によりもたらされる障害、自己決定を奪われること、壊された夢などからの回復である。
- リカバリーはプロセス、生活の仕方、ものの見方、その日のチャレンジへの対応の仕方である。
- それは完全に直線的なプロセスではない。時にそのコースは一定せず、我々はつまずき、後戻りし、まとめなおし、そして再び始まる。
- 障害の限定を越えた新たな、そして価値のある全体感を再び築き、目的を見直すことが必要である。
- そのインスピレーションとは、その人が大切な貢献をしている地域の中で生活し、働き、そして愛することである。
もう少しわかりやすく表現すると‥‥
なりたい自分(自分らしさ)を見つけて(探して)慣れ親しんでいるやり方、生き方から自分が本当に望んでいることに向けて、一歩ずつチャレンジしていくこと
編曲 相沢暁
君の痛み 恐れ 悲しみ その規制
雷によって 仕切られた 世界
触れれば 虫に刺された 腫物
掻きたくないのに 掻いてしまう 厄介者
爪でバッテンを つくってみるけど
ほんとはわかってる
あったかい あったかい お湯が一番だって
※1
JUST YOU ARE JUST YOU ARE
そのまんまでよかった
WAIT FOR ME WAIT FOR ME
きみのとこまでゆくから
どうしたら 君と共にいられるんだろう
追いかけるけど 虹の色 WOW
見えないバリア はってあるから
少し鉛筆 指でまわして 考える
こころ 理解すること できないけれど
ほんとはわかってる
となりで君は 菓子をかじって 笑っているから
※2
どこまでいっても ふたりは平行線
わかって? わかりたい!
ふたりはトモダチ
こころ 理解すること できないけれど
ほんとはわかってる
君と僕は 同じことで 笑い合えるから
※1
※2
編曲 相沢暁
君の探してる 答えはみつかったかい?
君の悲しみ 涙になって流れたかい?
君の心の 深い願いはかなったかい?
君の心の いたみは癒されただろうか?
答えはいくつもの星のように 目の前に輝いていて
そのどれかを 今 君は選んでる
その星がやさしい光であるように
ぼくはいつでも 祈っている
どんな さみしく 孤独の中 たとえ星などないと 泣く夜も
いつでも星はあるんだよ ただ ただ 輝いているんだよ
だから 君は ぜったい 大丈夫
君はボロボロになって 声いっぱいにして
なげかけてきた「もう 終わりにしたい」
でも そのとき 夜空の星々が 流れ星となって
美しいものはまだ あるんだよ あるんだよ
答えはいくつもの星のように 目の前に輝いていて
そのどれかを 今 君は選んでる
その星がいつでも どんな時も
新しいはじまりをつげている
どんなに つらく 長い夜の中 たとえおわりに 感じても
いつでも星はあるんだよ 新しい冒険が待ってるよ
だから 生きることを あきらめないで
君の探してる 答えはみつかったかい?
君の悲しみ 涙になって流れたかい?
君の心の 深い願いはかなったかい?
君の心の いたみは癒されただろうか?
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