【中堅】作業療法(士)を目指す人たちへ 奥原孝幸OTR

奥原孝幸OTR(昭和大学保健医療学部)

作業療法(士)を目指す人たちへ 私の仕事

 私は現在作業療法士の養成校で教員をしている。まだまだ4年目の新米である。教員になる前は精神科病院で入院者や外来者へ作業療法を行っていた。対象を患者様から学生に替え、居場所を病院という臨床現場から学校という教育現場に替えた訳である。
 大きく変わったかというとほとんど変わっていないと思っている。作業療法の臨床は教育とよく似ていると感じているからだ。基本的な部分は同じかもしれない。
 人が苦しい状況の中でもがんばっている姿を見たり、成長していく過程を応援していくのはこちらも苦しい分うれしくてやり甲斐を感じることである。

 私は作業療法の学生時代から養成校の教員になりたいと考えていた。作業療法士になりたいという強い目的意識を持った学生たちへの援助が仕事の教員にいつかはなりたいと考えていた。
 しかし、それはそんなに簡単ではなく、実際教員になろうと納得できるまで10年以上かかった。今はまだまだ授業は下手くそであるが、難しさを多く感じつつ日々学生と関わること、成長をみていけることは大きな幸せである。

作業療法学生と教員のたいへんなこと

 私の主な仕事は授業であるが、もうひとつ大きな仕事が臨床実習に関することである。
 私も学生時代経験してきたことであるが、学生にとって進級とともに大きな苦労があるのが臨床実習である。教員も実習地の確保や実習地訪問と呼ばれる実習途中の訪問は重要でたいへんな仕事である。
 学生にとっては学内の授業と異なり実際に患者様と向き合うため大きな苦労をする分大きな成長があり、教員の私も見ていてうれしい瞬間である。

 臨床実習で苦労することのひとつは、社会性とかコミュニケーション能力といわれるものである。いくら知識があっても患者様にその知識を使えないと実習は進まなく、患者様からも信頼は得られない。この知識を使うための技が社会性やコミュニケーションなのである。

 この苦しいときに自分を助けてくれるのが「作業療法士になりたい」という気持ちであり、この思いが強いほどがんばれるようである。「初心忘るべからず」が苦しい時に大切なことのようである。

作業療法(士)の仕事

 こうみてみると、作業療法(士)の仕事は知識とそれを使う技が大切なことがわかる。知識と技術はあって当たり前で日々経験を重ねながら勉強を続けていくことが大切だとよく言われる。
 実際の仕事は臨床実習よりも大きな努力が必要なことは言うまでもない。その分やり甲斐も大きく、患者様の笑顔を見ると苦労も吹き飛ぶ。その積み重ねが自己の成長や自己実現につながる。
 こう書くとみんなすごい顔をして仕事しているように思うかもしれないが、経験を重ねた人ほど力が抜けて自然にしているように思う。ぜひ見学でも何でもいいから触れて話してみてほしい。

作業療法(士)を目指す方たちへ

 作業療法士と養成校の教員の立場からひとこと。作業療法の国家試験の合格率はほぼ90%以上である。表面的には簡単なようであるが、実は進級したり臨床実習で合格したりと受験までたどり着くのがたいへんなことなのである。
 学校で机に黙って座っていれば自然と進んでいくのではない。このことをしっかりと理解してほしい。過酷な勉強が待っているのである。それを乗り越えていくにはやはり「作業療法士になりたい」という強い気持ちが必要である。
 また作業療法(士)の仕事も理解していてほしい。小学生が野球選手にあこがれる程度では乗り越えることは厳しい。卒業したら作業療法士しか道はないのである。

 ぜひしっかりとした目的意識を作ってから受験してほしい。大きなしっかりした夢を持ってきてほしい。そういう人を仲間に迎えたい。作業療法の仕事を選択してよかったと心から思っている私から伝えたいことである。

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