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【中堅】作業療法って,作業療法士って何だろう? 鈴木久義OTR

鈴木久義OTR(昭和大学保健医療学部)

作業療法って,作業療法士って何だろう? のっけからこんなことを言い出して大変恐縮です.それに養成校の教員がこんなことを言い出しているのですから,この企画自体が吹っ飛んでしまうのではないかと心配でもあります.

 しかし,この疑問は自分が養成校に入学した後,作業療法士免許を取得して自治体立精神病院に勤務し,現在に至るまでの私の根本的な疑問なのです.
 もちろん,作業療法の現場に10年以上おりましたし,学生に教えなければご飯が食べられないという事情もありますので,「そういったレベル」ではこうした疑問は自分の中では解消されています(つもりです).でも「何となく…」なのです.

 こんな風に考えるのはなぜなのかと自分に問うてみますと,私は前述のように精神医療の現場におりましたので,作業療法,作業療法士としての自分を考えるよりも,精神医療,精神医療従事者としての自分を考える機会がより多かったということなのかも知れません.

 さて,それでは現在の精神医療における作業療法,あるいは精神医療従事者としての作業療法士ということを考えてみましょうか.
 異論反論がたくさんあることを承知で書きなぐってみますと,それらの基盤は極めて脆弱なのではないかと思わざるを得ません.
 かつて,フィリップ・ピネル,ウィリアム・テュークといった人々は,18世紀末のフランス革命の中,「自由・平等・博愛」の精神の下,精神病者を魔女などではなく,病を抱えた一人の人間として処遇しようとしました.そして,そのような人間的な処遇を行う中で,作業療法の前身である道徳療法moral treatmentが始まるわけです.

 しかし,それから数百年経過した現在,精神医療はどのような進歩を遂げたのでしょう?もちろん,進歩した部分がたくさんあることはまぎれもない事実です.
 しかし,一方で足踏みや後退があると言わざるを得ないことは,種々の精神病院不祥事件の多発や,地域ケアが遅々として進まないことを指摘すれば十分でしょう.
 また,いわゆる,処遇困難例や触法精神「障害」者といった人々も,この足踏みや後退が関係している,さらには医原性二次障害の犠牲者であると考えることもできると言ったら言い過ぎでしょうか・・・

 とにかく,この足踏みや後退をどうにかせねばならないというのが,作業療法士そして作業療法士養成校の教員である前に,精神医療従事者であると自己規定している自分の思い・焦りなのです.

 しかし,私には「作業は人々の健康によい影響を与える」という信念と経験があります.そして,多くの作業療法士は良心的な精神医療従事者であるという信念も持っています.
 ですから,この足踏みや後退がある現状はとても残念だけれど,作業療法そして作業療法士はこれにメスを入れることが可能だと信じています.

 そして,この現状に作業療法そして作業療法士が,作業という非常にユニークかつ強力な武器を手に切り込み,足踏みや後退を少しでも変化させることができるようになったその時,私は初めて本当の意味で「作業療法って何だろう?」,「作業療法士って何だろう?」って考えることができるようになるのではないかと思っています.・・・

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