NHK「こんなはずじゃなかった」を観て

NHKドキュメンタリーETV特集
「こんなはずじゃなかった 在宅医療 ベッドからの問いかけ」を観た。

早川一光 医師のことは
医療保健福祉関係者なら少なくとも名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
私も若干のことは知っていたつもりでしたが
今回初めて知ることも多かったです。

健康保険の仕組みのなかった1950年頃に京都で地域の人のための診療所を立ち上げ
自らの給与が出ない時期もあり、一家が生活保護を受けていたこともあったとか…。

そこまで一心に患者さんのための治療を心がけてきた医師が
今、自宅で自らが立ち上げた在宅医療を受けている。

その感想が
「こんなはずじゃなかった」
というのである。

カメラはありのままを写し撮る。
「おしっこ、ちびっちゃった」
「早川先生が死ぬのを怖がってる姿は、ものすごく意味があると思います」
さらっとそのまま映し出される。
番組ディレクターが川村雄治というのもうなづけた。

番組を観終わって感じたことは
早川先生の勇気とそれゆえの強い意志。
「今のままではいけない。何かが足りない。」そんな気持ちを感じた。
そして、それは困惑とともに私の胸に残った。

早川先生にして
必要だと言わしめた「人間総合学」を言葉にして表現できない。

早川先生の状況もご家族も関わるスタッフも
いろいろな現場の一端を知る私には、
(比較の問題ではないけれど)とても恵まれているように感じた。

にもかかわらず、いや、だからこそなのかもしれないが
患者の立場として、早川先生は
「心の奥にあるさびしさ」「在宅医療にある天国と地獄」を実感している。
そして、おそらく、早川先生だからこそ、
その実感を語ることができたのかもしれない。

とても重い宿題
この番組を観ないで知らないでいたよりは観ることができてよかったと思う。
でも、胸の奥に重い石が残っているような気持ちがしている。 

Permanent link to this article: https://kana-ot.jp/wp/yosshi/3291