【中堅】OTとは何か,11年働いて今思うこと 杉本尚久OTR

杉本尚久OTR(小田原市立病院)

OTとは何か,11年働いて今思うこと 若手や学生のみなさんにメッセージを送れるような者ではないのですが,せっかく頂いた機会ですので11年間私なりに迷い,葛藤して今思うことを書きたいと思います.
 
 みなさん,「OTって何?」「PTとどう違うの?」っていう会話になった時どうしていますか?

1.熱く語る
2.リハビリの何でも屋だと言う
3.手や,ADL,認知,精神の・・など,相手に合わせて一般的な説明を簡単にする
4.正直自分もわからない

 などでしょうか.
 そもそもなぜこのような話になってしまうのでしょうか.
 
 私は,学生時代に講義で「OTとは何か」というテーマでグループワークをしたことがあるのですが,グループごとに意見を発表した後,最後にベテランの講師が「私もまだ分っていない,まだまだ勉強や経験が必要」と言っていました.この時に学生ながらに変な気持ちになったのを覚えています.そもそも自分の職種名に対して「~とは何か」なんて議論する業種があるでしょうか(それも国家資格なのに).

 私の中で比較的長い間しっくりきていたのが「何でも屋」です.対象者の状態,職場の人員配置状況,職場の環境などにもよりますが,PTやSTで適用外となったものや,Nsがどこに頼んでいいのか分らないようなものに対してOTが対応しているのだと思います.
 元々,OTを目指そうとするような人材が目の前に困っている人がいれば何とかしてやりたいと一生懸命対応し解決してきた.その繰り返しが全国で行われ「OTは何でも屋」という考えに辿り着くことが多いのだろうと思います.今も,これに対して否定的な訳ではありません.
 しかし近年,専門性についてより求められるようになり学会や研修などで「OTは医療の専門職」といった内容で話が出たりすることがあります.それに対して私は,

「何でも屋って専門職と言えるのだろうか」

と思いました.私は10年と少しやってきて,ある程度「何でも屋」として働けるようになったと思いますが,専門は何ですか?と言われると答えられません.「専門家」を辞書でひくと「1つの学科・ことがらをもっぱら担当研究して,その道の経験・知識に富む人」とありました.協会の専門OT制度を取得している人達は専門家だと私は思います.しかし,私のような一般的なOTは専門家とは呼ばないのではないだろうか.OTそのものが専門家と呼ぶには範囲が広すぎるような気がします.実際,身障の一般病院勤務の私は,精神分野や小児分野,地域分野などは一般的な知識しかなく,実践経験も限りなく少ないため専門家の概念には当てはまらないと思います.

 先日,「身障領域でアクティビティを導入する」という勉強会に参加しました.内容はテーブルに各々異なる作業の材料が用意してあって,作りながら作業分析をしてどのような治療に適用出来るかを考えるといった実習形式の勉強会でした.学生時代に班でレポート作成したような懐かしい感覚でした.久しぶりに1時間以上も作業分析に取り組んだあと,私なりの「OTとは何か」「OTの専門性は?」に対する自分なりの答えが浮かびました.

 OTとは「対象者に適した作業を選択し適応する援助を行う専門家」です.

 私はずっと,「OTだから高次脳機能障害や上肢機能はおさえなきゃ」という切り口で考えてきて,「疾患」や「障害」に対する知識を高めることに一生懸命でした.しかし,私たちは「作業療法士」です.職種名にもなっている「作業」についての専門家だと考えればスッキリすると思いました.

 芸術的なセンスもあって知識や人柄も優れている人もいますが,自分はそういうタイプではありませんでした.若い頃「このままこの職種で良いのか?」と思っていたこともあります.幸い私には支えてくれる仲間が居たのでここまでやってこられましたが,経験年数が浅く,周囲に支えてくれる仲間がいない場合,職場環境によっては自分を見失ってしまうこともあると思います.仕事ですから,納得出来ない内容の仕事もやらないといけないこともありますが,自分の中でプライドを1つ持っているだけで乗り越えられることも増えると思います.

 これはあくまで私の個人的な見解ですので,こういう風に考えている人も居るんだなぐらいの気持ちで読んで頂けたら幸いです.今私は,日常で接する様々な作業を治療に応用するという視点で分析するようにしています.灯台下暗しで,身近に沢山興味深い作業がありますよ.

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