今回は、放課後等デイサービス事業所で地域に根ざした障がい児支援に取り組んでいる方にスポットを当てます。現在に至るまでの経緯や、特色ある魅力的な取り組みについて綴ってくださいました。
遊びリパーク lino’a(リノア)
大郷和成さん
出会ったセラピストに必ず聞かれる質問があります。
「小児分野の経験があるんですか?」「小児に興味があったんですか?」
答えはどちらもNO。
貴重な機会をいただけましたので、私の想いと取り組みをお伝えしたいと思います。去年の8月までは、横浜市戸塚区にある新戸塚病院で副技士長として働いていました。また、促通反復療法の講師としても活動しており、去年の県学会ではシンポジストを務めました。このような経歴からは「障がい児」がみえてこないので、上記の質問をしたくなるのは当たり前ですね。
そんな私が障がい児の活動に従事することになったきっかけは、「障がい児を取り巻く環境は不公正であり、支援も十分ではない。そのような状況を解決するため、作業療法士として力を貸してほしい。」という、現在所属するNPO法人の理事長からの声かけでした。聞けば聞くほど、作業療法士の『必要性』と『可能性』を感じました。元々、『作業療法士の専門性を活かして人と社会の役に立ちたい』という想いを軸に仕事をしていた私。障がい児を取り巻く社会的不公正を解決すべく新たなチャレンジをしよう!と決め、経験のない分野に飛び込むこととなりました。
そして去年の10月に、放課後等デイサービス「遊びリパーク lino’a」(以下、リノア)を立ち上げ、神奈川県藤沢市の辻堂団地で運営しています。放課後等デイサービスとは、学校通学中の障がい児が通う「障がい児の学童保育」と呼ばれており、児童福祉法に基づく障害時通所支援事業所となります。
リノアは主に肢体不自由児を対象に、『4つの想い』を形にすべく活動しています。
- ありのままを受け入れる『居場所』であること
- 安心してチャレンジできる『安全基地』であること
- 子どもから大人まで楽しめる『遊び場』であること
- 社会で生きる力を身につける『学び場』であること
これらの想いを実現するため、子供同士が自然に遊びだせる空間と機会をつくることが作業療法士の大きな役割となっています。
ここからは、リノアの取り組みを紹介させていただきます。
「運動機会の確保」
広い空間を活用し,集団での運動遊びなどを楽しんでいます。また,免荷器具を使用した感覚統合療法なども取り入れており,発達段階に応じた個別トレーニングも行っています。
「交流機会の創出」
リノアでは地域高齢者を対象にしたヨガ教室や子連れの主婦が参加できるダンス教室など,地域の健康づくり活動も展開しています。それらを通して、地域住民と障がい児が交流をもつ機会をつくっています。
「社会体験の場づくり」
地域資源を活用して,買い物体験や地域貢献活動などを行い,社会で生きる力を育んでいます。6月には事業所内でマルシェを開催し、地域の方々がネイルサロンや漢方茶の相談などのブースを出展。リノアを利用している子供たちは、カフェでパフェづくりや売り子など就労体験をしました。
一般の子供たちは、学校や習い事を通して様々なことを学んでいきますが、障害をもつ子供たちは、一般の子供たちと隔離され、子供同士で遊ぶ機会が極端に少ないです。だからこそ、子供たち同士が自然に遊びだせる空間をつくることが大事です。「人」「作業」「環境」を焦点に人と社会の役に立てる作業療法士こそ、もっともっと地域に根ざした活動を展開していけると思っています。これからも地域の人とのかかわりを通して、子供たちが当たり前の経験を積み重ねる機会を創っていきます!
見学はいつでもOK!ボランティアも募集中です!興味のある方は電話もしくはメールにてご連絡ください。
〒251-0046 神奈川県藤沢市辻堂西海岸2-10-3-1
e-mail:info@laulea-linoa.com
TEL:0466(86)7120 担当:大郷、横川
今回は放課後等デイサービス事業所で、作業療法士の強みを存分に活かし、地域も巻き込みながら障がい児支援を展開している方にスポットを当てました。いかがだったでしょうか。今回特集させていただいた事業所の見学については、福利部主催の「職場見学会」にて参加者を募集します。たくさんの方々のご参加をお待ちしています。
また、皆さまからのご感想やご意見も募集しております。県士会福利部<fukuriアットマークkana-ot.jp>まで是非お寄せください。
今後も特色ある取り組みをしているOTさんを特集していきたいと思います。ご期待ください!
文責:福利部 松岡太一