【在学生】第28回 たった一言

【在学生】 第28回 たった一言 「たった一言」

 「あなたは作業療法士が向いているんじゃない?」と、高校の担任の先生に言われたこの一言で、私は作業療法士という仕事を初めて知りました。今まで大きな怪我をすることがなく、リハビリテーションも受けたことがなかった私は、作業療法がどういうものか想像もできませんでした。先生の言葉を受け、作業療法士について少し調べてみて、“手工芸やレクリエーションをしてリハビリテーションをする仕事”という認識を持ちました。今振り返ると、この仕事のごく一部の特徴しか捉えられていなかったと思います。そんな認識であったため、大学に入ってからあまり勉強をしなくてもいいのではないか、医療職と言っても難しくないのではないかという気持ちも心のどこかにあったように思います。そして、担任の先生の一言と自分の直感で作業療法士を目指すことを決めました。

 実際に大学へ入学し、同じ学科の友人と話をする中で、自分とは違い、作業療法士という仕事への強い思いをしっかりと持っている人が多く、自分の中で焦りが生まれました。そして、同時に自分の作業療法についての考えなどをはっきり伝えることができる友人から刺激を受け、入学前の認識が足りないことに気づき、勉強への取り組み方が変わりました。

 特に1年次には専門分野についての授業が少なく、生理学や解剖学といった基礎知識を勉強するだけで臨床においてこの知識がどのように活かされるかわかりづらかったです。しかし、学年が上がるにつれて専門的な授業や実技も増え、基礎知識の重要性にも気づき、徐々に勉強に対する意欲や楽しさを感じるようになりました。さらに、専門的な内容を理解することで作業療法士に近づいているという実感が湧きました。

 実際に病院で行う実習を経験する中で、患者さんや、そのご家族に対して接する機会を得て、私は人との関わりが好きであることや何に対しても一生懸命取り組むことで相手も答えてくださることを実感しました。さらに、感覚障害について興味を持ち、臨床に出てから作業療法士として研究したいと思うようになりました。また、その研究を患者さんの治療に活かしたいと思っています。

 作業療法士には身体障害や精神障害などの領域があり、子供から高齢者まで幅広い年齢層を対象としています。私は、患者さんの病気によって生じた日常生活上の困難を軽減するために援助できるのが作業療法士だと思います。実習の中で、多くの患者さんと関わり、同じ病気でも患者さんの求める生活はさまざまで、治療の仕方も異なることを知りました。知識はもちろんですが、発想力や思考の柔軟性も必要であることを痛感し、どの領域であっても作業療法士において一番大切なことは、豊かなアイディアを持つことだと私は思います。人はそれぞれ発想することに得意不得意はありますが、経験を積んだり、知識を増やすことでアイディアの幅は広がると考えています。そのため、今できることとして、自分自身の知識を増やすことに取り組んでいます。

 きっかけは担任の先生のたった一言で進路を決めましたが、学友との出会いや大学での勉強、実習での経験などから、今では、私は作業療法士の道を選択したことは間違えではなかったと思っています。選択した理由がどんな小さなきっかけであっても、その自分の選択したこととどのように向き合うことができるのか、どのように自分を高めていけるかが大切だと思います。あとは国家試験を残すのみとなりました。作業療法士になるためにあと一歩。人生で一番勉強しようと思います!

同じカテゴリーの記事:在校生からメッセージ

Permanent link to this article: https://kana-ot.jp/wpm/essay/post/218