Tag: 特性

ここにいていいんですか?

ここにいていいんですか?楽しいハズのレクを楽しめない…そういう方は案外多いものです。
いつもと違うことがおこなわれているのはわかる
でも、自分が何故ここにいるのかわからない…。

「ここにいていいんですか?」

私の手をぎゅっと握りしめ
繰り返し繰り返し尋ねてこられた方がいました。
どんなにか不安だったことでしょう。

楽しい場が気分転換や発散になる方も大勢います。

けれど皆が皆そういうわけではありません。

近時記憶の低下や見当識の低下によって混乱してしまう。
もしも、私たちが突然異国のお祭りにタイムワープしたりすれば
きっと同じように感じて落ち着きなく楽しむどころじゃないでしょう。

「ここはどこですか?」
「こんなことしてる場合じゃない。」
「私は帰りたいんです!」

そんな時に
「さぁ、そんなこと言ってないで楽しみましょうよ」
「ほら、あれを観て。おもしろいでしょう。」
と言われてもきっとそれどころじゃないと思う。

それに
大勢でワイワイやることだけが万人にとっての楽しみというわけではないし。

その方の能力と障害と特性にそって
楽しむことを援助するのが私たちの仕事であって
楽しませることが仕事ではない。
少なくとも
その方を困惑させてしまうようなことはしたくない。
たとえ、善意の意図からであったとしても。

その方は
私と出会う以前に
出会って以降も
ずっともう十分に傷つく機会はたくさん遭遇しているのだから。

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ボケちゃえば何にもわからない?

ボケちゃえば何にもわからない?私には、とてもそんな風には思えません。

もちろん、ご家族など周囲の人のご苦労はお察しします。
けれど、認知症のある方が「何にも感じていない」わけがありません。

時間や場所の見当識が低下し
短期記憶が低下し
なぜ、今、自分がここにいるのか
なぜ、今、自分がこうしているのか
わからない…

わからないという自覚や不安を感じるのに
状況の理解ができなくなるという状態が
どんなに辛いことか…

私たちがいきなりタイムスリップして
見知らぬ時代の見知らぬ土地へ連れてこられたようなものなのではないか
と感じることがあります。
何もわからない場所で
よく知らない人たちの間で
生活様式の異なるところで
自分にはよくわからない言葉が交わされる…

私たちにとっては自明の前提が崩れてしまっている状況で
なおかつ、暮らしていくことの困難さ

職業人としての私たちに求められていることは
そのような日々の暮らしの困難を少しでも改善していくことのお手伝い

症状がある…ということは
能力がある…ということ

たとえ、認知症になったとしても
その人らしさは失われない
その人の能力と特性こそが
その人の日々の暮らしの困難を乗越えていく
(逆に言えば、ないものはない。
 ないものねだりはできない
 …ということにもなるのですが。)

たぶん、作業療法士は、職業柄
1番具体的に現実的にそのことが共感できる職種だと感じています。

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なかなか立ち上がってくれない方

時々いると思います。

身体能力的には立ち上がりも自立、独歩もできるのに

(お食事だから席に座り替えてほしい)

(お風呂だから立ってほしい)

そういう時に声をかけてもなかなか立ち上がってもらえない

身体は動くはずなのに…。

そんな時に無理矢理全介助で立たせるのではなくて

どうしたら立ち上がっていただけるのか

…を考えて工夫したい。

「無理矢理立たせるのはダメ」

って言うんじゃなくて

「こうしてみたらどうかしら?」

って具体的に提案を。

その提案の根拠としての

対象者の能力と障害と特性を言語化しながら。

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飲みもののチカラ

飲みもののチカラ認知症のある方は、その場の雰囲気に影響されやすい面もあります。

特に、お風呂などの場面。
職員も複数、対象者も複数。
動作遂行の工程が複数で、次々に動作を切り替えていくことが要求されるADLです。

どうしても、ワサワサしやすい場面です。

その雰囲気に気圧されて
興奮しやすくなる方もおられます。

そんな時には冷たい飲みもの。

言葉では届かない時に
具体的に現実的に、その方のお身体に「冷たさ」が作用します。

もちろん、ただ単に、冷たいものを出せばいい。というわけではありません。

私たちの言葉と一緒に
冷たい飲みものを添えるんです。
言葉…気持ち…のあらわれ、としての冷たい飲みもの。

そうすると、スッと落ち着かれることも多いのです。

作業療法士として
モノの特性をよく理解し、活用できるように
モノやコトに明敏でありたいな…と思っています。

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