〜抄録の作り方〜
今回は抄録の作り方についてお話しいたします.とその前に,カナちゃんと作ゾーさんの方はどうなっているのでしょうか?
説明
抄録を作りましょう。目的や方法はすでに研究計画書で書いてありますから簡単です。
先行研究を羅列しただけの背景や、結果のサポートがない考察、目的と方法・結果の内容が食い違っているような抄録は、査読者や読み手に研究の本質が見えてこないため、お勧めできません。
初めての学会発表です。難しい用語や記述は無理に入れようとせず、一本筋が通った、読んだ人にわかりやすい抄録を作りましょう。以下に、抄録の各項目の記載方法について、簡単にご説明します。
背景、目的、方法については、「研究計画書」で作成したものを用いることができます。ただし、研究の過程で、方法に変更を加えたりすることもあるでしょう。よく内容を見直して、抄録を作成してください。文字数や項目名、項目に含めるべき内容などは演題募集要項や登録規定を読み、遵守するようにしてください。
【論文タイトル】
読者もしくは学会参加者が興味を持ち、具体的な結果を予想させるような、わかりやすく、魅力なタイトルを選択しましょう。第一印象もとても重要です。
【背景】(「はじめに」や「緒言」なども用いられます)
なぜその研究が必要になったのかをわかりやすく説明します。過去の研究を要約し、批評し、自分が研究することにいたった理由や疑問、研究の目的と、そのテーマについての概要を説明します。
【目的】(背景に含めることもあります)
研究の目的を簡潔に記載します。
【対象】(方法に含めることもあります)
研究の対象者についての取り込み基準(どの施設、どの診断名の者か、いつ発症した者かなど)、除外基準(研究の対象から除外する基準)、何名を対象としたか、年齢や性別を含む対象者の基本属性などを具体的に記載します。
【方法】
研究デザインの概要、研究の手順、研究に用いた機器、研究の期間、統計学的手法、インフォームドコンセントの方法などをできるだけ具体的に記載します。時系列に沿って、過去形で記載するとわかりやすくなります。
【結果】
事実のみを全て過去形で記述します。
結果をサポートするため、統計学的手法と検定結果を明記します(統計的手法、自由度、有意水準)。表現方法にも工夫が必要です。「対照群と介入群で有意差があった」と記述するよりは、「対照群と比較して介入群において有意に改善をみとめた」と記述した方がわかりやすくなります。
【考察】
考察は研究の要です。研究者が自由に意見を述べることができる一方で、今回の研究結果からどのような結論を導いたのかを問われる重要な部分です。背景で述べた研究疑問や目的との整合性に留意して、首尾一貫した抄録になるように、記載していきましょう。
①研究目的に対する答えを述べる
②その答えを結果がどのようにサポートしているかを説明する
③先行研究が示した結果とどのような関係にあるかを示す
④臨床的な応用の可能性について述べる
⑤今回の研究では解明できなかった点を挙げ、今後の研究の課題について述べる
あとは、登録するだけです。採択結果を待ちましょう。きっと採択されます。
*今回は、初めての国内学会発表に向けてのナビゲーションでしたので、作ぞーさんの抄録も日本語で作成させていただきました。国際学会用の抄録づくりについては、またいつかどこかで・・・・。
参考文献
1)尾田 敦:「研究論文の書き方1」理学療法28,11, 1405-1412,2011
2)(社)日本作業療法士協会:作業療法マニュアル34「作業療法研究法マニュアル」
ナビゲーター/Story原作: 森下史子
イラスト: OTナガミネ http://otoba.ame-zaiku.com