今年度は「地域で活躍するOT」をテーマとし、第1弾は精神障害者のグループホームを運営している方にスポットを当てます。精神科病院の勤務を経てグループホームの立ち上げ・運営に至った経緯や現状、やりがいを綴ってくれました。
私は現在、横須賀市でグループホームを運営している者です。作業療法士免許取得後、病院勤務を経て、独立開業致しました。簡単ではございますが以下にその経緯や、日々の業務の様子などをまとめさせていただきます。
私は学校卒業後、7年ほど精神科病院の院内作業療法を担当する一作業療法士として勤務してまいりましたが、自分の力量不足のため、日々の業務をこなすのがやっとの状態であり、「精神科作業療法」と銘打ってはいるものの、それが本当に患者さんのリハビリテーションとして効果を発揮しているのだろうか…ということを疑問に思う日々が続きました。そして、退院を希望する患者さんのニーズの多くが、『帰住先が無い』という現実的なものではないかと思い、それに応えられるような直接的な支援がしたい、グループホームを開設するのはどうだろうか…という思いが募っていきました。
そんな中、神奈川県保健福祉局 福祉・次世代育成部 障害サービス課が主催する『グループホーム等サポートセンター設置運営に向けた説明会』に参加する機会に恵まれ、グループホーム開設までに必要な手続きや手順、満たすべき基準や開設に至る道筋を丁寧に教えて頂きました。単純な私は、「教わった通りに進めていけば開設することができる」と考え、実行に移すことに致しました。手続等いろいろと大変なことはありましたが、2年ほどの準備期間を経て無事に開設に至り、現在2年余りが経過したところです。
日々の業務としては、出勤後、それぞれの利用者さんの状態を確認し、就労やデイケア・作業所等の日中の活動場所に通うことを支援したり、日々の生活に関する相談支援や家事援助を行うことが主な業務です。状態安定時は日常生活が自立されている方も多く、見守り程度の支援しか必要のないことも多いのですが、やはり病気の特性として症状が動揺しやすいため、状態悪化時には多くの支援を要することもありますし、非常に規模が小さい事業所ということもあって、管理者としての責任や事務的な業務もあり、それらに忙殺される日も時にあります。
規模が小さいが故の身動きのとりやすさ、意思決定から実行までの迅速な対応がとれるというメリットがある反面、やはり病院勤務時代にあった、多くの人々や制度に守られていたという安心感がなくなってしまったというデメリットがあることも否めません。しかし、限られたスタッフと協働しながらアットホームな雰囲気で仕事をすることができており、個人的には満足しております。
地域における精神科マネジメントでは、職種の枠にとらわれることなく、利用者さんの支援において必要な資源やサービスを提供したり、問題解決のために臨機応変に動くことができます。具体的には、就労継続支援、就労移行支援、地域活動支援センター、就労サポーター、自治体の障害福祉課、保健所、デイケア、訪問看護など、利用者さんがその時に必要としているサービスの事業者と迅速に連携をとり、問題の解決やニーズの拡充を図ることができます。個人的には今後、作業療法士の活躍の場が、グループホームや作業所などの地域の場に拡大していくのではないかと思っています。
病院のOTと地域のOTが連携していくことで、利用者さんにとってより充実した支援を提供することができると思いますので、今後とも皆様のご協力をお願いいたします。
今回は病院から地域へ飛び出し、自らグループホームを立ち上げ、精神障害を持つ方たちの地域生活を支えるために奮闘している方にスポットを当てました。いかがだったでしょうか。次回も地域で活躍するOTさんを特集したいと思います。ご期待ください!
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文責:福利部 松岡太一