【在学生】第26回 学生が思う作業療法の魅力

【在学生】 第26回 学生が思う作業療法の魅力 「学生が思う作業療法の魅力」

 私は小学生の頃から,ボランティアなどで自分が関わった人が笑顔になることが嬉しく,将来は困っている人を笑顔にさせる仕事をしたいと漠然と考えていました.その後,病気で苦しんでいる患者さんを笑顔で支えている看護師に憧れを抱き,将来自分もなりたいと思うようになりました.高校生のとき,「作業療法士」という見慣れない言葉を見かけて調べたところ、手工芸や木工・陶芸などを通してリハビリをする職業であると知り,単純に魅力を感じて作業療法士になろうと決めました.しかし,今振り返ってみると,作業療法士になろうと決心したころは作業療法について全く知らなかったように思います.私は大学で作業療法を学び始めて4年目になりますが,やっと作業療法についてわかってきたという段階です.それだけ,作業療法は奥の深い職業なのです.

 作業療法の対象となる患者様は,病気や疾患によって日常生活や余暇活動に制限がでてしまった方たちです.「木の上のりんごに手が届かない人にりんごをとってあげる.それも悪いことではない.でもその人にとって本当に必要なのは,りんごをとる長い棒や,木登りのしかたなのだ.」という言葉を聞いたことがあります.怪我や病気でできなくなってしまったことを手伝うことは簡単です.しかし,患者様の想いを尊重しながら,自分自身の力で自分がやりたいことができ,その人らしく生きていくために何ができるかを一緒に考えていくことが作業療法士の仕事です.いろいろな作業活動を通じて,機能回復を図り,また障害が残ってしまった場合には,残された機能が最大限生かされるようさまざまな工夫を行います.疾患や障害を負うと,できなくなってしまったことが増え,どうしても問題点ばかりに目が向いてしまいます.しかし,作業療法士は患者様の短所だけでなく長所を引き出し,その人の持っている能力を生活にどう役立てるか,それを考えるのが仕事なのです.

 作業療法士になるためには,作業療法士養成校で3年以上学び,国家資格を取得しなければなりません.養成校の1年生では解剖学や生理学など基礎をじっくり学び,骨や筋肉などの基礎中の基礎を学びます.2年生になると,内科学や整形外科学などの疾患や,筋力検査などの手技を学ぶようになったり,実習で患者さんに検査をさせて頂いたりして,徐々に医療職に就くという実感が湧いてきます.3年生では,領域ごとの治療学を学び始め,今まで習った疾患や検査が作業療法と繋がるようになり,作業療法の考え方がやっと理解できるようになります.4年生では,総まとめとして,培ってきた知識や技術を実際に臨床で経験するために長期間の実習へ行きます.このように,作業療法士になるという同じ目標を持つ仲間と一緒に切磋琢磨することのできる大学生活はとても充実していて最高に楽しいです!

 2014年6月に横浜で行われた4年に1度開かれる世界作業療法士連盟(WFOT)大会の学生・新人対象プログラムの実行委員として企画・運営に携わらせていただきました.首都圏の作業療法士養成校のうち3校から約30名の委員が集まり,約2年間をかけて準備をしました.2013年11月には,プレ企画として,約220名の作業療法学生が全国から集まり,「理想のOTに近づくための新しい価値観を築く」というテーマのもと熱いディスカッションを行いました.また,2014年6月の本大会ではパシフィコ横浜にて,海外からの作業療法学生も含め400名以上の参加があり,グループでディスカッションやアクティビティを使った交流など行いました.日本・シンガポール・フランスの3カ国の代表学生による自国の作業療法についてのプレゼンテーションも行われ,国境を越えて作業療法の可能性を知ることができました.委員はそれぞれ大学や学年が異なり,情報を共有するだけでも一苦労でしたが,委員全員が協力しあって作業療法について深く考え,価値観を広げる良い機会となり,とても貴重な経験となりました.

 私事ではありますが,来年度の4月からは身体障害領域の急性期病院で働かせていただく予定です.臨床では疾患や身体機能面だけでなく,日常生活活動や患者様の大切にしている意味のある作業などを重視し,患者様にとって最良のリハビリテーションを提供できるような作業療法士になりたいと思っています.あと少しでずっと夢見ていた作業療法士になれると思うと,とてもワクワクします.作業療法士の道に進もうかどうか迷っている方々も,とても魅力的でやりがいのある職業ですので,ぜひオープンキャンパスや本などで情報を手に入れてじっくりと考えてみてください.そして今,このページを見られている方に,いつか作業療法士としてお会いできる日が来たら幸せです.

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